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シングルファザーになった日

ドスッッ

鈍い音で我に返ると目の前に血だらけの男がいた

僕の右手にはビール瓶が握られている

そう

大人、ましてや父親である僕がビール瓶で人を殴ったのだ

本作は、そんなダメダメな父親の波瀾万丈な物語

1992年

僕はごく普通の夫婦の間に生まれた

僕が小学生の時に両親が離婚して、今の親父と再婚するまでの数年間、母親が女手一つで育ててくれた。

再婚してからも、裕福ではなかったが何不自由なく育ててもらった。

しかし、恩を仇で返すかの如く中学生の頃は学校や警察から呼び出しをくらったり、高校も謹慎を繰り返して退学に。

退学になってからは、仕事をしながらチャラチャラ友人と飲みに行ったり、いろんな女の子と遊んだりしていた。

   

23歳のときに、その中の1人になる予定でしかなかった女の子(ミカ)と出会った。

ミカはシングルマザーで、2歳になる子供(レオ)がいた

子育てをしている同年代に、初めて会ったこともあり非常に印象的で、頻繁に遊ぶようになっていった。

ミカとレオの父親になろうと思うのに、そう時間はかからなかった。

将来のことも考え始め、一緒になる(結婚)ならレオが小さいときの方がいいと考え、出会って半年で結婚することにした。

結婚してすぐにミカの妊娠が判明、後にコウスケが産まれた。

凄く嬉しかったし、周りの人間も凄く喜んでくれて順風満帆な時間を過ごしていた。

しかし、そんな生活も長くは続かなかった。

コウスケが産まれて4ヶ月が過ぎた頃。

僕は三交代の仕事をしていたので、昼間会社に出勤したり、夜会社に出勤したりと、毎週勤務時間が変わっていた。

ある夜中の1時頃に帰宅した日、レオがミカの携帯でYouTubeを開いたまま寝落ちしていた。

僕は、ミカの携帯を取りYouTubeを停止した。

そのとき知らない男からの「今日は旦那仕事何時から?」というLINEの通知が目に入った。

まさかと思い通知をスクロールしていくと、物凄いLINEのやり取りがあった。

僕の勤務時間に被らないようにして次の会う約束をしたり、僕と別れてコッチで幸せになろう!などと言った内容のLINEだった。

・・・・・・・浮気だ。

後でミカに聞いた話だが、マッチングアプリで出会ったらしい。

今までは僕がチャラチャラしていたこともあり、浮気するなよーとか言われるタイプで、僕が浮気されるなんて想像もしていなかった。

ショックではあったが、感情的になることはなく、そっと寝ているミカを起こした。

これどういうこと?と僕が聞くと、一瞬驚いた表情を見せたがすぐに取り戻し、携帯を見たことを怒ったり、育児に疲れてつい出来心で。という説明を受けた。

どちらも一理あった。

とくに、育児に疲れたという言葉は、逆に僕が反省させられることになった。

 

コウスケが夜泣きで起きた時も、ミカに任せっぱなし。

育児に疲れているミカに感謝の言葉を伝えることもなければ、なにかリフレッシュさせてあげる時間もとくになかった。

   

専業主婦だからできるだろ!といった考えが心のどこかにあったのかもしれない。

良い子ぶってる訳でもなんでもなくて、僕が逆の立場ならミカと同じことをしていただろう。

なので今回の件は、僕が反省して日常生活を改めようと決意した。

・・・・それから3ヶ月が経った。

育児の大変な部分も2人でシェアして協力し合ったり、ミカにリフレッシュできる時間を作ったりするようになった。

夫婦関係はかなり良くなったように感じていた。

そんなある日僕が仕事が終わって、「今から帰る」とLINEを送ると、ミカから「友達カップル来てるから!」という返信があった。

友達が来てると言うので、帰りにお酒やつまみを買って帰った。

帰宅すると友達カップルがいた。

友達カップルの男の方はテルというようだ。

テルとは同級生ということもあってすぐに意気投合し、その日は夜遅くまで語り明かした。

その数日後、

 

僕は仕事が終わって24時頃に帰宅すると、またレオがミカの携帯でYouTubeを開いたまま寝落ちしていた。

僕は怪しむこともなくYouTubeを停止してミカの携帯を置こうとした。

・・・・!!

