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【禍話リライト】「外のドアノブ」

現在30代後半のある男性のお話。

その方は大学生時代、大学近くのアパートの一室を借り生活をしていた。
2年生になりアルバイトを始め徐々に仕事を覚えつつ、大学の講義にも出席し勉学に勤しむ。
そんな生活がルーティンワーク化していたようであり、例えるならば『気が付いたら同じ道しか歩いていなかった』という状態だったという。

そんな生活を送っていたある時、偶々それまで全然交流がなかった学部の人達と授業の中で関わることがあった。
そしてその人たちから「ちょっと飲み行きましょうよ!」と声を掛けられそれに応じたのだという。

目的地に向かうため普段とは違う道を通っていたら、明らかに最近家を解体して空き地にした場所が見えた。
そこを通る時、その人達は
「あれ!?すごいな!こんな早く取り壊すんだ」
と話した。

「え、なに?」とその方が尋ねると、
「いやここな、週の頭にはまだ家あったと思うんだけどな。なんか気持ち悪い一軒家があって、絵にかいたようなお化け出そうな家でさ。台風とか雨風に負けて道の方に倒れ掛かってくんじゃねぇの?って言ってたんだけど、急に業者入ってバンバンに壊して何だったんだろうな?権利関係とか全部うまくいったのかな?」
と説明してくれた。

「へーそんなすぐに壊すもんなんだ」
「重機とか入ってて。しかし早いねもう更地だね、すごいね」
と何の気なしに立ち止まり雑談しているとその中の一人が、
「おいでも待てよ、なんか忘れてるぜ」
と話した。

見てみると土だらけになっている空き地の一か所に、ドアノブらしきものがポツンと落ちていた。
「ドアノブ忘れてるよ」
「そんな馬鹿な!」
「間抜けだなぁ」
そうハハハっとその人達は笑っていた。
話しはそこで終わり、その方は単純に(そんな突貫工事みたいに家ぶち壊すことあるんだ)と思っていた。

そして飲み会が終わった帰り、偶々帰り道もその空き地がある道を通って帰っていたのだ。
(そういえばなんでドアノブだけ置いてんだろうな?馬鹿な話だよな)
と思って、件の空き地を見てみる。

しかし先ほど見たはずのあのドアノブが見当たらない。
(あれ、無くなってんな。違うとこ見てたっけな?)
そう思い、空き地を見渡してみるがやはりドアノブは見つからない。
(おかしいな?2時間ぐらいで無くなるか?ふざけた奴が中に入って持ってったりとかしたのかな?)

そう思いつつ自分のアパートに帰宅した時、ふと明日ごみの日だったことを思い出した。
その方は朝起きるのが苦手だった為、夜の内にごみを出さなければならないと思い至り、アパートの前のごみステーションに捨てに行くことにした。
しかしごみの量が多かったため、エレベーターを使うのは良くないと思い、外階段から向かうことにしたのだという。

外階段からごみを運びながら最初の踊り場に着く。


(ん?)



踊り場で何かを見つけた。



泥土にまみれたドアノブが落ちていた。



(えっ!?多分…見たやつだよな……気持ち悪いな……)

一応拾い上げて確認しつつ、

(まぁまぁ、余裕があるから…これ明日缶瓶だけど下まで持って降りよう)

と思い自分のごみと共に運び、ごみステーションの隅の場所にドアノブを置いていったのだという。

(気持ち悪いな…俺の家知ってる奴がいて、いたずらしたのかなぁ?)
(まぁいたずらだろうな。いたずら好きな世代かな?)
そう思いつつ自分の部屋に戻っていった。


そして夜が更けて、その方が床に就いている時だった。

      ガチャ ガチャ ガチャ ガチャ


普段は途中で目が覚めることはないとのことだが、その時は音が気になり目が覚めてしまったのだという。

(なんかうるせぇな…)

そう思っているとどこからか音が聞こえる。

(ガチャガチャうるせぇな……。えっ、こんな時間に来る奴がいるの⁉家に!?)
(家に来るんだったらインターフォン押せばいいじゃん!?)

そう困惑しているが依然として外から音は聞こえる。
しかし、その音の発生源は自分の部屋の扉のドアノブからではないことに気付いてしまった。

      ガチャ ガチャ ガチャ ガチャ


その方は驚きつつもドアノブで外の様子を確認する。
すると扉の前で誰かがしゃがみこんで何かをやっている。


(えっ⁉えっ!?えっ!?)
と思い確認すると、どうやら床に落ちているナニかをいじっており、
そこから音が発せられていた。



      ガチャ ガチャ ガチャ ガチャ




(おおっ!気持ち悪い!ナニナニナニナニ!)

パッと見た感じでは俯いていたこともあって、どんな感じの人かは分からず、男か女かもイマイチわからなかったとのことだが、黒っぽい服を着ていたのだという。

その人物が、ずっと何かをガチャガチャガチャガチャと音を立てて玩んでいたのだ。

(気持ち悪いなぁ…気持ち悪いなぁ…)
その方はそう思いながら部屋の中で恐怖する他なかった。



暫く時間が過ぎ、いつの間にか音が聞こえなくなっていた。
(良かったぁ…)と思うも、目覚めてから既に30分ほど時間が経過した。

(気持ち悪いなぁ…音しなくなったぁ…ほんとにいないよな!?)
そう思いつつ、扉を開け外を確かめる。

そして暫くすると隣人も同じように扉を開け外を確認してきた。
隣人とは久方ぶりに顔を合わせたが、軽く挨拶をかわしつつも今さっきまで聞こえていた異音について尋ねてみる。

すると隣人は、
「ああ、そうなんです!いや僕も覗いたら家の前にいて!」
と話す。

「ええっ!」
そう驚きの声を出してしまう。


なんと隣人の部屋の扉の前でも何者かが物音を立てていたのだという。


気持ち悪さを感じつつ自分たちのフロアの扉の前を見てみると、点々と土くれのようなものが落ちていたのが目に飛び込んできた。


(うわぁっ!気持ち悪い!明日大家さんに掃除してもらおう!)

そういう思いを抱きつつ、翌朝確認したが、件のドアノブはもうどこにもなかったのだという。



出典:【元祖!禍話 第二十三夜】
    (2022/10/8 )(1:35~) より


本記事は【猟奇ユニットFEAR飯】が、提供するツイキャス【禍話】にて
語られた怖い話を一部抜粋し、【禍話 二次創作に関して】に準じリライト・投稿しています。


題名はドント氏(https://twitter.com/dontbetrue)の命名の題名に準じています。


【禍話】の過去の配信や告知情報については、【禍話 簡易まとめWiki】を
ご覧ください。


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