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【禍話リライト】「ピラミッドパワー」

今から5年ほど前、50代のとある男性に年下の彼女が出来た。
それも「ちょっとお前…年下過ぎないか?」と言われるほどに、年齢に差のあるカップルだったという。
『愛に年齢は関係ない』と思う人もいるであろうが、男性の知人らが不安に思うのは、男性の人間性にあった。
この男性というのが、周囲からは『だらしない男』『ダメな男』だと認識されていた。
より詳しく言うと、最初こそ好印象を受けるものの、関わりを深めていくうちに、節度のない一面が浮き彫りになるという人物なのだという。

そして月日が経ち、案の定男性は彼女に対して諸々悪事を働くようになっていた。
一例を挙げると、彼女の財布のお金を勝手に使っていたのだという。
そのような人物である為、誰もが(多分浮気もしてるな…)と思わざるを得ないほどであったらしいが、彼女は男性と別れる事なく、付き合いを続けていたのだという。
誰が見ても不憫な立場で、早々に男性との縁を切るべき彼女を、男性の知人らは「マザー何某とかで呼ばれている人なんかねぇ?」などと話していた。

ある時、知人らは男性に対して説教じみたことを言ったのだそうだ。

「お前さぁ…そんな許してくれるたって、逆にそんな許してくれる人の方が、どこかでキレた時何するか分からんぞ!」
「ちゃんと謝ったり、『同じ過ちを繰り返さない』みたいなことしなきゃいけないんじゃないの?」

口々に男性に向けてそう語りかける知人たち。

しかし男性は知人らの話を聞きつつも、こう話す。
「いやぁ~でも結構ねぇ、俺にゾッコンなのかなぁ~?」

(なんだコイツ?)
男性が自分たちの話を理解できていない様子に苛立ちつつ、知人の一人が「なにが?」と尋ねる。

すると男性は以下のような内容のことを話した。

男性はここ最近具合の悪さを感じていたそうだ。
病院にも行き、診察してもらうが医者からは「よく分からない。いろいろ検査したけど問題ないんで、多分疲れてストレスが溜まってんじゃないですか?」とのこと。
男性も(そうなのかなぁ?)と思いつつ、それからも体の不調を抱えながら生活を送っていた。
そんなある日、自宅のベッドで横になっていた時である。
その日彼女はおらず、一人の退屈を紛らわそうとしてか、何気なく寝転がっているベッドの下を覗き込んだ。
するとベッドの下に、見慣れない何かが置いてあるのが見えた。
男性は(何だろう?)と思いベッドの下の、その『何か』を確かめてみたのだという。


「これ写真撮ったんだけど!」
そこまで話し終えると、男性は自身のスマホの画面を知人らに見せてきた。
そこには、三角錐の物体が写っていた。

「ん?なにこれ?」
知人らが問いかけると、男性はこう答えた。

「これ、ピラミッドパワーだよ!」

「え?」
その言葉の意味が理解できず再度尋ねる知人たち。
それに対して、ただただ『ピラミッドパワー』の単語を口にする男性。
その単調な言葉の応酬の中、知人の一人が(あぁ、そういうの昔あったかもしれない…)と思い始めた頃、漸く男性はその詳細を説明し始めた。

「ギリギリ分かる世代かもしんないけど、これを俺の寝てるベッドの真下に置いてくれてる。俺、基本的に仰向けでよく寝てるんだけど、丁度それの位置にしてある。だからこれは彼女が、(医者に行って解決しないことだからどうしよう…)って思ってる俺のことを気遣ってくれて、オカルト的な方向に行くのはどうかと思うけど…、ピラミッドパワー的なことで置いてくれてるんだ!」

男性はそう言い切った。

しかし知人らはそうとは思えなかった。
男性の見せてくるスマホの画像。
そこに映る三角錐の物体。

それは背が異様高く、縦長だったのだ。
自分たちの知りえるあの形、ピラミッドと聞いて思い浮かべるあの造形とは明らかに違う。

知人らは男性にベッドの下にどう置いてあったかを尋ねてみた。
すると男性の証言から察するに、どう考えても下から男性の心臓を貫かんと狙っている位置に置いてあったのだという。

知人らは各々不吉な予感を抱いてしまっていたが、男性にはそのことを伝えなかった。
無邪気に彼女からの『気遣い』を自慢する男性に対して、「あぁ…ピラミッドパワーかぁ…へぇ~…」と相槌を打つだけに留め、この話を早々に切り上げたのだった。


出典:【禍話インフィニティ 第四十五夜】

(2024/5/25)(18:58~) より


本記事は【猟奇ユニットFEAR飯】が、提供するツイキャス【禍話】にて語られた怖い話を一部抜粋し、【禍話 二次創作に関して】に準じリライト・投稿しています。


題名はドント氏(https://twitter.com/dontbetrue)の命名の題名に準じています。


【禍話】の過去の配信や告知情報については、【禍話 簡易まとめWiki】をご覧ください。

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