嫌な文章が見えた。

またしても通知モードに怪しい文面があった。

「昨日は楽しかった。ありがとう。またS○Xしようね」

またか!!

しかも今度は相手の名前を知っている。

そう。

テルだ。

さらに、なによりも許せなかったのが、僕と一緒にお酒を飲みながら楽しく飲んだ日にはすでに関係を持っていたのだ。

これにはさすがの僕もブチ切れだ。

次の日の朝、テルに電話で今すぐ家に来るようにと伝えた。

最初は仕事中だからとか言っていたが、そんなことどうでもいいから今すぐ来い!と言って無理やり来てもらうことになった。

テルが家に来て、さすがに何か話してくるかと思っていたが、テルはとくに何も話すこともなく、謝罪もなく、黙りを続けていた。

 

その後はこの記事の冒頭の通りだ。

ビール瓶でテルを殴っていた。

 

浮気に関してはテルだけでなく、ミカも同意のもとだし、1回目同様自分にも原因があるかもしれないし、テルだけに責任を押しつける気はなかった。

実際にミカの1人目の浮気相手に対して、僕は何も声を荒げたりしていない。

 

ただ今回は、関係を持っている相手の旦那、つまり僕を目の前に、よくもぬけぬけと一緒に酒が飲めたなと。

  

怒りは最大級

普段ヘラヘラしてる僕から笑顔が消えた

あの感情は一生忘れることはないだろう。

そして、あのビール瓶の感触も。

そして冷静になって2度と同じことはしないという内容の誓約書を書かせて帰ってもらった。

次はミカの番だ。

   

「テルの彼女に謝りに行かないと」

テルの彼女も僕とまったく同じ状態で、テルがミカと関係を持っていることを知らない。

夫婦間で話し合いの前に、まずはテルの彼女に謝罪に行くところからだ。

ミカは、後ろめたさからか腰が重そうではあったが半ば無理やり連れて行って謝罪しに行った。

テルの彼女とミカは同じマンションに住む幼なじみまでとは言わないが、割と古くから知る友人だったそうだ。

テルの彼女はすでにテルから事実を聞いていたようで取り乱すことはなく、「もう別れようと思ってたから大丈夫」と言った。

僕はそれが本心か本心じゃないかはその場では感じとれなかったが、胸が締め付けられる感覚があったことを覚えている。

帰りの車の中で、ミカが許してもらえてよかったと言わんばかりの表情で、少し肩の荷がおりたような表情をしていた。

僕は不安しかなかった。

しかし、息子2人もいるし、ミカも根は悪い人間じゃないことは知っている。

ここで離れてミカを突き放したら、ミカは路頭に迷う人生を送ってしまうと思い、僕が面倒を見てやらないといけない。という思いまでも感じていた。

今回のことも自分の中で押し殺して、もう一度ミカを信じてやり直そうと決めた。

そう決めたなら今回のことは反省して理解してもらわないといけない。

まずは僕と距離を置いて、ミカに頭を冷やしてもらおうと少しの間家を離れることにした。

ミカとコウスケとレオを残し、僕が少しの間実家に戻ることにした。

両親には、今後の関係が変になるのが嫌だったので適当な嘘をついて浮気のことは話さなかった。

1週間程経った日のこと。

実家暮らしだとネット環境がなく暇だったので、家にあるホームルーターを取りに行こうと思い、23時頃に家に向かった。

今思えばこの行動は本当によかったと思っている。

「ガチャッ」

玄関を開ける

!!!!

見覚えのない靴があった。

まさかと思いながら寝室に入ると、見たことない男とミカと子供達が寝ていた

僕は一度外に出た。

ものすごく冷静だった。

もう無理だ。

治るやつじゃない。

子供をここに置いておくことはできない。

僕が育てよう!

親権は取れるのか?

取るためにはどうすればいい?

