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コーヒーブレイク17回目:国家公務員(キャリア官僚)のお仕事Part4
前回16回目に続き、Part4です。
世間の皆様は、官僚には興味がないと思っていましたが、意外にも沢山のアクセスをいただいていて、驚いています(^_^;)
それでは、今回は、中途で霞ヶ関に入ると、どのような「スキル・セット」が手に入るか?を解説します。
例えば、以下の記事では、「調整力」を挙げています。
このような説明方法もありますが、長らく霞ヶ関に勤めてきた立場から言えば、先輩から私が読めと言われ、私が後輩にも読んだ方が良いとおすすめしている書籍の内容こそが、我々役人のスキルです。
その書籍が、「役人道入門」になります。
2002年3月に発行され、新装版として2018年11月に再発行されています♪
私が、コンサルに就職しようと思った際、現役のコンサルも読んでいるから、絶対に読んだ方が良いとオススメされたのが、「イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」」と内田本(仮説思考、論点思考)でした。
どこの世界にも、読んでいて当たり前の本が存在します!
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「役人道入門」には、役人になる上で、基本的な所作(マナー)や仕事のコツがコンパクトにまとめられています。
コンサルとの最大の違いは、副題にもある「組織人のためのメソッド」です。
役人は、1人1人の能力ももちろん重要ですが、組織として団体として仕事をしなければならないため、他の会社、組織以上に、「調整力」が重要になります(その分、意思決定が遅いという批判もありますが、政治的な対立がない案件や、迅速な対応が必要な案件は、素早く意思決定します)。
早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け
If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.
こんなアフリカの諺があります。
戦略コンサルであれば、何よりも1人で行くスキルが重要ですが(上位の職位になれば違いますが)、役人は(どの職位であっても)みんなで行くスキルが必要になります。
この書籍は、以下の構成で、「健康編」や「世界の役人たち」という章があるのが特徴です。
そして、冒頭には、「役人は、国家が国家として成立するための礎であり、これは洋の東西を問わず、また、歴史上古今を問わない事実であると考えている」という印象的な台詞があります。
第1章 文章編
第2章 交渉編
第3章 組織編
第4章 人事編
第5章 健康編
第6章 世界の役人たち
第1章 文章編
まずは、第1章は、「正確な文章を書くことは役人の基本である」から始まります。
官僚制の歴史を端的に触れて、筆者の経験を綴っています。
歴史的にみても強力な国家には強固たる官僚制度がある。そしてその必要不可欠の要素として正確な文章を書きうる役人がいる。
中国において膨大な領土を治め、異民族を含め何千万人あるいは何億人という国民を対象として、それなりの統一国家を維持することを可能にしたのは官僚制度の存在であったことはよく知られている。
(中略)
清朝末期に廃止されたこの制度(科挙制度)の下では、役人、特に高級官僚を目指す者には格別の作文力が求められた。これらの試験にパスするためには、古今の文章の通じていること、それを踏まえた内容と格調の高い文書を書けることが求められた。
これを読んで、キングダムの45巻を思い出しました。
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帝国や国家を支えるのに、やはり役人(官僚)の存在は大きいと言えます。
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![](https://assets.st-note.com/img/1705838975328-Vu2T2ujdUD.png?width=800)
文書は最強のツール(賞味期限が長く、支配階級の武器)
脱線しますが、
最近はTiktokやYoutubeのような映像コンテンツが増えていますが、はやり、はやり廃りのライフサイクルは短くなっています。
ライフサイクルの点で、現存して最強の流行コンテンツは、モアイ像です。
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次に、木造建築、アート作品、書籍、映像コンテンツと続きます。
ビデオに収めた映像コンテンツの賞味期限は、10年も無かったのですが、モアイ像や、法隆寺なんかは、1,000年以上も枯れません。
こういった点では、映像コンテンツと比較すれば、未だに書物に残った文章の賞味期限は長いと言えます。
また、大英帝国が植民地とした国では、支配者は、被支配者(植民地の住人)に話し言葉は教えましたが、読み言葉、書き言葉は教えませんでした。
読み言葉(書籍)による知識吸収が圧倒的に効率がよい(コスパもタイパもよい)ため、知的優位に立たせないように、イギリス人は、できるだけ、読み言葉、書き言葉を使わせなかったのです。
話し言葉をメインで教えて、読み言葉、書き言葉は、絶対に学ばせないことが、植民地支配の基本中の「キ」でした。
こういう点からも学歴が上位になり、修士課程、博士課程にいけば、アウトプットは文章(論文)です!そのため、欧米では、博士号を保有していないと、真のエリートとは言えないとする不文律があります。
話が脱線しましたが、「書き言葉」、そしてそれを読んでもらう「読み言葉」というのは、国力の基礎となります。
文章に3種類
「文書に3種類ある」というのも、文書作成に慣れていない人は、使いこなせていないのではないでしょうか?!
