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「イノベーション・オブ・ライフ」を再読する①善く生きることの難しさ


クレイトン・クリステンセンさんの「イノベーション・オブ・ライフ」を再読している。育児中にはどうしても携帯を見る以外ないときがあり(子が腕の中で寝て身動きが取れない)、その隙間時間を使っている。

イノベーション・オブ・ライフは、経営理論の研究者で「イノベーションのジレンマ」を提唱したことでも有名なクリステンセンさんが、「人生において考えるべきことは何か」を説いた本だ。

冒頭の問題提起がシンプルで、何度読んでも刺さる。米国随一の名門ハーバード大を卒業した同期が、10年後、20年後に次々と道を踏み外していく。大切な家族を裏切ったり蔑ろにして、私生活がボロボロになる。あるいは、経済的、性的な犯罪に手を染めてしまう。

なぜこんなことが起きるのか?「少なくとも彼らは罪を犯すつもりの戦略でハーバードに入り学んだわけではない」というクリステンセンさんの主張はもっともだ。

これは実際に30代になり、少しずつ実感する。若い頃は当たり前に思っていた「善く生きること」が、実際にはすごく困難だということ。踏み外しがちな人生の「脆い床板」は、実はそこかしこにある。

だからこそ、本書の冒頭で提起される「家族や友人を大切に生きるにはどうすればよいか」、「罪を犯さずに生きるにはどうすればよいか」という問いは、馬鹿にしてはいけない。

原題は、「あなたは人生の価値をどうやって測るか」という趣旨になっていて、実はこれこそがヒントになる。いったい私たちは、何に本当の価値を置き、生きるべきか。そのためにどんなイノベーション、戦略が必要かを、企業戦略から学んでいこうというのがクリステンセンさんの狙いだ。

再読してまず目に飛び込んできた問いを、ゆっくり反芻している。

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