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2019ITUポンテベドラLD世界選手権日記【その②渡航~試合前日編】

4月30日(火)成田~スペインへ

家族の事情で直前まで嫁さんがキャンセルするかどうか迷っていたが、どうにか行けることになった。成田まで、一人なら電車で行くしかないと腹をくくっていたが、二人なら車で行った方が良いと言うことで急遽駐車場を予約。

お陰でバイクとスーツケースを引いてガチャガチャと移動する事もなく、連休4日目と言うこともあってスムーズに成田に到着。

モバイルWiFiルーターを借りてイベリア航空のカウンターへ行くと、既に多くの参加者の皆さんが団体チェックインカウンターに集合している。

・・・黒い!(笑)

みんなオフィシャル購入の「JAPAN」のウェアとかトラバッグとか、ZOOTとかアイアンマンのザックとか持ってるし、体型が締まりまくってるので非常にわかりやすい。

無事チェックインを済ませ、ゲートへ。先日の出張で散々通って来たのでまたかと言う感じ。

スペインは約10年ぶり3回目。あまり長期滞在したことはないが、いずれも印象は欧州のどの国より良かった記憶がある。以前はミラノ/マドリードとバルセロナ。大西洋岸は初めてだ。

イベリア航空のマドリード直行便は14時間の長旅だったが、出張で何度も大陸横断をやってるのであまり辛くはなかった。

機内食はさすがスペインと唸るほど美味く、味にうるさい嫁さんも納得のクオリティだった。彼女はスペインで美味いものを食うことをことのほか楽しみにしている。

マドリードで一旦空港を出て、バイクのみをトラックに預ける。トラックは陸路で別途宿泊先のビゴへ向かう。我々はまたまたビゴ行き国内線のフライトへ。トランジットは数時間の余裕があり、のんびり過ごす事ができた。

VIGO行き
すごい照明

しかしこの時点で現地時間夜の10時過ぎ。ビゴについてバスに乗り込んでからホテルへはほんの15分ほどだったが、諸々済んでチェックインした時には既に午前様だった。

ほどなく到着したトラックから大量のシーコンやバイクポーターをみんなでワイワイと下ろし、ホテル地下に準備された広間に収める。今晩はもう遅いので翌朝に組み立てを行う。

ホテルは事前に調べて相当良いところだとは思っていたが、想像を超える素晴らしいものだった。ウエルカムドリンクと思しきワインとスナックがあったのでまずは無事の到着を祝して乾杯(最後にこれが有料だったと判明)。

そんなこんなで長い長い初日が終わった。

5月1日(水)Mayday! Mayday!

日本は令和フィーバーに沸いているようだったが、こっちはそれどころではない。まずはホテルのバッフェで朝食。これがまた素晴らしいもので、何を食っても美味い。自分は粗食でも平気だが、もちろん美味いものが嫌いなわけではない。ついつい食い過ぎそうになるのを抑えて程々に済ます。

地下に移動して毎度恒例の店開き。バイクポータープロに収めるため、ほとんど全バラに近い状態になっており非常に手間がかかる。

ほぼ、全バラ

2時間近く掛かってなんとか組み上がった。幸いどこにも不具合はなかったが、フロントタイヤにスローパンクしている疑惑があったので、そんなこともあろうかと用意しておいたスペアに代えておく。もう一本のスペアはシート後ろに縛り付ける。

CO2カートリッジを使うかどうか迷ったが、今まで試合でパンクした事は一切無いので思い切ってハンドポンプのみで臨むことにした。シーラントも入れてるのでピンホールまでなら大丈夫だし。

前年の五島の車検シールを貼ったままだった

昼飯をどうしようかと思ったが、まだ時差ボケも酷いし、そこらのスーパーでなんか買って済ませようと思って嫁さんと出かけた。ところが出てみると水曜日の昼間だと言うのに妙に人通りがまばらで、街が閑散としている。

