チョコレートは甘すぎる
チョコレートが苦手でして
口に引っ付く甘みと泥濘み
そして後を引き
口に居座り続けるあの感覚
小学4年の時まで
僕は普通にチョコレートが好きだった
それなりにおやつにもしていた
ある日
唐突に浮かんだ
『チョコレートを食べられない人って格好いい』
というまやかし
小学生ですからね
そりゃあおかしなところもありますよ
思い立ったが吉日
母からチョコレートを差し出されても
『いらない、好きじゃあなくなった』
と拒み
バレンタインに貰える
せっかくの友チョコにも手をつけなかった
(これはいま考えたら普通に酷いよね。ごめんね、これにて供養)
給食にでてきた特別献立であり
小学生の歓喜の的
チョコレートケーキ もその一つ
その日クラス中 いや 学校内で
余り物ジャンケンの
『さいしょはグー』の熱狂と掛け声が
溢れたと言う伝説の日
血で血を洗い
友人は死に絶え
悲鳴と罵詈雑言が世界で一番放たれた
皆が求める秘宝にすら
手を出さず僕はキャラを守っていた
些細な欲望で自分に課したルールを
破るほど小学生らしくは無い
謎のプライドがそこにはあった
クラスはどよめく
『おい、アイツいまなんて言った?』
『チョコレートケーキをいらない、、、?』
みたいにね
手放したく無い気持ちを隠しつつ
白熱して終了した
ジャンケンバトルロイヤルを
再開する原因を作り上げた
あの日は英雄扱いされたなぁ
いじめっ子に肩を組まれて
すげぇ不快だった
都合ってこれかぁ て
そんなチョコレート嫌いキャラクターを
演じて3年が経ち
中学1年の冬
隣の席の女の子がチョコレートを
口に放り込んでいるのを
目の当たりにした瞬間
『チョコレート嫌いなキャラクターを
演じていたなぁ』と僕は
自分に課した馬鹿なルールを思い出しました
しかし
それは遥か昔の話
なんとなくチョコレートを
買わなかったけれど
別にもういいだろう
しょーもない小学生だったなぁ、、、
と過去に呆れつつ
隣の席の子からチョコレートを
一粒貰った
ヒョイッと口にいれて
吐いた
ただ淡々と吐いた
勿論トイレまで駆け込んだから
ただでさえ切ない人望は
それなりに保たれたが
隣の席の子はギョッとしており、、
いや、もうそんな顔すら
見ている余裕はなかったかな
見事に3年をかけて
自分に催眠をかけてしまったのである
格好いいなんて想っていたが
案外世の中にチョコレートは溢れていて
損得で言うならば8割が損だった
ここから学べることは
ただ一つ
人間は単純なので
思い込めばなんにでもなれる!
ということ
いや、そんなポジティブな格言は
生まれないか
かくして
チョコレートは食べることが
不可能になってしまったのでした
いまは
音楽の才能がある人が格好いい!と思い
そんなキャラクターを演じてます
あと数年したら
みんなも自分も騙して
音楽家になれていたらいいなぁ
なんて
甘い考えでしょうか?
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