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【あまり知られていない】各パートを綺麗に聴かせる「ギターアンサンブル編曲」のコツ

せっかくギターアンサンブル編曲をやってみたものの、
「いざ弾くとなんかごちゃごちゃして聴こえる。。」
とか
「各パートが綺麗に聴こえるためにはどうすればいいの?」
といった状況になってしまうこともあるかもしれません。

他のnoteにおいて「効率の良いギターアンサンブル編曲のやり方」を紹介しておりますが、状況によっては上記のような状況になってしまう可能性も0ではありません。

「ギターの音域では実現不可なのでオクターブ上下させた場合」などがそれです。

そうした状況になった場合の、極力ごちゃごちゃさせないための編曲のやり方、各パートの音域に関するコツについて書いていきます。

1.パートの役割ごとの「おおよその音域」

早速、メロディ・和音・ベース音などの、各役割ごとの「だいたいの担当音域」について記載いたします。
↓おおよそ、以下の通りです

音域

上記画像の通り、おおよそこんなイメージです。
・メロディ→高音域:2弦開放「シ」~1弦12フレット「ミ」
・和音→中音域:4弦開放「レ」~2弦3フレット「レ」
・ベース音→低音域:6弦開放「ミ」~4弦2フレット「ミ」

「だいたい各役割で1オクターブずつ」というイメージになります。
というのも、「ある程度離さないとごちゃごちゃして聴こえる」ためです。
※もちろん「なるべくそうする」くらいの指標です。

理由も書いておきます。

クラシックギターアンサンブルは、オーケストラやバンドなどと異なり、クラシックギターという全く同じ楽器を用いて行われます

楽譜上では各パート毎に分かれているので気づきにくいのですが、いざアンサンブルを行った際は、乱暴に言えば「同じ種類の音が、同じような高さで大量に鳴っている」状況になりやすいです。

どういうことかと言うと、イメージとしては、
↓合奏譜上では分かれているように見えますが

スクリーンショット-2018-11-25-4.46.26

↓実際のギターアンサンブル演奏上ではこうなるわけです。(見づらい。。。)

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ついつい忘れがちなのですが「クラシックギターの合奏を聴くお客さんからは、このように聴こえている」ということは、認識しておくと非常に良いです。

特に、動きのあるパートが密集したときなどは顕著で、非常にごちゃごちゃしてしまいます。

その解消策が先に述べた「各役割である程度音域を離す」というもので、極力役割ごとに密集を避ける、というものになります。
※実際のところは半オクターブ程度も離れれば十分です。

ざっくり、「それぞれの役割間で音を離すのが編曲のコツなんだなー」とお考えいただけると嬉しいです。

以降は、各役割について触れていきます。

1-1. メロディの音域

ギターアンサンブルにおいて、一番目立たせたい役割になりますので、高めの音を使ってあげた方が良いです。
↓楽譜で言うと以下の音域です。

メロディ音域

なるべく音の通りが良い1~2弦を使うことで、他のパートに埋もれにくくすることができます
※低音側の弦は太いため、「貫通力」の弱い音になりがちです。(温かみのある音を出したい場合は低音弦を活用することも多いですが)

最高音を1弦12フレット「ミ」としているのは、厳密ではありませんが、「それ以上の高音」については以下の傾向があるためです。

①難易度が高い
クラシックギターは、構造上12フレットよりも高いフレットはボディ上となっており、13フレット以上の音を弾くのはシンプルに「難しい」です。

一部のエレガット(エレアコのクラシックギター版)はカッタウェイになっていて、15~16フレットくらいまでなら弾きやすいものですが、クラシックギター合奏でエレガットを使うことは稀だと思います。
それほど速度のないフレーズであれば、難易度的には大丈夫かもしれませんが、その場合は以下の問題も出てきます。


②音の減衰が早い

クラシックギターという楽器は、「弦を指で弾く」という極めてシンプルな仕組みで音を出しています。
そのため、弦が細い高音弦であるほど、また、実際に振動できる弦長が短くなる「高いフレット」であるほど音の減衰が早く、つまりは「音が長く伸びにくい」ということです。

高フレットの音を使うことで、メロディだけが極端に早く減衰し、相対的に伴奏の音が強く聴こえるという状況になりやすいということになります。

上記2つの点から、13フレット以上の音は、積極的に使うことは避けたほうが良いかと思います。
※もちろん、「原曲がそもそも、その高さの音のメロディである」など、使わないと曲として成り立たないという状況の場合は使うべきです。
「敢えて13フレット以上の音にする」といった編曲は避けるべき、と考えていただけますと幸いです。