決定的な証拠が必要だ。

僕はiPhoneを取り出し動画を回してもう一度家の中に入った。

電気をつけてもまったく起きる気配がない。

これから僕は離婚と言う選択肢を取る。

しかし、ミカ1人ではまた同じような生活を過ごすだろう。

荒れた生活を過ごしてしまうに違いない。

絶対にミカには協力してもらう人が必要だ。

僕はもう協力することはできないし、チャンスも与えた。

そしてなにより、子供の成長は待ってくれないので、いつまでもミカを待ってるわけにもいかなかった。

ミカの両親にはムゴイが、今の現実を知ってもらい、今後ミカに協力してもらう必要があると思った。

僕はミカの両親に電話をして来てもらうことにした。

ミカの両親が到着して、改めて僕とミカの両親3人で家に入った。

そこからは地獄絵図だった

どれくらい時間が経っただろう。

僕は誰にも怒りという感情はなく、ただ先のことしか考えていなかった。

不倫相手の男は僕の3つ下くらいの年齢のチャラっとした男だった。

まだ若いので、後先考えずにヤレる女がいたからここに来たって感じなのだろう。

そんなまだちゃらんぽらんな不倫男が、ある意味不運だなと思える余裕すらあった。

不倫相手ととくに話すこともなかった。

と同時にミカともとくに話すことはなかった。

親権のこと、荷物、お金など離れる準備の話は後日連絡するとだけ伝えて実家に戻った。

帰り際にミカが「待って、もう一回だけチャンスちょうだい」と訴えてきた。

もう振り返ることはできない。

自分のために、周りの人のために、そして子供達のためにも進むしかなかった。

僕はそのまま家を後にした。

僕はコウスケとレオ2人の親権を取る頭でいたが、色んな話し合いの結果、僕はコウスケだけ親権を得る形となった。

ミカの両親から面会の話もあった。

僕は3歳以下の記憶はないと言うし、変に月に何度か会うのは逆に複雑で混乱すると考え、面会はしないことを伝えた。

子供が会いたいと言ってきたら全然会いに行ったらいいと思ってる。

育児に正解はないだけに難しい決断ではあった。

そして、そこから僕とコウスケ2人の生活がスタートした。

最初は本当に大変だった。

子供の病院に連れて行ったり、夜泣き、ミルク、洗濯、食器洗い、お金の管理、料理、なにをしても不慣れで本当に0からのスタートだった。

今でもそうだが、とくにこの最初の数ヶ月は、僕(大人)がコウスケ(子供)を育てていると言うより、コウスケ(子供)が僕(大人)を育てていると言った方が正しいだろう。

本当に子供と環境に僕は成長させてもらったと感じる。

子供の病院に連れて行ったり、夜泣き、ミルク、洗濯、食器洗い、お金の管理、料理、などある程度出来るようになったときに、これらの大変さが身をもってよく理解できた。

世の中の僕のようなダメ男に伝えたい。

自分は仕事をして働いて、嫁は専業主婦でずっと家にいるから自分の方がしんどい。

こんな風に思っているならまじで今すぐ改めないといけない。

家事の大変さと育児の大変さはやってみないと分からない。

少し手伝ったぐらいじゃ分からないし、見えない部分の方が多い。

育児なんて子供相手なんだから、思い通りにいかないのが当たり前の世界。

自分は会社の同僚達と何気ない日常会話をしながらストレス発散ができるが、専業主婦は大人と会話する場面がなかなか存在しない。

仕事から帰ってきた旦那が、やっと自分の時間だと横になってダラダラしたり、ゲームをしたり、携帯を触ったりしたくなる気持ちも痛い程分かる。

だけどそれは嫁も同じだ。

嫁はずっと大人と会話ができないまま家事や育児を頑張って、やっと帰ってきた旦那と何気ない会話をしたいのに、仕事で疲れているから。やっと自分のことができる時間だから。と言って話しを聞いてあげないのはとても酷なことだ。

どの家庭も基本は旦那も嫁も、2人共本当によく頑張っている。

なのに不仲になったり、離婚したりする人達が多い理由は、どっちかが頑張ってない訳じゃない。

パートナーのしていることを理解しているようで理解していないからだと思う。

相手が何を頑張っているかにちゃんと目を向けてさえいれば、もともとはお互い頑張っているんだから絶対にうまくいく。

同じ屋根の下で暮らす家族なんだから、あら探しをするのではなくて、良いところを見つけて夫婦で協力していくことが大切だと思う。

そんなこんなで、僕がある程度2人の生活に慣れて行った頃、少しネガティブになる時期が訪れる。

僕は会社員の為、仕事の間保育園にコウスケを見てもらう必要があった。

保育園にお願いするつもりでいたが、僕の母親が、「コウスケはまだ一歳にもなっていない年齢で母親もいない。そんな中いきなり集団行動の保育園に入れるのではなく、3歳までは実家に通わせて実家で愛情を注いであげたいから協力させてくれ。」と言ってくれた。

