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いつか君と語り合いたい本を読んでいるー「10代のための読書地図」(本の雑誌社)

本の雑誌社さんによる「10代のための読書地図」を読んだ。本当に素敵な本だった。


自分はもう10代ではないけれど、もしも10代だったら、あれもこれも読んでみたい。そう思える本がたくさん詰まっていた。

特に、小学生向け、中学生向け、高校生向け、それぞれの本をリストにしてくれた最初の特集はキラキラと輝いている。世の中にはこんなに名作があるんだな。

読み終えてからがさらに楽しい。本書に紹介された本を一つ一つ手に取り、読んでいくのだ。

アンソニー・ホロヴィッツさんの「その裁きは死」(創元推理文庫)はあっという間に読み終わった。同名の小説家を主人公に、シャーロック・ホームズ的なバディミステリーが展開する。古典的な推理小説を新しく作り替える。こんなに面白い本があったなんて。

米澤穂信さん「氷菓」(角川文庫)は高校の文化系部活「古典部」が舞台。甘酸っぱい。ページの向こうから青春の風が吹いてくる。もしも中学生でこれを読んだなら、きっと早く高校生になりたくなる。

サン=テグジュペリ「人間の土地」(新潮文庫)は未読だった。これも中学生や高校生の鬱屈とした気持ちに凛と響きそうな言葉だ。不時着したときのヒリヒリ感。死と再生の物語としても読める。

これらはもちろん自分のために読んだのだけれど、密やかな野望がある。

我が家にはまだ10代にならない小さな住人がいる。

この子が10代になったころ、本棚にある「その裁きは死」を、「氷菓」を、手に取ってくれるかもしれない。そして、その面白さを語り合えるかもしれない。

もちろん、興味がないかもしれない。それはそれでいい。いつか10代を過ぎた頃、30代や40代になったころ、自分のようにまた、立ち戻るかもしれない。

そんな未来を夢見ながら、本を読む。夢を見られるだけで幸福だ。それを可能にしてくれた「10代のための読書地図」は、本当に感謝したい。

まだまだ、まだまだ、読むべき本が尽きない。いつか君と語り合う日を夢みて、今日も読んでいる。

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