リストカット

多くは死のうと思ってリスカはしない。
ドラマの印象からそう思っている人もいるかもしれないけど。

リスカは「生きよう」とすることの証。

DV、虐待、貧困、いじめ、孤独、、
子どもはそこから逃れる術を知らない。
大人のアドバイスなんて簡単に実行できない。
だってそこに投げ込まれた身なんだから。
悪いのは振るう方なんだ。
振るわれる方は無力なんだ。

大人だって自分自身の苦悩からは逃れられないのに。
そんなに簡単に言うなよ。
口先だけは無責任だ。

子どもは逃れられない問題を受け止め、息をとめて生きている。
息がつまり死にそうになる。
水面の見えない水中でもがいている。
窒息しそうだ。

そんなとき、ふとリスカをしてみた。

プファ、水面から顔をあげ息をすることができた。

なんだかホッとする。
穏やかな気持ちになる。
空に浮かんで息をすることができた。
水中から解放される。
気持ちいい。

辛く惨めな生活がなかったことになる。
リストを切るように、悪夢のような現実が切り離される。
リスカをすると生きられる。

友人のひとりは、リスカなんか止めなよ、っていう。
真剣に親身になって言ってくれる。
わかるんだ、でも止められない。
そのときだけ息ができるのだから。
リスカさえ取り上げられたら、暗黒の水の底へ沈む。
生きることをやめられない。

やがてリスカをやめないアタシに腹をたて、離れていく。

友人のひとりは、親身になって心配してくれる。
ある朝、その友人もリスカをしたと言った。
その子も息を止めて水中でうごめいていたようだった。
ほっとした表情にかわった。

でも、、、

最近リスカをしても解放されなくなってきた。
やりすぎて、慣れてしまったのか?
リスカをしても息ができない。
ホッとできない。
日常から逃れられない。

DVも虐待も貧困もいじめも、、、なにも解決していないのに。

援助を求めている子どもは全体の1割。
自傷度合いがたかいほど、援助希求は薄くなる。
だから、ほとんど会うことはない。

でももし、こんな子に出会ったら、、
根本的な問題が解決するまでつきあえなくても、、、
できることなら、、、
リスカを否定せず、アドバイスをせず、ひたすら絞り出される言葉を聴くしかない・・・

とりあえず、眉を潜めず、見下さず、排除せず、、、
リスカを憎まず、そうせざる得ない生活環境を憂う、という目線はもちたい。

(「子どもの自殺予防の講演会」からのnote)

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