本当に僕も同意見だったし、母親がそう言ってくれたので素直に甘えて僕が仕事の間、保育園には通わず実家に通うことになった。

凄くありがたかったが、その生活に慣れてきた頃にこのネガティブなモードが訪れた。

平日は朝仕事前に実家にコウスケを連れて行って、仕事が終わって18時頃に実家に迎えに行って、家に帰ってご飯やお風呂などをしているとあっという間に21時。

僕はコウスケを21時に寝かせていたので、平日のコウスケとの時間は実質3時間だ。

これでコウスケは本当にいいのか?

さらには自分1人でコウスケを育てると決めたくせに、僕の母親が一番コウスケの面倒を見ていてくれている現実に、「何が自分1人で育てるだ。全然自分1人でなんか回らないじゃないか。」と不甲斐なさにネガティブになっていた。

そんなことを考えながら一日、また一日と過ぎていく。

ある夜、ご飯を食べないコウスケを叱った日があった。

コウスケは泣いていたが、構わず僕はリビングで食器洗いをしていた。

優しくすることだけが育児じゃない。可愛いだけでは育児はできないし、大きくなってコウスケが苦労をするという考えから、当然今日のように怒ることもあった。

僕1人で父親役と母親役両方をしているといった感じだ。

泣き声が聞こえなくなったので、振り返るとコウスケが横になっていたので近づいてみると、泣き疲れて寝落ちしていた。

可哀想なことをしてしまった。

怒りすぎて後から後悔したことは、親なら誰しもが経験したことがあると思う。

僕はその寝顔を見ていたら、ネガティブな気持ちになっていた自分の気持ちに少し整理ががついた。

自分がネガティブになっている理由は、自分のことしか考えてないからということに気がついた。

コウスケにとっては、僕が1人で育児を完結させてようがさせてなかろうが関係ない。

むしろ、1人で完結させようとする方がコウスケに寂しい思いをさせる。

僕の母親に協力してもらっていることで、コウスケは日中たくさんの愛情を注いでもらっている。

逆に1人で育児しようと思っていることが間違いだ。

保育園に通っていれば、保育士さんに助けてもらっているし、友達と遊ぶということは友達にも助けてもらっている。

こんな簡単なことも分からないくらい僕は自分のことでいっぱいで、ちゃんとコウスケの目線で物事を考えられていなかった。

平日は3時間程度しかコウスケとの時間がないことに関しては、今の仕事、僕が会社員である以上頑張って解決する問題ではない。

だからそれをなげくのではなくて、どうすればコウスケとの時間を作れるかと考えた。

その結果、会社員ではなく個人事業主として働いてコウスケとの時間を増やそうと考えた。

働いている会社は凄く好きで、離婚したときもたくさんの人に助けられたし、本当に良くしてもらっている。

そんな良い会社をやめてでも、コウスケとの時間を求めてチャレンジしようと決めた。

そうはいっても何かできることがあるわけでもなかったので、動画編集やアフィリエイトを中心にとにかく勉強した。

 

それから約1年半が経った。

収入は会社員の時より減るが、生活できる程度まで稼げるようになったので、会社をやめると決めてから約1年半後についに会社をやめた。

コウスケとの時間も増えて、2人で色んなところに出かけたり遊んだりと、求めていた生活を手に入れた。

これで物語が終われば凄くカッコよかったのだが、僕の場合はまた会社員に戻ることになる。

約1年が経った頃。

僕が会社員に戻るキッカケとなる2つの出来事が起こる。

最初の出来事は、身内の不幸事も重なり、自分の生活費以外にもお金を渡さないといけない状況になってしまったのだ。

これは予想できていなかった。

不幸事で急に支出が増えたりすることなんて想定していなければいけなかった。

元々お金よりコウスケとの時間を優先に考えての行動だったので、2人の生活費程度しか稼げていない中、他にお金を渡すとなると仕事量を増やす他なかった。

会社員の時と変わらない時間家で仕事をすることになる。

それでも足りないときは貯金で賄っていた。

 

毎月減っていく通帳の残高

終わりの分からない二重の生活費

 