なんかおかしいと思いながらホテル至近のフロイスと言うスーパーに行くと閉まっている。よく見るとスーパーだけでなくほかの店もほとんどことごとく閉まっている。

ちょうど同じような目的で出てきたほかの参加者と「どうしたんでしょうね?」と言って調べたところ「これってメーデーじゃないの?」と言うことに行き当たった。

日本でも昔はあったけど最近は聞いたことないから忘れていた。これでは何も買えない。しょうがないのでチラホラ開いてるカフェかどこかで何か食おうと言うことになった。

幸い海沿いの公園通りみたいなところで何軒かカフェがあったので入ってみる。がら空きだったが、気前のいいお兄さんがカタコトの英語で案内してくれた。

このツアーのために半年間コツコツとスペイン語を勉強してきたが、いざ実践になるとほとんど役に立たず、打ちひしがれるしかなかった。当たり前だが半年ごときでどうにかなるなら語学に苦労はしない。

適当に頼んだサンドイッチだったが、これまた美味かった。嫁さんも「なんでも美味い、スペインで不味いもん探すほうが難しいんちゃうか」といたく感心していた。

ステキな港の風景

午後は時差ボケと疲労のためホテルで撃沈。夕方までホテルでダラダラと過ごすうちに別ツアー行程で無事到着したY山さんと連絡がついた。

じゃあせっかくだから一緒に晩飯食いに行きましょうと言う事で、念のためもう一度別の店が開いてないか見に行ったがやっぱりどこも閉まっている。

そこらへんのカフェに入り、英語がほぼ通じないウエイトレスさんに苦戦しながらなんとかビール(セルベサ)と料理を注文して、Y山さんとも無事の到着を祝して乾杯。

普段は試合前は禁酒だが、今回はご褒美みたいなものだし、本意としては嫁さんとの銀婚祝いだから前日以外は飲みまくる予定。

ここもウエイトレスさんの愛想にはちょっと問題はあったけど、食い物は美味かった。勉強してきたスペイン語も少しだけ通じた。

ホテルに帰ると、殊勝にもバイクの試走に行ってきた人達がズラリ。うーんそれやっても良いけど、こんな直前に何やっても変わらんと思うよ?と言うことで自分はルーティンの前日朝ラン以外何もしない予定。

こうして2日目も無事に暮れていった。

5月2日(木)オプショナルツアー

自分一人だったら多分申し込まないのだが、嫁さんが行きたいと言うのでこの日は午後からオプショナルツアーに参加する。午前中は昨日行きそびれたスーパーに行ってみよう。

ホテルから1キロくらいのところにあるショッピングモールの中にフロイスのチェーン店があり、なかなかの充実ぶり。アメリカやイギリスと明らかに違うのが、鮮魚コーナーがあること。スペインは日本に次いで魚介類の消費量が多いそうで、何となく親しみを持てるのもそう言った気質に少し共通点があるからかもしれない。

パンのコーナーで「これ美味しそう!何が入ってるんやろう?」ということで聞いてみたら「カルネ」と「ポリョ」だけ聞き取れた。ミートとチキンという事で、それが分かれば充分だ。

あと水とか色々買い込んで、ホテルで美味い美味いと言いながら貪り食う。本当に何を食っても美味いなあ。

ツアーは昼にホテル前からバスで出発し、まずは試合会場に寄ってレジストを済ませてから、ガチの観光地である「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」へ向かう。

ところが、途中ポンテベドラに入ったところで別動隊(要は観光せずにレジストに向かった人達)から連絡が入り、会場が混雑してるから後にした方が良いとのこと。急遽予定を変更して直接目的地へむかう。

ホテルからは1時間半くらいで到着。現地ガイドさんが付き添いで、無線のガイドイヤホンで説明を聞きながら進む(スペイン語ペラペラのHISのガイドさんが翻訳してくれる)。観光客に正しい歴史を知ってもらうために、ツアー客には必ず現地ガイドがつくことになっているらしい。

