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㊴スリランカ旅/中国の影響力分析Part3 ハンバントタ港1月5日+ファクトチェック

2018年1月の記事です。

前夜に蚊を1匹も仕留めることができずに停電も体験するという素晴らしい夜を経てからの朝です。ずっと起きていたような状態だったので、朦朧とした意識のまま朝の散歩をすることになりました。以下、大量の写真を掲載しますので、ハンバントタの町(というよりは村)の雰囲気を知っていただければと思います。

中国へのハンバントタ港の99年間の貸与というのがアメリカ、欧州、日本等では脅威と思われていますが、往々にしてあるケースが「地元は、住民に過剰な迷惑がかからなければ、ひとまず気にかけない」という姿勢です。

ミャンマーのミッソンダムの水力発電は周辺住民が多すぎて、更には民族問題を抱えるエリアなのでミャンマー政府が地元民の意見を尊重して事業を中止しました。ラオスのバナナプランテーションも農薬を大量使用していて、周辺住民の健康被害が広まったのでラオス政府が規制をしました。

いまのところ、ハンバントタは港の建設・貸与で多大な利益も不利益も被っていない状態なので、村は従来の村とあまり変わらない景観を保っているようです。

以上は、私が10人以上の住民にインタビューして得た感想になります。それでは、以下村の写真を共有いたします。

以下では写真の前に地図でポイントをお示しします。このポイントから次のポイントに移るまでの間に撮った写真集になります。村の様子がなんとなくわかると思います。

ハンバントタの1番の大通りを港に歩いていく途中になります。歩いていると住民がニコニコと挨拶して下さるので、港湾で働いている中国人労働者に間違えられないように、I am Japanese. I am on holidayと繰り返しまくりました
大きな湿地が見えます。ハンバントタ自体が0m地帯で湿地帯や湖が非常に多いことがわかりました。埋め立てには適していますが、はっきりいって大型船が寄稿するための良港とはいえません
この先にぎりぎり見えるか見えないのが、港のゲートになります
なんかキーキーと音がすると思ったらサルが大量にいました
子ザルと親ザルが高いところから見下ろしていました
ここは、港のゲート手前の中国が既に買収しているとLakmalが教えてくれた敷地です、さるの群れもこの敷地内に住んでいます。おじいさんは子供はいませんが、病気の奥さんがいるようで介護をしているとのこと。正式に土地を所有しているのかわかりませんが…
奥に見えるのがゲート
ゲートからの光景です。あんな大量の積み上げクレーンはいまのところ不要なようです
ゲートに向かって左手にある海軍のための新たな敷地
このポイントはTangalle Rdという道から無理やり茂みをかき分けていけば北の細い道に出ることができると思い挑戦したもの
Tangalle Rdの光景
茂みをかきわけて行くと、そこには
小さい川が行く手を拒んでいました。土地の水位が低いのが実感できました

この時点で裏口から港に入るという計画も頓挫しました。半分冗談ですが「ドローンを購入して飛ばして上空から港湾の状況を撮影したかった~」と後悔しました。おかげでドローンを購入して飛行できるようになるのが、直近の目標になりました。

後ほどGoogle Mapで確認すると私が突き抜けたのが矢印の箇所で、見つけた細い川が赤丸の箇所
白い完成済みの綺麗なタンクと、現在建設中にどうみてみボロボロのタンクが見えました。すごく気になったので、後ほど村の人に話を聞いたところ、スリランカの石油タンクのようです。要は、ここで貯蔵されている石油を中国船に補給するというのがそもそものハンバントタ港の役割です
Google Map曰く、Mangamupuru Port Oil Tank Farmという会社が経営しているようです

以下はランダムな村の様子になります。

村の中心部のバス停です
野菜マーケット。1店でも立派なマーケットです!!!
魚市場です、ハンバントタの中心産業は漁業です
色々と話を聞かせてもらったおじさんです。2004年の津波で子供2人と奥さんの家族を失って以降、漁業で生計を立てるのがやっととのことでした