求めていたコウスケとの時間が、会社員のときと変わらなくなった現実

金銭面で言うならば、会社員の時より仕事をしないといけないという現実

働き方を考え直すには充分すぎるほどだった。

それでも僕は、会社員のときよりコウスケとの時間が取れなくなるまでは、今渡している二重の生活費生活も、いつ終わるかは分からないが、もしかしたら来月で終わるかもしれないし、もう一踏ん張りする決意をして奮闘していた。

そんなある日、数年前まで飲みに行ったり皆でワイワイしていた僕が、ずっと家で仕事をしていることを気にかけてくれたのか、友人がマッチングアプリを勧めてきた。

気持ちはありがたく受け取ったものの、その日は何もすることはなかった。

会社員をやめてからコウスケが実家に行く機会が激減していたこともあり、コウスケが実家に泊まる日があった。

そして今日がそのコウスケが実家に泊まる日だった。

いつもは仕事がはかどるので仕事をするのだが、今日は本当に疲れていたのでゆっくり休もうと思っていた。

ソファーに横たわって目を閉じる。

その時ふと先日の友人の話を思い出した。

マッチングアプリの話だ。

約3年間コウスケと2人で生活していて、やはりコウスケに母親がいない環境を、コウスケの立場になって考えるとしんどいときは度々あった。

言葉では表現しづらいが、母親にしか出せない包容力、母性みたいなものが、僕1人でコウスケを満たせられている自信はなかった。

いつかコウスケに母親ができれば嬉しいな

そうは思ってはいたが、正直諦めていた。

何を考えているんだ。

マッチングアプリで出会った女性とそんなハッピーエンドでもイメージでもしているのか?

お金が回っていないのに、シングルファザーがマッチングアプリなんてやっている場合じゃないだろう。

そう思った。

思っていたが、何か自分の中で引っかかった。

これって本当に自分の意見なんかな?

