2024年1月の記事一覧
『ひまわりと月明』 第1話
昼下がり、公園の一角。
ベンチに座り、背もたれに体を預けながら僕はイヤホンから流れるクラシックの音色に耳を傾けていた。
その旋律は僕の心を包み込むように広がり、公園全体がその音に彩られていく。
鳥たちの歌声が、音楽に混ざり合って一つのハーモニーを奏で、風もやわらかく吹いて、僕の髪をなびかせた。
公園の中を歩く人々も、花壇で踊る花々も、みんなこのオーケストラの一員。
音楽は山場を迎え、僕は
『ひまわりと月明』第2話
そよ風が、花開いた桜の木々を揺らし、鳥たちのマーチが住宅街を木霊する。
窓から差し込む日差しが部屋を満たし、まるで温かく、優しく抱擁するようだ。
体を伸ばして、階段を下りる。
ロールパンを一つ食べて、手早く朝食を済ませ、あくびをしながら制服に着替える。
携帯で時間を確認してから、洗面所で顔を洗って歯を磨く。
そうしていると、インターホンの音が家の中に鳴り響く。
鍵を持って玄関に出ると、
『ひまわりと月明』 第3話
○○……辛そうだった……
あの、衝撃の夜からもう時間は経っている。
それでも、なるべく私からピアノの話はしないようにって思っていたのに。
私が迂闊だった……
○○にあんな顔をさせてしまった。
○○に嫌なことを思い出させてしまった。
枕に顔を埋めて、大きくため息を吐く。
もうあんなことがないようにしないと。
「アルノ、いる?」
部屋のドアがノックされ、○○の声が聞こえる。
お母さ