見出し画像

【徹底解説】不動産鑑定士試験の会計学 おすすめ参考書と勉強法


不動産鑑定士・不動産鑑定士試験とは?

まず、不動産鑑定士や不動産鑑定士試験についてあまりご存知ない方は、以下の記事(全5記事)で徹底的に解説していますため、そちらをご覧いただいたうえで、この記事に戻ってきていただけますと幸いです。

まず、会計学とは何か?

会計学は、簡単に言うと「経済活動を数値化して記録し分析する学問」です。
これにより、組織の財務状況やパフォーマンスを明確にし、内外の利害関係者間で情報を共有することができます。

また、会計学の目的は、利害調整機能を果たしながら、経済的意思決定をサポートするために、正確で有益な財務情報を提供することです。
会計情報は組織の透明性を高め、投資家、債権者、管理者などが公正な基準で意思決定を行うための共通の基盤となります。

なぜ不動産鑑定士試験に会計学があるのか?

不動産の鑑定評価額が会計に用いられることがあったり、鑑定評価に会計資料を使用することもあるため、不動産鑑定士になるためにはこの会計学を学ぶ必要があります。

不動産鑑定士試験における会計学

会計学の出題範囲

国土交通省から発表されている出題基準には、出題範囲について以下のように記載されています。

財務会計論(企業の財務諸表の作成及び理解に必要な会計理論、関係法令及び会計諸規則を含む。)

令和6年 不動産鑑定士試験受験案内

会計学には、管理会計や税務会計などがありますが、問われるのは出題基準にある通り「財務会計論」です。
独学で会計学を勉強しようと思い、本屋へ行き、適当に会計学の本を買うと、全く不動産鑑定士試験とは関係ない範囲だった!ということが考えられますので十分に注意しましょう。

会計学の出題形式

まずは、ゴールを知っておきましょう。
令和5年の不動産鑑定士試験 会計学で出題された2問は以下の通りです。

令和5年 不動産鑑定士試験 会計学 問題1
令和5年 不動産鑑定士試験 会計学 問題2

すでに他の科目をやっていて、あれ?と思った方、いるかもしれませんが、解答用紙も見てみましょう。

令和5年 不動産鑑定士試験 会計学 解答用紙

解答用紙を見ると一目瞭然。他の科目を少しでも触れたことあるなら分かりますが、「解答欄がしっかりと設けられて」います。
そして、「問題1と2を合わせて10問(20点分)も穴埋め問題が出題」されています。

他の科目では真っ白な紙を渡されるだけの試験だったのに、会計学ではきちんと解答欄のある解答用紙が渡されます(なんと親切な......)。

会計学の問題の特徴

解答用紙の形式や穴埋め問題が出題されていることからも分かりますが、会計学は他の科目とは少し違います。

他の科目(鑑定理論、民法、経済学)は、覚えたことを使って、考えて、考えたことを論理立てて説明する試験です。
一方、会計学は、覚えたことを書くだけの試験です(ちょっと言い方悪いですけどね笑)。

だからこそ、穴埋めが出題されますし、記述の部分についても、定義を書くだけだったりと非常にあっさりしています。
簡単な話、覚えたことだけを書く試験で、試験当日分からないと思ったら、考えて書くことがほぼ不可能な試験です。

不動産鑑定士試験の会計学の学習方針(参考書と勉強法)

さて、いよいよ勉強法の話に入っていきます。
大枠は、以下のようになります。

① 会計学という学問に対する全体像の「理解」
② 会計学に関する必要知識のインプット(=暗記)
③ 過去問を使ったアウトプット

上記の順序で話を進めていきますが、最も大事なのは「②会計学に関する必要知識のインプット(=暗記)」です。
①が難しいからといって時間をかけてもダメですし、執拗に過去問へ執着し、過去問演習をし続けるのもダメです。インプットに重点を置くということを念頭におきましょう。

①会計学という学問に対する全体像の「理解」

暗記が全てと言っても、暗記する対象を全く理解しないのは流石に無理があります。
会計学をある程度理解し、全体像を掴む必要があります。そのためにおすすめなのが以下の2冊です。

①-1:カラー版 会計のことが面白いほどわかる本<会計の基本の基本編>

①-2:カラー版 会計のことが面白いほどわかる本<会計基準の理解編>

理解することに深入りしすぎて②へ進めないのは本末転倒ですので、とりあえず、ざーっと呼んで全体像を理解することを目標としましょう。

※もし、①なんてやってる暇ねぇ!という人(短答式試験後に会計学を始める人など)は、②からスタートしてください。

②会計学に関する必要知識のインプット(=暗記)

ざっくり会計学のことが分かったら、後はとにかく暗記していきましょう。
不動産鑑定士試験の会計学で出題される問題と同様の範囲の教科書でおすすめなのが『基本から学ぶ会計学』です。

