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書評 人は、なぜ他人を許せないのか

時々、ものすごく許せない出来事に遭遇する……

この本を手に取る人は、何かしらそういった心当たりがあるんじゃないだろうか。私はそうだ。

テレビのニュースを見ていて、「こんなの絶対間違っている……!」という強い感情に突然襲われる。こんなときだけなぜか正義感に駆られてしまう。自分でもびっくりするが、そんな状態になる時が確かにあるのだ。

なぜ私はこんな風に怒りを覚えるんだろう。

そのメカニズムを知りたくて、衝動的にこの本を手に取った。

正義中毒になってはいないか?

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この本では、脳科学の見地から他人を許せないメカニズムを探る。ここで言う「許せない」は、自分や自分に近しい人が攻撃を受けた時に生じる感情ではない。当事者とは関係のないことなのに、攻撃的な言葉を浴びせ、叩きのめしたくなる状態のことを指す。

これを著者は正義中毒と呼んでいる。

東出昌大の不倫ニュースをテレビ越しに罵った人。迷惑行為をネット上に晒す若者の身元を特定して拡散する人。

それ、全部正義中毒に侵されている状態ですよ!

ちなみに、私はつい最近判決が出た児童虐待死事件の犯人を、心から憎んで頭の中でボコボコにした。

正義中毒は、人間である以上、誰の脳にも備わっている基本的な機能のようだ。誰でも何かのトリガーで簡単にこういった行為に及んでしまう可能性がある。

なぜか?

そもそも人間の脳は誰かと対立することが自然なように作られている。また、人間は個人という脆弱性を補うために集団を作るが、自分が属する集団の存続を守るために、その他の集団と攻撃する構造を取りやすい。そういった本能的な部分が正義中毒の根っこになっているのだ。

日本人は特に集団を意識する人種だと言われている。

日本で個人主義的な性質が強い集団よりも集団主義的要素が強い集団が生き延びやすかったのは、災害の多さという地理的要因が大いに影響しているのではないかと考えられます。

日本は、どうしても地震や台風などの災害を免れることができない。それに立ち向かって乗り越えていくためには、皆で一致団結する必要がどうしてもある。

私達のDNAには、そんな集団を形成することの本能的なメリットがまだまだ染みついている。

出る杭を打とうとしてしまうのも、社会のルールを守らず個人行動してしまう人を叩いてしまうのも、ある意味仕方がない。それが、ご先祖様から受け継いだ、生きるための術だったのだから!

ということで、人間である以上、皆正義中毒に陥るリスクを孕んでいる。特に、日本人はそれが集団から外れた行動を取る人に向きやすい。

じゃあ実際どんな人が正義中毒に冒されてしまうのか。

この本によれば、自分を客観視できない人間や、脳が衰えて新しいものを受け入れにくくなった人間に傾向が出やすい、など色々あるようだ。私の場合、特に前者の自覚はある。強すぎる自我ゆえに、確固たるマイワールドを持っているので、私の国のルールからはみ出す物事に対してはセンサーが反応するのだと思う。

しかし、一般的にはこういう人も多いと思っている。

普段は本当に穏やかで普通なのに、「つい出来心で一回やってしまった」タイプの人間だ。ネットなんて特に簡単にそれができてしまう。

実際に他人に正義の鉄槌を下してみると、脳の快楽中枢が刺激されてドーパミンが放出されるそう。つまり、正義の名のもとに見知らぬ他人を攻撃する行為は気持ちがいいのだ。

これが癖になってやめられなくなる人は意外に多いのではないか。

最近、川崎希さんがネットの嫌がらせで法的措置を取ったが、何年も悪質な書き込みをされ続け、我慢に我慢を重ねた上での行動だったそうだ。書き込みをした犯人は、最初は出来心だったかもしれないが、どんどんと気持ちよくなってしまい、やめられなくなってしまったのではないかと私は思っている。

具体的な解決策はない

悲しいお知らせだが、正義中毒を治す劇的な解決策はないそうだ。人間に備わる本能的な機能だからだ。

私達にできるのは、許せないという強い感情を抱いたら、そんな自分を客観的に見て一旦受け止めること。脳を衰えさせないようにトレーニングするのもいい。あとは、心身ともに健康でいれば、そもそも他人の行いに寛容でいられるかもしれない。

ただ、やっぱり最後はこれに尽きると思うのだ。

人間は不完全なものであり、結局永遠に完成しないという意識が人間を正義中毒から解放するのではないでしょうか。

私もあなたも誰も彼も、完璧な人間はこの世にいない。私の信じる正義が世界の正義ではない。世の中に一貫した正義など存在しない。

そういう、ある種の諦めが必要じゃないかと思う。

by たけちゃん

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