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『コロナ禍の下での文化芸術』 4章特別編 コロナ第5波の緊急事態の中、飯森範親指揮の東京ニューシティ管弦楽団で「春の祭典」を聴く(大阪府豊中市にて)

『コロナ禍の下での文化芸術』4章 特別編 その1

コロナ第5波の緊急事態の中、飯森範親指揮の東京ニューシティ管弦楽団で「春の祭典」を聴く(大阪府豊中市にて)


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⒈  飯森範親指揮 東京ニューシティ管弦楽団 豊中公演



飯森範親 指揮 
東京ニューシティ管弦楽団
豊中公演
(オーケストラ・キャラバン)
2021年9月16日
豊中市立文化芸術センター大ホール

曲目
R.シュトラウス:交響詩 『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
Vn. 神尾真由子

ストラヴィンスキー :『春の祭典』(1967年版)


2021年の秋の初め、台風が迫っている木曜日の夜。コロナ第5波の緊急事態宣言の最中だが、豊中市の文化芸術センターに、飯森範親指揮の東京ニューシティ管弦楽団を聴きに来た。メインの「春の祭典」をぜひ、聴きたかったのだ。
この日は、大ホールでオーケストラ、小ホールでは「エリザベス朝の音楽」があるようで、メインエントランスを入ったところの広々したロビーは、大混乱していた。


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しかも、大勢でかい声で喋ってるし、学生とおぼしき観客も密な状態で並ぶ。


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残念ながら、豊中市のホールのコロナ対策は、例えば大阪のザ・シンフォニーホールの場合とは大違いだった。

一応ロビー入り口には検温と消毒が設置され、床にはディスタンスのシールがある。


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だが、結局のところ、観客のマナーが悪いと対策も無意味になってしまうということか。それでも、イベントの開場時刻なのだから、豊中市はもっと職員を配置して、きちんとコロナ対策がとれるように観客に指示できたはずだ。それをやらないのは、主催側として無責任だと思う。


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⒉  飯森範親と東京ニューシティ管弦楽団の「春の祭典」


さて、肝心の演奏会は、素晴らしかった。
前半とメインの2曲が、両方とも最後は処刑で終わる曲なのは、偶然だろうか。19世紀末から20世紀はじめのほぼ同時代の楽曲なのに、全く異なるのが面白い。R.シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲル」は主人公のティルが処刑された後、まるで彼を慈しむような優しい終結部になっている。一方のストラヴィンスキーは、とことん残酷なフィナーレだ。

なんと、指揮者の飯森さんもマスクのままで全曲を指揮していた。最近、コロナ感染から回復したばかり、病み上がりなのにマスクしたままで「ハルサイ」を振って、大丈夫なのだろうか? 酸欠になりそうな気がする。
楽団も、管楽器以外はマスクのまま演奏しており、長丁場の曲ではしんどそうに見える。客席は入場制限をしているせいなのか、6割程度の入りで、聴いている側としては、コロナ感染リスクはさほど感じない。ただ、昨年はよくやられていた席間を一つずつ空ける指定席ではなかったため、詰め詰めの箇所とガラガラの箇所が点在。これはやはり、席間を空けるべきだろうと思う。
ところが、そう思って前半を聴いていると、曲終わりに「ブラボー!」を叫ぶ客がいて、背筋が凍った。コロナ危機のなかで、客席でのブラボーは禁止のはず。昨年来、声援を送りたい気持ちをみんな、我慢して拍手だけでやってきたのに、どういうことなのか?
休憩時間、ブラボーの件を係員に注意したら、幕間にアナウンスが入った。しかし釈然としない。まさか、東京ではすでに「ブラボー」の声援が解禁されてるのか?

飯森範親の「ハルサイ」について。フル編成での大編成曲を、実演で聴くのは本当に久しぶりだ。そのフィジカルな音楽の力に、圧倒された。
飯森範親の指揮も、まるでこれまでの鬱屈を晴らすようにパワフルな勢いだ。彼の「ハルサイ」はテンポ・ルバート、パウゼを多用するドラマティックな解釈だが、不協和音を恐れないモダンな演奏だ。基本的に、20代でモスクワ放送交響楽団を指揮して録音したCDの演奏と、解釈は違わない。
(下記に、このCD録音について若干考察する)

大阪で初めて聴いた、東京ニューシティ管弦楽団、総力を出し切る力演だ。「ハルサイ」では管楽器に微妙な箇所もあるが、若いオケの勢いがある。
ただ、残念ながら客席は招待客が多いせいなのか、ちょっとざわざわして落ち着かなかった。
オーケストラ・キャラバンという文化庁の事業で来阪したこのオーケストラ、コロナ緊急事態の中、大編成での遠征はさぞ大変だろう。いつかコロナが落ち着いたら、また改めて上京して聴きたい楽団だ。


⒊  コロナ第5波の中での大編成オーケストラ演奏会


それにしても、コロナ危機の1年半、長くクラシック音楽界も苦難が続いている。昨年の今頃は、もう2021年には大編成の管弦楽も、大規模な合唱を伴う交響曲も、そしてアリーナでのライブイベントも、普通にやれるだろうなどと思っていた。現実は、そうはいかない。

※飯森範親指揮、国立音大の演奏映像。


https://youtu.be/zYfBm9FUKSU


これは、昨年12月の段階で、アクリル板とマスク着用、席間は開けての演奏だ。昨年末頃には、まさか一年近く後に、さらにコロナ感染の事態が悪化しているとは想像しなかった。
それというのも、2020年末頃はまだコロナは飛沫感染だという話だったのだ。だが実は空気感染だとわかって、感染対策の次元が数段上がってしまった。
閉鎖された空間でいかに換気を徹底するか? 空調が必須の夏や冬場は特に、大規模な音楽演奏会やライブイベント、劇場公演は、感染防止に必要なレベルの換気が難しいだろう。
NHKBS1で放映された東京フィルのコロナドキュメンタリーでも、管楽器の飛沫検証やステージの換気検証をやっていた。だが、あれは飛沫感染が前提の実証。空気感染となると、ステージ上の換気も客席の換気もハードルが上がる。
欧米の劇場やライブイベントでは、どのように空気感染対策をしているのだろう?
最近ブロードウェイ再開が報道されたが、観客もワクチン接種かPCR陰性が必須となっていた。
日本はワクチン接種がまだ5割だしPCR検査はなかなか受けられないから、劇場公演やライブイベントは本当はまだ難しいのではないか?と考えてしまう。
これは、本来なら政府が科学的に実証しなければならないことなのだ。

それはそうと、
今回、豊中のホールで聴いた東京ニューシティ管だが、最近何かで名前を聞いたなあ、と思っていた。

SAO フィルムオーケストラコンサート2021 with 東京ニューシティ管弦楽団
sao-orchestra.net/#cd

これ、これだったのだ。
大好きなSAOの音楽、聴きに行きたかった。


※大阪府の豊中市のこのホール、筆者はずっと提言しているのだが、2階席のロビーから広々としたバルコニーが見える。ここからは、全国の大ホールの中で唯一、間近に旅客機が空港に降りる姿が見える。伊丹空港のすぐ近くだからだ。

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土居豊:作家・文芸ソムリエ。近刊 『司馬遼太郎『翔ぶが如く』読解 西郷隆盛という虚像』(関西学院大学出版会) https://www.amazon.co.jp/dp/4862832679/