②-1:基本から学ぶ会計学

とにかくこの本を読む→覚える→読む→覚える...と繰り返してください。
冒頭で述べたように覚えてるかどうかが鍵となる試験ですので、覚えないと話になりません。

ちなみに、以下の本でも可です。(余裕ある人や、本屋さんで比べてみてこちらの方が合うという場合)
②-1で困った時に調べる用として購入しておく、というのはありがと思います。

②-2:スタンダードテキスト財務会計論I〈第16版〉: 基本論点編
※最新版がないか確認して下さい。

③過去問を使ったアウトプット

会計学の過去問演習に使う参考書は1択ですね。

不動産鑑定士 会計学 過去問題集
※最新版がないか確認して下さい。

過去問演習のタイミングですが、②を1周したら、過去問を解き始めましょう。
ただし、注意事項があります。

【会計学の過去問の注意点】
・過去問演習だけをするのではなく、②暗記と並行して演習を進める
・何度も繰り返し解かない

まず、1点目の「過去問演習だけをするのではなく、②暗記と並行して演習を進める」についてですが、繰り返しいうように会計学は覚えているかどうかの試験です。
過去問を使ってアウトプットすることは、頭の中の整理やうろ覚えの内容の定着などに意味がありますが、新しいことを暗記できる訳ではありません。
必ず、②の暗記を中心にした学習とし、過去問はおまけ程度として捉えて取り組みましょう。

次に、2点目の「何度も繰り返し解かない」ということですが、会計学全体の範囲から一部だけを問うている過去問を繰り返しても、実際の試験の得点には繋がりません。
過去問はあくまでもアウトプットのトレーニングなので、繰り返し解く必要はなく、過去問1周できたら超上出来です。

例えば復習の際も、解説を読むのは良いのですが、「その問題を完璧にする」のではなく、「出題された範囲を完璧にする」というように、よりマクロに捉えましょう。

会計学の学習スケジュール

まず、大前提として、会計学は短期集中で一気にできる科目です。
また、最低限、他の科目を引っ張らないよう、他の受験者と同じくらいの到達度で大丈夫です。

他の科目も含めたスケジュール

会計学は短期集中かつ最低限で良いと述べました。それよりもむしろ、鑑定理論の完成度を高めたり、経済学・民法・演習の苦手克服や得意を伸ばすことに時間を割きたいところです。
そのため、会計学の学習スケジュールは他の科目の進捗や到達度に大きく左右されます。

他の科目を含めた全体的なスケジュールについては、以下の2つの記事を参考にしていただき、これらを踏まえて説明します。

会計学の学習スケジュール3パターン

会計学に費やすことができる時間・余裕がどれくらいあるかで、やるべきことやスケジュール感が決まってきます。

A.時間的に余裕がある場合

大学生であったり、仕事を辞めて勉強しているなど、不動産鑑定士試験の学習に十分な時間を避ける環境であったり、2段階合格を目指していて既に短答式試験には合格している状況、他の科目がある程度大丈夫と言える状況である方が該当します。

この場合は、上記で説明した①〜③をこなすこととなります。年明けから①②をして、短答式試験の2ヶ月まである3月くらいまでに①②がある程度できていれば良いと思います。
短答式試験後、②と③をうまくこなし、ブラッシュアップしていくイメージです。

B.学習がかつかつな場合

うまく、①と③を削って学習をする必要があります。
論文式試験に奇跡的に合格できれば良いという感じのレベルの場合、短答式試験後に対策を始める他ないかと思います。

おすすめは、短答式試験までに①をなんとなくやっておき、短答式試験後に一気に②と③をこなすというプランです。しかし、このレベルの人の場合、あくまで「奇跡的な合格」を目指すプランになります。

①のように、毎日10時間以上を1年以上も勉強をしている人達に対抗するのですから、ある程度の妥協は必要となります。
最低限だけうまくいけば良い、という心意気で頑張りましょう。
①をせずに②からスタートするというのも十分に手ですので、そこは自分の学習状況と相談しましょう。

C.とにかくやばい人(=短答式試験すら合格が怪しい人)

この記事を読むのを今すぐ辞め、短答式試験対策である鑑定理論と行政法規を進めて下さい。会計学をやる時間は1秒もありません。

短答式試験が受かったら②だけをひたすらやって下さい。

おわりに

会計学はクセのある科目です。知っている範囲が出れば周囲より圧倒的高得点を狙えますし、逆に知らないと爆死する可能性もあります。
また、知っているかどうかなので、暗記が得意なら短期間の完成が可能です。

鑑定理論、民法、経済学、演習を疎かにすることなく、(特に鑑定理論を疎かにすることなく)会計学の学習にどれくらい時間をかけるのか、どれくらいの到達度を目指すのか、よく考えて学習していただければと思います。

科目数が多い試験ですが、頑張って下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?