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やさぐれた心をお持ちなら『ぼく モグラ キツネ 馬』でほぐしてください。


私にとって読書という行為は紙をめくることからはじまる。
紙をめくることが好きなのだ。

紙をめくるといえば、高校生の頃。
一部の公立高校で電子辞書の使用が許可されていたが、我が校は電子辞書禁止だった。なんでわざわざ重たい辞書を、英語・漢語・古文と持ち歩かねばならないのだと、ぶぅたれる声も多々あった。
ただ、私は一貫して紙の辞書派だった。
使い込むほどにくたびれていく辞書たち。あの感じが好きだった。

ちょっと脱線したが、紙をめくるという行為が好きな私にとって
電子書籍はちょっと受け入れがたい。
そう言うと”前時代的だ”とか、”ださノスタルジー女”だとか言われる方もいるかもしれない。
ただ、やっぱり、読書は紙に限ると思うのだ。

で、ぜひ、書籍で読んでいただきたい本がこちら。

『ぼく モグラ キツネ 馬』

チャーリー・マッケジー 著・川村元気 訳/2021.3月発行


チャーリーさんは英国出身のイラストレーターだ。
この本は、英国で2019年秋に出版されているとのこと。
さらに英国では2020年もっとも売れた本となり
”なんと!あのハリー・ポッターシリーズについで2番目に売れた本として一躍有名になった。”と言う経歴も素晴らしい本だ。

日本でも大ヒットした本なので
読んだ方も多いのではないだろうか。

かくいう私も、このヒットに乗じて本屋で立ち読みしたのだが、
1つ言えることがある。

立ち読む本ではなかった。


この本はきちんとソファーに腰を据え
お気に入りのハーブティと大好きなチョコレートを机に並べ
ゆったりとした気持ちで真摯に向き合うべき本だった。

無論、たち読んでしまったことを後悔しながら
(途中でやめられなかったのだ・・・)
すぐさまレジに向かったことは言うまでもない。

手元に本はあるのだが、わざわざここに本の記録を残す理由は1つ。
この本は”今”の自分が読む感覚と、”未来”の自分が読む感覚では全く異なるものになる、と思っているからだ。
友達との会話、テレビで流れるニュース、読んだ本、生理前後など、その時の自身の状態によって読み手の受け取り方が変わってくる本なのだ。

で、この本をまだ手に取ったことがない方は
このページを読むのはここまでにしてAmazonへ直行してほしい。
特に自己啓発本好きな方。
人生のバイブルになるかもしれない。




✂︎ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


さて、ここからは本文に入り込んで話をしていく。
すでに読んでいる人がここを読む前提なので、
概要については省略する。

私が感銘を受けたワードは次の通りだ。


・”じぶんをだれかとくらべること”
・”たすけて”
・”もっとすきになった”


”じぶんをだれかとくらべること”


私はつねに誰かと比較しながら生きてきた。

私は新卒の就職活動中、営業職に絞ってESを提出していた。
それは自分の評価のされ方がわかりやすく、働くイメージを持ちやすかったからだ。
”売上目標が〇〇万で、その目標に対して〇〇万売り上げたけど、営業部の中での順位は12位だ。”みたいに。
目に見える数字で評価され、同僚との成績比較もカンタン。
だから営業職を希望した。

ただ、こうした単純な比較はただただ自身の心身を疲弊させる。
例えば、私が新卒で入社したオフィスにめっちゃできる先輩がいた。
彼女は同僚と比較して、社内での自分の立ち位置を気にしていなかった。
彼女が比較していたのは、前年同月の自分の売上だったり、前月の自分の売上だったり、入社したての何もできなかった自分だった。
そう言う人は、だいたい自身の弱みを客観的に把握していることが多い。
だから、成績も伸びやすい。

一方の私はどうだろう。
自分の社内順位を気にしすぎるあまり、
「Aさんはあんなにお客さんと話せてる。私も数をこなさなきゃ」
「Bさんはもう1件成約してる。私も今週中に契約取ってこなきゃ」
「Cさんは今週上司からの指導を受けていない。私も早くそうならなきゃ」
・・・うぅ、なんだこの考えなし女は。
ちょっと落ち着いてってカフェに連れて行きたくなる。

こう言う奴(端的に言うと約10年前の私)は
自分の弱点が見えてないし、いつも他人と比べてるから
自分が今すべきことを理解していない。
やばいタイプだ。
(あぁ、ドラえもんがいてくれたらなぁ。)

で、この本の中でこんなやりとりが出てくる。

”いちばんの時間のむだって
なんだとおもう?”
ぼくがたずねると、モグラはこたえる。

”じぶんをだれかとくらべることだね”