異国の風景はどこも新鮮

この街はキリスト教徒の巡礼の終着点になっているとかで、我々の目の前にまさにいま到着した巡礼ツアーの青年たちが集まってワーワー大騒ぎ。

そして建物はいかにも西欧の様式美に満ち溢れた教会で、ミラノのドゥオーモに比べるとそんなに大きくはないが荘厳なものだった。

ちなみに我らがヒーロー、アラシロ選手もブエルタでここにきたことがあるよ

1時間の自由時間は是非みなさん現地ガリシア名物のタコ「プルポ」を召し上がってください、との事。嫁さんはこれを非常に楽しみにしていたので、ガイドさんに教えてもらったオススメの店に突撃。

拙いスペイン語で「ジョ・キエロ・コメル・プルポ(タコ食いたい)」というとオッチャンがヨシヨシ入れと案内してくれた。

出てきたタコ料理の美味い事と言ったら…こんな美味いタコは食ったことがない、というほど。二人で散々美味い美味いと言い続けて堪能した。

再集合後、今度はまた少しバスで移動してこれまた観光スポットの「歓喜の丘」へ。ここは、言ってしまえばモニュメントがあるただの丘なんだが、気候も景色もよく、非常に気分が良かった。

歓喜の丘

帰りにポンテベドラへ寄って、いよいよレジストのためエキスポ会場へ。エキスポの規模はそんなに大きい訳ではなかったが、掲示されていた大会規模を示す様々な統計のインフォグラフィックに驚いた。

日本は5位(トライアスロンのみで90人)だったかな

自分が出るロングディスタンス以外あまり注目してなかったが、実はデュアスロンをはじめとしてアクアスロンとかクロストライアスロンなど多くの競技があり、アスリートの延べ人数は3,700人超というもの。

事前の情報ではやや自嘲気味に「日本人だらけだよ」という話もあったが、よく見るとトップスリーのスペイン、アメリカ、イギリスの強豪三国で半分くらいを占めていて、日本人は大体1割程度だった。たしかに少なくはないけど、多くもないという印象。

粛々と手続きします

レジスト自体はパスポートが必要と言うこと以外はいつもと同じ。トラバッグなど必要なものを受け取り、リストバンドをしてもらう。オマケでもらった大会オリジナルのバックパックはなかなかいい感じで使いやすそうだし、良い記念になった。

ゴーゴーイコー(笑)

ホテルに帰還後少し休憩してから晩飯へ出かける。また色々調べて評判の良い店に目星をつけて行ってみる。

なぜか近くに行くまで街が閑散としていて本当に流行ってるのか不安になったが、店の至近になって突然人だらけになり、オープンテラスでみんなビールのんで大騒ぎしている。

予約してなかったが時間が早かったので無事席にありついた。またも英語と拙いスペイン語を交えてなんとか注文を通す。今回はサラダ、マテ貝、お肉、エビを堪能。やはり何を食っても美味い。

大満足でホテルへ帰還。まだ時差ボケでフラフラするが、体調は悪くない。

5月3日(金)チェックイン

今日はいよいよ試合会場にてバイクチェックインとブリーフィング、そして日本選手団の記念撮影などの予定。

まずは早朝、まだ真っ暗な中ルーティンの前日朝ランへ。ホテル前でガーミン不死鳥先生のGPS捕捉を待つが、建物に邪魔されてなかなか捉えてくれない。しょうがないのでしびれを切らしてそのまま走り出したら、500mぐらい進んだところでやっと捕捉してピーと鳴った。

軌跡が汚いな・・・

その区間の記録がおかしかったが、だいたいキロ5ぐらいでは走れてる感覚。その後もボチボチ調子が上がってきて最終的にはキロ4に近いところまで上げて終了。他にも走ってる選手がチラホラいた。

ホテルに戻って朝食を済ませ、午前中はトランジットへ持って行くバイクバッグとランバッグの準備。これはいつもどおりの流れなので落ち着いて脳内シミュレーションをして確認する。

