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抵当権の順位譲渡とはどういうこと?

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以前、理解するとは、整理された状態で、いつでも記憶をしたことを引き出せるようにしてあること、そしてそれは具体的にイメージ出来たら、暗記しやすいと言いました。

民法で、整理しにくい内容がいくつも出てくるんですが、特に受験時代に悩んことをいくつか、紹介していきたいと思います。今回は抵当権の順位譲渡です。

テキストを見てみると、大抵は

優先枠を、譲渡すること

と書いてあって、それ以上の説明らしい説明はほぼなく、

「なんのこっちゃ?」

と固まってしまいます。

普通に、被担保債権を債権譲渡すれば良いのでは?

何より、この疑問があるわけです。具体的にはこんな感じになるんですね。例えば、

AさんがBさんに100万円、自分の家を担保に抵当権をつけて、借りました。Aさんは、さらに、Cさんに50万円借りて、2番抵当権を付けました。

で、Aさんはギャンブル好きが治らず、期限までに返せなかったので、抵当権を実行されて、競売にかけられました。200万円が売却代金です。このままだと、競売代金から、

Bさんは100万円
Cさんは50万円
残りはAさんのもので、50万円

本当は競売の費用とか色々、かかると思いますが、それはめんどくさいので無視するとして、こんな感じですよね。で、ここで、Bさんが実はCさんに50万円借金していたら、どうでしょうか?Bさんとしては、いくつか選択肢があります。

一つは、被担保債権の一部(50万円)を債権譲渡してしまう

ことですね。付従性で抵当権も移転するので、1番抵当権が、BさんとCさん共有になるわけですね。あと、

転抵当

という手段もあります。これは抵当権も一つの財産だから、抵当権を担保にして、抵当権を設定しようという発想です。具体的にはBさんの1番抵当権にCさんが転抵当権を設定することになるでしょう。そして、最後に

抵当権の順位譲渡

です。BさんからCさんに、先に自分の分を取って良いよということを、契約して、登記に公示するわけです。

具体的には、BさんとCさんの取り分を合計した、150万円から、先にCさんの50万円を取って、残った分をBさんが取って、それでも残ったら、設定者であるAさんが取るという、契約です。今回、200万円で売れましたから、これ、意味がないんですけど、もし、100万円だったら、Cさんは取り分、0円ですよね。そういう時に、先にCさんが50万円とって、残りの50万円はBさんが取って、Bさんの残りの債権50万円分が無担保債権になるわけです。家が担保の場合は土地と違って、年数が経つにつれ、資産価値が下がりますから、こういう事態が起こりえるわけです。

でも、待てよ。そんなら、一部債権譲渡とどこが違うの?という疑問が残ります。特約があれば別ですが、一部債権譲渡だと、

共有になるのと、その持分比率だけ、決まる

だけなので、どちらから優先して配分されるかが決まるわけではありません。そして何より、

普段から、債権者なので、弁済期になれば、払ってもらえる

のが違います。抵当権の優先枠の譲渡だと、債務不履行になって、抵当権が実行された時に始めて意味が出てきます。被担保債権を一部譲渡されて、抵当権が共有になれば、

要するに譲受人も債権者になる

わけですから、ちゃんと弁済期(確定期日あればですけど)になれば、支払いを受けることが出来るわけです。つまり、より、担保として、つまり、払えなかったときの保険としての価値として、重視されるのが、

順位譲渡

ということなんです。もともと、抵当権って、何かあった時の保険として機能するものです。信頼していたのに、払ってくれないとなれば、普通は裁判を起こして、債務名義を得て、差押え、強制執行、競売というルートをたどらないといけないのを、抵当権つけておくと、債務名義不要になるメリットがあるからつけるわけです。そのため、より、担保価値を高めたい時に利用する制度が順位譲渡だと思います。今すぐに払ってくれという用途には向かないんだと思います。

イメージできたでしょうか。ちなみに、後順位担保権者ではない、その不動産の登記記録に載っていない人に優先枠を譲渡する場合、

抵当権の、”のみ譲渡”

と表現する場合が多いようです。単に抵当権の譲渡ととも、書いている場合もあって、そうなると、

被担保債権の譲渡による、抵当権の移転のこと

なのか、問題文の前後をよく読まないとわからない時がありますから要注意です。


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