昔、お酒の席で誰かが、「あいつシングルマザーのくせにマッチングアプリしてるんやって〜」と笑う人がいた。

僕はなにがいけないのか理解できなかった。

その人はテレビの見過ぎだと思った。

毎日寝ずに仕事をして、体をボロボロにしながら一生懸命子供を育てるシングルマザーのお話。

自分の娯楽を全て捨てて、化粧もまったくしない。自分にお金を一切かけないで子供を立派に育てきったシングルマザーのお話。

どちらも本当に素晴らしい話で、リスペクトしかない。

だけど僕の考えは少し違った。

テレビも視聴率が大事なんもんで、オーバーな表現をしていることもあるだろうし、自己犠牲を美化しすぎてると思う。

なにより、僕がその素晴らしいシングルマザーの子供だとしたら、母親にもっと寝てほしいと思うだろうし、化粧もしてほしいし、好きな物を買ってほしいと思う。

実際に僕の母親がシングルマザーで頑張ってくれている時期は、昼も夜も仕事をしてくれたおかげでなんとか生活が成り立っていた。

絶対しんどいのに明るく振る舞って、休みの日は遊びに連れて行ってくれていた。

だけど、どれだけ明るく振る舞ってくれても子供はやっぱり疲れていることは幼いながらに感じ取れる。

だから母親にプレゼントするものは、肩揉み券、食器洗い券、口紅など自然とそういったものが多かった。

要するに、肩揉み券や食器洗い券を渡す背景には、母親に休んでほしい。と思っているということ。

口紅を渡す背景には、もっと自分にお金を使ってほしい。楽しんでほしい。と思っているということ。

まったく同じだ。

第三者として見る分には、昼も夜も働いて、化粧や自分の趣味などに一切お金をかけないで子育てをするシングルマザーは、カッコいいし尊敬する。

だけど子供や、近い存在の人は、母ちゃんもっと寝てよ。もっと好きな物買ってよ。って間違いなく思う。

シングルマザーは子育てしかしたらいけない。

シングルマザーがTikTokに投稿したら育児しろ!とアンチが沸く。

こんな風潮があるから僕もシングルファーザーがマッチングアプリなんて。と世間の風潮に飲まれているだけで、自分の意見じゃないことに気がついた。

メディアや大衆が作った風潮、常識に生きるのはやめて、自分に正直になろうと思った。

僕はコウスケに母親ができてほしいと思っている。

僕は今日あった面白い話、何気ない話を嫁さんとしたいと思っている。

僕は寂しいと思っている。

だったら見合った行動をしようと思った。

僕は今日ゆっくり休むつもりだったが、何かの転機になればとマッチングアプリをインストールした。

自分に正直になったことによって生まれたこのたった1つの行動、が僕の人生を大きく変えることになる。

どうか読者の皆さんも、世間体にとらわれずに自分の心に正直に行動してみてほしい。

言語化すると分かり易いが、自分の心と真逆の行動をするのと、自分の心に正直に行動するのとではこれからの人生大きく変わるはずだ。

話を戻そう

そして、マッチングアプリでマッチングしたマリンという女性とすぐに会うことになった。

マリンはシングルマザーで、1歳6ヶ月になる息子(ダイチ)がいた。

未婚でダイチを出産し、実家で子育てをしているようだ。

同じシングル同士ということもあってすっかり仲良くなり、僕とコウスケとマリンとダイチの4人で良く遊ぶようになっていった。

そんな生活が1年程経った頃に僕らは付き合うことになった。

マリンは未婚のシングルマザーではあったが、お互い一度失敗してる同士みたいなもんで、子供のことを考えれば付き合うまでのハードルが高い同士、付き合うという決断をするのにすごく慎重だった。

その分付き合ってしまえば結婚までは早く、半同居生活が半年程経った頃、結婚することに決めた。

コウスケの本当のお母さんになったマリン。

ダイチの本当のお父さんになった僕。

今日からマリンがママになってもいい?とコウスケに話すと、コウスケは「うん。いいよー!」と言って、恥ずかしがるかなーと思っていたが、その日からすぐにマリンのことを「ママー」と呼んでいてびっくりした。

その日の夜は、嬉しそうに「ママー」と呼んでいるコウスケを思い出して枕をビチョビチョに濡らした。

こうして僕とコウスケとマリンとダイチの4人家族になった。

そう。

「結婚」

これが2つ目の出来事だ。

結婚したタイミングで、もっと安定して多くのお金が必要となるので、会社員に戻る決意をした。

以前勤めていた会社にまたお世話になることになった。

愉快な仲間達と一緒に仕事をしつつ、毎月安定した収入が入ることのありがたさを痛感した。

初めて会社に感謝の気持ちが芽生えた。

よく聞くどれだけ仕事をこなしてもこれっきりの給料だとか、休みが少ないだとか。

僕もそんなに文句を言うタイプではなかったが(文句が言えるほど仕事をしていなかっただけ)どこか仕事を手伝ってあげてるんだコッチは的な。

会社に労働時間を買ってもらっている、仕事を貰ってることを忘れて、僕が仕事を手伝ってあげてる的な。

今考えると凄く恥ずかしい。

経験や知識を積むと、感謝できるキャパが広がることを知った。

逆に経験や知識が乏しいと、人の文句、会社の文句ばっかり、否定ばっかりしてしまう人間になることを知った。

数年前までいた職場に戻ってきただけなのに、数年前と見え方が違う。

結果だけ見れば、個人事業主として働く為に会社を辞めたが生活が苦しくなった。失敗した。

確かに失敗している。

だけどこの失敗の経験は確実に僕を強くさせてくれている。

本当にちゃらんぽらんだった未熟な父親(僕)に神様が試練を与えてくれたのかもしれない。

それくらい濃い5年間だった。

なんか子育て終わったような言い回しになっているが、僕はこれからが本番だ!

マリン

コウスケ

ダイチ

そして

「オギャー、オギャー」

僕とマリンのもとに産まれてきてくれたアリサ

5人家族となってこれから一致団結して進んでいく。

これからたくさんの困難もあるだろうが、まったく怖くない。

生きてさえいればなんとかなる。

今何か上手くいかなかったり、落ち込んでいたり、疲れたと思っている方

ため息をついているだけではいけない。

開き直るも良し、休むのも良し、環境を変えてみるのも良し、友達に相談するのも良し、なにか行動してみてほしい。

僕でいえば、離婚を決断した場面、マッチングアプリをインストールした場面、会社員をやめた場面、本当にひとつの行動で、未来が180度変わったりする

もちろん良く変わるだけではない

悪くなることもあるだろう

しかしなにも心配いらない

なにか失敗しても、今めちゃくちゃしんどい方も、風邪と同じで悪くなれば、あとは良くなるだけだ。

そう。

あとは、よくなるだけ。


#創作大賞2023 #オールカテゴリ部門

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