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ロシアの金本位制復活は、アメリカのドル覇権の終わりか?

今週はウクライナ戦争に関する大きなニュースがふたつ飛び込んできました。

前回の記事の続きに入る前に、先にこのふたつについて軽く紹介します。


■:1. 金本位制が復活する!?
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ひとつは4月29日にロシア大統領広報官が「ロシア政府は通貨ルーブルと金やその他商品の交換比率を固定することを検討している」と正式に表明したことです。

この発言の意味するところは、ロシアが金本位制を復活させるかもしれない、ということです。

「金本位制」とは、通貨の価値を金で担保する仕組みのことです。

さらにロシアは資源の価格までも金本位制と関連付けようとしている、とも見られています。

そうなると金とルーブルが固定相場となることはもちろん、原油1バレル=金○○グラム=○○○○ルーブルのように、資源の価格も固定されると考えられます。

通貨ルーブルが金本位制を採用するのではないかとの噂は、ネットでは3月頃からささやかれていました。

元米連銀、現在はクレディ・スイスのアナリスト・レポートの分析者としても高名なゾルタン・ポズサー氏が「ウクライナ危機が世界の通貨秩序を変える」と発言し、ロシアが金本位制へ移行する可能性が高いと指摘したことから、火がついたものと思われます。

それに対するネットの反応は「まさか今さら!」といった否定的な意見が多く目立ちました。

ところがロシア政府が金本位制を検討していると認めたことにより、ここにきて一気に現実味を帯びることになったのです。

かつて世界経済は、1944年に行われたブレトン=ウッズ会議で定まって以来、金本位制で動いていました。

その歴史を語ると長くなるため、詳細については割愛しますが、金本位制はアメリカが音を上げたことにより1971年に停止されています。

ロシアが金本位制を採用すれば、51年ぶりに復活することになります。

この背景にあるのは、アメリカ主導によるロシアに対する経済制裁です。

ロシアは約5,000億ドルの外貨準備をもっていましたが、資産凍結により一瞬にして使えなくなりました。

当マガジンでは以前より指摘していますが、こうした振る舞いをアメリカやEUの横暴と見ている諸国が、世界中には数多くあります。

ウクライナ戦争を契機に、多くの国々がドルの代わりになる通貨を求めようとする機運が高まっています。世界でドル離れの潮流が押し寄せている、といってもよい状況です。

そのなかでロシアが金本位制と資源を組み合わせることで経済を安定させることに成功したならば、多くの国々が続くことになりそうです。

そうなるとアメリカのドル覇権が本当に終わる可能性があります。そのインパクトはウクライナ戦争をはるかに上回ります。

世界は今、大きな変革期を迎えようとしています。


■:2. ついにロシアが宣戦布告か!?
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金本位制に並ぶ、もうひとつの大きな動きは、イギリスのウォレス国防相が「プーチン大統領が第2次大戦の対ナチス・ドイツ戦勝記念日に当たる5月9日に、ウクライナと戦争状態にあるとして宣戦布告をする可能性がある」と明らかにしたことです。

これが真実であれば、ロシアは国民に向けて説明していたウクライナへの介入を「軍事作戦」から「戦争」へと引き上げることになります。

ウォレス国防相はプーチン大統領が「『世界のナチスと戦争状態にある。国民を大量動員する必要がある』と宣言するかもしれない」と述べています。

古今東西、戦争の当事国が「これは侵略戦争である」と表明したことなど一度もありません。有史以来すべての戦争は、自衛戦争の名の下に行われてきました。今回のロシアも同様です。

なお、ウォレス国防相の発言にある「世界のナチスと戦争状態にある」と聞いても、日本では西側寄りの報道一色のため、何のことかよくわからないかもしれません。

アゾフ連隊ばかりでなく、欧米諸国から集まった極右・ネオナチの人々がウクライナ軍に数多く加わっていると、ロシアでは見ているためです。

自衛戦争の宣戦布告を行うことで、ロシアは国民に総動員令をかけられます。そうなれば数十万を超えるロシア兵が、新たにウクライナに投入されると予測されています。

また、戦争状態にあることがはっきりした以上、ロシア軍が敗勢に陥ったとき、ロシアが自衛の名目で核兵器を使う公算がますます高まります。

今後、ウクライナ戦争がさらに緊迫の度合いを高めることだけは、たしかなようです。


■:3. バイデン政権で原油が
    高騰した理由とは?
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前回の記事では、アメリカのシンクタンクとして知られるランド研究所が、2019年に公表したレポートについて紹介しました。

レポートでは「ロシアを弱体化させるための最良の方策は、アメリカがシェールオイル・ガスをどんどん開発し増産することである」と結論を出しています。

シェール開発を進めることで世界の需給バランスが崩れるため、原油価格は下がります。原油価格が下がれば天然ガスなど、多くの資源の価格も連動して下がります。

ロシア経済は資源の輸出に頼りきっているため、原油や天然ガスの価格が下がると壊滅的なダメージを受けます。

そうしてロシア経済を苦しめつつ、アメリカが増産したシェールオイル・ガスを欧州諸国に輸出すれば、欧州がロシアの資源に依存する度合いを弱めることができます。

これによりロシア経済は崩壊し、ロシアが欧州諸国に及ぼす影響力を軽減できます。

トランプ政権では、この方針に基づき、シェール開発を積極的に推し進めました。

その結果、年次の原油価格は2020年には39.31ドルまで下がり、ロシア経済は悲鳴を上げました。

ところが、2021年には67.96ドルと急騰し、今日まで急上昇を続けています。

「2020年から2021年にかけて、いったい何があったのか?」、この謎を解くことは簡単です。

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