『ぼく モグラ キツネ 馬』より引用

さぁ、だれか!早くタイムマシーン持ってきて。

”たすけて”


”いままでにあなたがいったなかで、
いちばんゆうかんなことばは?”ぼくがたずねると、
馬はこたえた。

”たすけて”

『ぼく モグラ キツネ 馬』より引用

うちの両親はちょっとファンキーでさ。
父親は酒飲みでタバコ大好きで車を急に買ってきて虫の居所が悪いと手を出してついでにギャンブルも手出しとくかって、私が中学生の時に自己破産した。
そんな父親は私の祖母(父からみた母)から存分に甘やかされて育てられていた。
だから父が生活費の財布からお金をどれだけお金を引こうと、それによって子どもたちの体操服を買い換えられなかったとしても挙句の果てに自己破産しても「わんぱくな息子」で済ませてしまう。
そして財布管理ができていないと、母親を責め立てる。
そして母親は、そんな父親の実家で義父母と同居するという状況が20年近く続くと、やはり耐えられなくなるものだ。
気づいたら年下の男性と恋に落ちていた。

これは私が20歳までに経験した我が家の体験記だが、まぁなかなかファンキーだと思っている。
だから、私は多少のことなら動じない。とよく言われる。
あと会話をしていくと10歳くらい年上に見られる。
それは失礼だ。まだピチピチむちむちの30代なのだから。
・・・え?

そんなだから、両親も祖父母も私は強い人間だと勘違いしてしまっていた。

そもそも私には幼少期から武勇伝がいくつか存在する。
1歳過ぎの娘の枕元にミルク入りの哺乳瓶を準備して寝ていたら、夜中に娘が勝手に起きて飲んで寝ていたとか、
歩けるようになると、出かける様子を察知しただけでアンパンマンのリュックにオムツを入れ、哺乳瓶を持ち、靴を履いて玄関で待っていたとか、
何かと自立心のある幼子だったのだ。

で、こんな感じだったから、どんなことがあってもあの子は大丈夫、だと周囲の大人は勘違いするわけだ。

そうすると、子ども心に”頼る”ことができなくなる。

だから友達と喧嘩したことも、腕に生えているフサフサの毛をからかわれて泣いた時も、生理が来ても親に言えなかった。
自分でなんとかしなければと思ったのだ。

とどのつまりは、SOSを発する練習をしなかったせいだ。
だから誰にSOSを発したら良いのか分からなかったのだ。

今は結婚もし、素敵な夫に恵まれたため
(偏屈女が好きという奇特な方もいるのだ)
この辺りはだいぶ克服してきた。

でもね、世の中には私みたいな人がたくさんいるとおもうのよ。
私の家庭環境はちょっとファンキーだったけど、
昨今のニュースを観てると珍しいわけじゃなかったんだと思うのよね。
だから、この馬の言葉はいろんな人に知っていてほしいと切におもう。

”もっとすきになった”


誰だって他人に自分の全てを
初対面の相手にさらけ出すなんてできやしない。
というのは私の持論なのだが
最初は相手との適度な距離を考えながら
少しずつ距離を縮めたり、縮めなかったりするもんだと思う。

で、自分の全てをさらけ出せる相手はごく少数に限られる。
というのも私の持論なのだが
それは私の保守的な性格に由来している。
だからだ。
この文章を素敵だと思えたのは。

”ぼくのことをぜんぶしっているの?”とぼく。
”ああ”と馬。
”それでもぼくのことがすき?”
”もっとすきになった”

『ぼく モグラ キツネ 馬』より引用


これ彼氏やったら100点満点の答えと違う?
馬、かっこよすぎ!!
うーま!ウーマ!!UMA!!!馬ーーーーー!!!!!

と発狂するレベルでイケてる。
(ちなみに、この本に出てくるキャラは馬に限らずみんな推しです。)

こういう俗な感じの感想だけじゃなかったんだけど
こういう返しってスマートよね。うん。


最後に


この本は、いつも大切に本棚にしまってあるのだが、
何か困ったことが起きた時にはとりあえず読んでみることが多い。
ここに解決策はないんだけど
思考の手助けをしてくれる存在だ。

だから私はどんどんいろんな本を読む。
思考の手助けをしてくれる存在は多いにこしたことはない。

ちなみに、うちの夫に
”私のこと全部知っても好きなの?”って聞くと
”当たり前じゃなぁい!!”と、ここ2丁目なん?って感じの返事がくる。
最近、私に対する母性が爆発している我が夫である。

”もっとすきになった”ってやっぱスマートな返答だよね。うん。


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