11時にまたみんなでバスに乗り込んでポンテベドラへ出発。

バイクは別途チャーターしたバン数台で現地に運んでもらう

会場の構成は結構広域に点在してる印象で、当然初めて来たので何がどこにあるのやら見当がつかない。

まずはスイム会場の近くに陣取り、任意の試泳タイム。スイムエリアは海ではなく、川。そして事前情報のとおり水温は14度(!!)。

河口に近いので川幅は広い

一応試泳出来る準備はしてきた。試合当日は試泳時間はないし、その時にビビるより事前にビビっておいた方が良いと思われたから。

しかしY山さんに聞くと、他の人と話してて逆に前日にあまりの冷たさで心が折れてしまうのも良くないのでは?(どうせ泳ぐんだし)と言う至極もっともな意見。濡れたウェットを一晩で乾かせるのかどうかも気になり、やはり入らない事にした。でも一応どんな冷たさなのか、手だけ浸けに行こう。

桟橋では既に各国のヘンタイ、もとい勇者たちがザブザブと泳いでいる。あろうことか海パン一丁で泳いでるオッサンまで居て思わず「Are you serious?!」と言ってしまう。アングロサクソンはやはり身体の構造が違うようだ。

先に入ってた人に聞くと「冷たい、いや、痛いです!」「でもしばらくしたら感覚がなくなって、どうでもいいか、みたいな感じです」そうなのか〜…

水を掬って口に含んでみると、河口が近いせいか少しだけ塩味があった。でも水自体はかなり透明度があって綺麗。

丁度その頃、大会側が規定に基づいて距離の短縮を検討中である事がわかり、スイム苦手軍団から歓声が起きる。確かマッチが出たスウェーデンの大会でも1500になったらしいし、今回もそうなるかな〜という気配が濃厚になってきた。

次にゴール・トランジット地点の陸上競技場へ移動し、バイク・ヘルメットチェックを経てラックにバイクを掛けてテント内の自分のフックにバイクギアとランギアを掛ける。この辺は宮古や五島と大体同じ。

ラックの間隔は割と余裕があった
T1とT2は同じ場所

ただ、周囲のフェンスや案内板がまだ整理されてなくて当日の動線がよくわからない。皆さんと一緒に「え、どっち?こっち?あっち?」とか言いながら移動する。

そうこうしてるうちにとっくに昼を過ぎていて、どうやら昼飯のタイミングがない模様。まあしょうがない。

1時から英語のブリーフィングという事で、できれば聞いとこうと思ったがとてもそんな余裕はなかった。2時の日本チームブリーフィングで中島コーチが「英語のブリーフィング聞いた人〜」と聞いたが当然誰も行ってない。「え?誰も聞いてないの?」いや、時間なかったですし。

公式資料に基づき、最終のブリーフィング。色々活発に質問が飛び交った。特にスイムについてはみなさん神経質になっていたが、さすがに「あの〜スイムスキップはありますか?」「無いです!何言ってんですか。世界選手権ですよ!」(爆笑)と言った具合だった。

その後、全員で集合写真。これだ、これ。今まで何年も「向こう側」からこの写真を見てきた。ついに「こっち側」に自分が居る。嬉しがって持ってきたTHETAで「こっち側」の光景をまるっと保存しておく。

こっちからこんな風に撮った人はなかなか居ないのでは

本当はこの後パスタパーティがあるのだが、先遣隊となったデュアスロンチームの情報によるととにかく量がショボいので、帰って自分たちで食った方が良いですよとの事。なのでパーティはパスして16時のバスでとっとと帰ることにする。

それにしても昼飯を食ってないので、ブリーフィング会場のレストランでなんか食っていこうと、またまた英語の通じないウエイトレスさんに苦戦しながらなんとかパエリアにありついた。さすがに前日なのでビールはやめておいた。

ホテル帰還後、もうレストランへ行くのは面倒なのでスーパーで適当に買ってきて済ませることにした。ついでに当日朝の補給やら水やら色々買い込んできた。主に菓子パン系を貪り食ってローディングしておく。

こちらでよく見かけるパンのブランド「BIMBO」(笑)

翌日必要なウエア、スイムギアを抜かりなく準備して早めに就寝。

試合当日編につづく

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