役人の基本は文書であり、正確な文書をつくりうることは有能な役人の基本的な条件である。その仕事の精髄が政策の企画立案である場合、代表的には霞ヶ関の中央官庁である場合、まず、その仕事のプロセスで書くべき文書には性質の異なった3種類のものがあることに留意すべきである。
それらは、「分析の文書」「検討の文書」および「説得の文書」である。
これらを詳しく解説しています。
霞ヶ関では、政治家、省内、民間人など、様々なステークホルダーがいるため、どのタイミングで、どのような文書を使用して説得していくかが鍵になります。そのため、文書の構成の仕方は、相手によって異なってきます。
第2章 交渉編
学びになる点は、多いが面白い指摘を紹介します。
信頼関係の大切さは、国内における交渉に限らない。国際交渉においても同様である。
一概には言えないが、いわゆる専門の公務員制度を確立しているヨーロッパや多くのアジアの国々との間では、この役人同士の信頼関係の大切さについて共通の理解があり、苦しい交渉の際でもそれなりの快さ、時として「敵ながら天晴れ」との感を持つことがある。
ところが、上級公務員についていわゆるポリティカル・アポインティ(高級公務員はその時々の政権が任用するという、いわゆる政治的任用制度)を採っている国の上級公務員のなかには、なんとしてでも目標を達成したいとするためか、これまでの約束を平気でくつがえしたり、不正確なことを記者会見でしゃべったりというような、いわば役人道に反する行為をする者が散見される。国内、国外を問わず、信頼関係は交渉が成功するための基礎である。
国際交流や交渉をする人のほとんどが読んでいるエリン・メイヤーの「異文化理解力」という書籍の内容を、更に役人の交渉に引きつけて解説している点が、面白いと感じました。
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第3章 組織編
霞ヶ関では、1番政策に詳しいのは、課長補佐です。
(事務次官>局長>部長・審議官>課長・企画官>課長補佐>係長>係員)
それに気づいている民間企業は、課長よりも課長補佐と面談をする傾向にあります。
実際、それぞれの仕事について最も詳細に知っており、かつ、勉強しているのは課長補佐クラスである。
だからこそ、局長が国会の答弁に行くときや、局長や次官が関係省庁と折衝するときも、課長補佐が随行するのである。
それは国内の交渉に限らない。外国との折衝でも、細部にわたることが検討されるときには課長補佐が1人ついているのが通常である。
そのため、中途採用では、係長級と課長補佐級があると思いますが、係長級でも、1年すれば課長補佐に昇進します。
つまり、課長補佐になれば、仕事の幅・権限が大きい(大きすぎる)ため、まずは慣れのため係長の仕事を1年間して貰うという中途採用の方針だと思います。
課長補佐は、実力があれば、自分1人で大企業の役員や部長と面談したり、4大弁護士事務所の弁護士に相談したりするのは、当たり前です。
課長補佐に上は、課長なので、非常に大きい権限を持っていますが、課長の了解を得ることができれば、自分の政策が形になるのです。
上司を使うと述べたが、その趣旨はもちろん上司をアゴで使うという意味ではない。政策について自らの考えていく方向に導くということである。
上司にその政策に賛同してもらい、その線に沿って動いてもらうということである。
ただそのためには、自らの提唱する政策の方向が正しいものでなければならない。また、政策の提言がタイミングよく行われなければならない。
そこで、上司を使おうとするならば、常日頃から格別の勉強をして上司のそれを上まわる良い結論を得ておかなければならない。
霞ヶ関で働いていると、常日頃から「知は力なり(Knowledge Is Power.)」が当てはまるシーンが多いです。1番知っている人が、1人者であり、説得力を有しています。
こういった人々は、日頃より、恐ろしい量の本やネット記事を読み、その内容をまとめて、自分なりの政策を作っています。
私が所属している省庁は、日本一勉強する人・勉強好きな人が多い、と思います。
第3章は、霞ヶ関への転職組にとっては、1番大事な章といえます。
第4章 人事編
霞ヶ関の官僚は、自分の人事にも注意を払いますが、部下の人事にも熱心です。自らの仕事をスムーズに運ぶため、部下の果たす役割が大きいためです。
第5章 健康編
霞ヶ関には、真面目な人が多いため、そういった方は、心の病気になりやすいという指摘は的を得ていると思います。
第6章 世界の役人たち
第2章の交渉編とも関係しますが、各国の人と交渉する機会がある人は、各国の役人の登用の仕組み、人事などを知っておくと、会話のネタが膨らみ良いです。
このあたりは、コーヒーブレイク14回目で紹介した「職業としての官僚」の「第3章 英米独仏4か国からの示唆」が詳しいです。
まとめ
最近は、
経済悪化→将来不安→生き急ぐ→タイパ思考が強まる→就職しても周りの同級生と比較したがる→1つの就職先に落ち着けない→転職活動を常に視野に入れている
という世相があります。
霞ヶ関に中途で入ってくる方にも、霞ヶ関はキャリア・アップに繋がる!
と期待する向きも大きいとは思います。
しかし、結局、どこの組織に行っても、一生勉強です。
そのため、入省前に、霞ヶ関の多くの役人が読んでいる基礎的な書籍を読んでおくと、ギャップが少ない状態で仕事に取り組めると思います。
霞ヶ関の官僚は、勉強することが山ほどあります。
委託先のコンサルの人に発注する際にも、その分野のことを、発注先以上に知っておかなければいけない、政策立案の際も、日本一、その分野に詳しくなければいけない等、やることは沢山あります。
でも、その分、世の中を大きく変える役割を担っているし、国民国家という大きなものの縁の下の力持ちになることも出来ます。
お読みいただきありがとうございます(^ ^)
それでは、次回は以下です。
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