内山節『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』

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帯に書かれた高橋源一郎氏の言葉と同じように、僕自身もキツネに騙されるようなことはないだろう。また、同じように、それがこんなにも重要で悲しいことで、さらに言えば、絶望的なことであることに今ままで気づかなかったことを悔やむ。

しかし、文中の表現を拝借して逆説的に言えば、身体性、生命性を取り戻せば、再び僕たちは狐に騙されるようになれるのかもしれない。そのような世界を取り戻せるのかもしれない。その道標は見えた気がする。そうでなければ、内山氏もこのような本を書く必要性を見出さないであろう。

問題は、それを未来の希望と捉え、そちらの方向へ舵を切りのか、それとも理解はしつつも(理解すらできない人もいるだろうが)多くの選択肢の一つに過ぎないと思い、このままの方向へ進むのか。

言語化の難しい、なんだかよく分からない現代社会において、僕たちは、失われてしまった、しかし、かつては確実に存在した「狐に騙される社会」をどのように捉え、そして、どのように変えていくべきなのか。僕は、内山氏の唱える「狐に騙される世界」を未来の世界として推したい。

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