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ノリオ

戦争が始まった世界。平和と言われた日本も、いつ何が起きてもおかしくない。このハードな状況下で我々は常に危機感を持って行動をしなければならないのだ。食事一つをとってもそう。先日ドルジは手巻き寿司に命を取られかけた。最寄りのスーパーの手巻き寿司は乾燥海苔が売りで、コンビニおにぎりのようにご飯と海苔がセパレートされている。一口食べた時のパリっとした食感がたまらないのだ。具材はドルジの好物の納豆をチョイス。空腹のドルジは大口を開けて豆達を迎えに行った。すると目測を誤り、パリパリの海苔がベタっと下唇に張り付いた。いかんと思ったドルジは一度寿司を手元に戻そうと動かすも、張り付いた海苔がドルジの唇を離さない。強引なキスから逃れるように手巻き寿司と顔を動かし格闘するも、屈強な海苔男(のりお)の前になす術もない。数十秒悶えながら舌でペロペロと海苔男をふやかし、なんとか引き剥がす事に成功した。結果、海苔男に奪われた下唇は裂け、手と首は納豆まみれである。流血して食事どころではない。いつもはにこやかな息子も父の異様な光景を見て固まっている。ここは親として安心させなければ。口から血を流しながら息子に微笑みかけ、手についた納豆をペロペロと食べて平然を装った。もちろん、さっさと身体洗って来いと妻から本気で怒られるドルジなのでした。

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