ファクトチェック

スリランカの研究者として代表的なのは、アジア経済研究所(通称:アジ研)の荒井悦代さんです。彼女は、現場に出向いてきちっと取材をして分析をしてレポートを執筆するスリランカの唯一のプロです。(荒井悦代 研究員インタビュー

荒井さんが2017年2月に発行した「バランス外交と中国回帰で揺れるスリランカ (分析リポート)」は最新のスリランカ情報を把握していて秀逸ですので、これを参考にスリランカ旅で見聞きした内容のファクトチェックとおこなっていきたいと思います。中国の一帯一路構想や、中国のスリランカへの影響力や、海洋シルクロードにご関心をお持ちの方は、学びが大きいと思います。

以下は、ハンバントタ港のファクトです。

ハンバントタ港が開発された契機
・2006年に中国・スリランカが合意、2008年に開発開始。ハンバントタが選択された理由は、

1ハンバントタを中心とするスリランカ南部は2004年12月の津波でも多大な被害を被った
2ラージャパクサ前大統領の出身地に近かった
→2の理由がメインで、1の津波の被害からの復興とハンバントタ港の開発は関連性がないという印象を受けた。

開発主体と経過状況
・中国港湾工程(CHEC)と中国水利水電建設集団公司(Sinohydro)が開発主体
・2008年1月にバースを主体とする第1フェーズが始まり、予定より半年早い2010年11月に開港
・2015年5月にコンテナターミナル建設のための第2フェーズ開始、掘削は終わり海水の注入が2015年7月におこなわれたが、第2フェーズの工事は未完了
・第1フェーズ総工費6億5000万$、第2フェーズ8億800万$
→このあたりの細かい数字のファクトや経過状況はヒアリングでくみ取れませんでした。

港の役割
・沖合を航行する船の燃料や物資の補給基地になる予定
・しかし、港の入口から1.2キロ離れた地点に石油タンクが建設され、パイプラインで繋がれていて、2014年6月にスリランカ港湾局が操業開始したが、現在は休止中です。
・現在は、主に自動車の中継基地として機能(政府が主体的に推進して、現代自動車がチェンナイで製造した自動車の中継基地をシンガポールからハンバントタに変更した例あり)
・不安定なパキスタンのグワダール港と比較して安定したインド洋の中国の拠点
→石油タンクはMangamupuru Port Oil Tank Farmのものが一部完成していて、他にも建設中のものが沢山ありました。これらを中国船に提供するのが当初の港の役割ですが、現在は自動車の中継基地として機能しているというのは、ヒアリングと一致。一方で、利用量はかなり少ないです。

港の財政状況
・スリランカ政府は、中国に対する債務の株式への転換で、ハンバントタ港運営会社の株式の80%を12億$で中国企業に売却。この手続きで対中債務は80億$→68億$に圧縮。
・株式の80%を保有する招商局国際有限公司がハンバントタ港の運営を行う(スリランカ政府は残りの20%を保有)
→このあたりの細かい数字のファクトはヒアリングでくみ取れませんでした。

今後の港の開発
・土地1000エーカーのみではなく、1万5000エーカーを工業団地として開発した。
・海軍基地をゴールからハンバントタに移す計画がある
→Lakmalが言っていたように、中国の敷地面積が拡大する予定であることから、更なる住民の立ち退きが生じるとみられます。また、海軍基地はいま建設中でした。

レポートの内容だけからですと、立ち退きを強いられた住民の存在や、港ができたせいで過去にあった隣村との連結性が失われてしまったことなどは想像できないため、やはり現場に赴いて住民の方の意見を聞くという行為は非常に価値があると実感しました。

開発以前の港の全体像と開発計画
住民にとって大不便なハンバントタの交通事情
ラージャパクサの汚職政治により新しすぎるハンバントタの周辺の道路、日本でいえば、山口県の道路並み

スリランカには今回は研究調査目的で出向いたため、世界遺産で絶対にスリランカで訪れるべきシギリヤやキャンディには日程の都合上行くことができませんでした。

またの機会を利用して絶対にもう一度スリランカを訪れようと思います。次回は、ラオスに対する中国の影響力を取り上げようと思います。

See you soon.

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