1-2. 和音

和音については、メロディやベース音と干渉しにくい音の範囲を使う他、「低すぎる音を使わない」とお考えいただくと良いかと思います。
↓楽譜で言うと、以下の音域が使いやすいです。

和音音域

というのも、ちょっと小難しい話になるのですが、あまりに低い音で、密集した和音を鳴らすと、倍音諸々の関係から「ロー・インターバル・リミット」と言われる状態になり、和音が濁って聴こえやすくなってしまうためです。
ざっくり例を示しますと、
↓以下のようなイメージです。

和音参考

そんなに詳しくは触れせんが、
「低音域で、近い音を重ねた和音は避けたほうがいいんだなー」くらいに考えていただくくらいで、実際のところは大丈夫かと思います。

【参考】他の楽器向けの楽譜を参考に編曲する場合の和音について
ピアノ譜を参考にしながら編曲する場合、「この和音、ギターじゃ弾けないな」という場合もあるかと思います。
↓例として、こんな和音の場合です。

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ファ・ラで5~6弦を使うので、5弦以下でしか弾けないドの音(紫部分)が弾けないですね。

そうした状況の場合は、「一部の音をオクターブ上に持ってくる」といった対応でOKです。
和音というのは案外ざっくりしたもので、「同じ構成音が鳴ってるなら、高さは(ある程度)適当でもいいよ」という、懐の広い存在です。

なので、上記の場合は
↓こちらのようにすると良いです。

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こんな風に、ファとラをオクターブ上に持ってきても、大勢に影響はなかったりします。※このように構成音を変えずに音の高さを変えることを「転回」といいます

そのため、再現が困難だったり、極端に運指が困難になる和音が出てきた場合は、和音を転回し、現実的なものに変えてしまうと良いかと思います。

1-3. ベース音

ベース音については、正直あまり特記事項はないです。笑
↓音域としては以下のような形になります。

ベース音域


意識する点としては「減衰しにくい低音弦、4~6弦を使う」くらいで、他は状況に応じて以下、くらいでしょうか。

・動きの多いフレーズの場合は、動きが他のパートに埋もれないよう、他のパートとの音の間隔を取る。
・動きの少ないフレーズの場合も、上記の「ロー・インターバル・リミット」の観点から、和音パートの最低音とベース音と離す

いずれにしても、「他のパートとの密集を避ける」というのがコツになります。

2.補足事項

「メロディ・和音・ベース音」という3つの役割のときはわかったけど、弦楽器とか、他にメロディ相当に動きのあるパートがあった場合はどうするの?
という疑問もあろうかと思います。

その場合、はっきり言って「オクターブ離す」といったことは難しく、他のパートと干渉する状況になります

完全に避けるのは難しいため、「和音と同じ中音域~高音域を使い、メロディとの干渉を極力避ける」と考えていただくと良いかと思います。

実態として、「弦楽器相当のパート」は、和音と干渉する音域になるかと思われ、そこと被るのはもう「仕方ない」と諦める、ということです。

↓先に挙げた、以下のような状況の3rdなどですね。

スクリーンショット-2018-11-25-4.46.26 (1)

こうした状況の場合は、和音の音量をちょっと抑えめにしてもらうなどの工夫をすることで、音域がモロ被りでも動きが埋もれにくくなります

どうしても「音域被り」が避けられない場合は、このように上手く対策していきましょう。

【まとめ

ギターアンサンブル編曲するにあたっては、各パートの役割を、できる限りオクターブ程度離し、音の動きが干渉しないようにすることが大事です。

①各音域の基本的なイメージ

音域

②意識すべき「お客様からの聴こえ方」
※実際は以下のように聴こえていることを意識する。

スクリーンショット-2018-11-25-4.52.43

③その上で「モロ被り」になる場合も「和音の音量を抑える」などで、他のフレーズが埋もれないようにする。
※以下の1stのフレーズを抑えめにする、など

スクリーンショット-2018-11-25-4.46.26 (1)

あとは、フレーズごとに各パートが「どのパートを目立させるか」を意識すると非常に良いです。

その意識合わせのための「スコアリーディング」のやり方もnoteに書いていますので、良かったらご覧いただけると嬉しいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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