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パナップのなかにもおもてなし

わたしは甘いものを食べない。
これは小さな頃からで、子供のくせに甘いお菓子は避けて「羽衣あられ」みたいなのをボリボリ食べていた。北陸人はみんな大好き(主語がでかい)羽衣あられ。

画像はブルボンさんからお借りしました。

わたしは甘いものが嫌いなわけではない。食べられないのだ。
食べると胃がシュワシュワしだして、体調がおかしくなる。
のちに大人になって胃カメラを飲んだら
「どいさんの胃は胃酸を出す能力が強いです。ピロリ菌も住めません」
と言われた。
無敵かよ。
それと甘いものが食べられないことに関係があるに違いない、とにらんでいる。

1978年に発売されたパナップはいまだスーパーに並ぶ息の長いアイスである。
甘いものを回避しながら生きてきたので、ながらくアイスにも興味がなかったわたしが、子どもが食べたがるのでアイスを買うようになった。
パナップのマルチパックを買って驚いた。
仕込まれているソースで笑顔になってるのね!
←「いまごろかよ」と思ったそこのあなた。わたし甘いもの界隈にデビューしたての新人なんです。新人なんでも新鮮で感激するんです。生暖かく見守ってください。
「笑顔なんて社会を明るくするじゃーん。グリコ天才じゃーん」とグリコの社会貢献に感動しながら、その日もパナップのフタをめくった。

え。
困惑した。

ものっすごく困っている

怖い。
このひと、困ってる。
ピエロようでもある。
得体がしれない気味の悪さがある。
情緒が不安定すぎじゃない?
誰かに相談して!
不安定さを吐き出して!

あの社会を明るくする笑顔は、どうした。
こわいこわい、言いながら食べ進んでいくと。

ツリ目が伏し目に。この間なにがあったんだ。

穏やかな微笑みに変わり、なんとも満足げな平和な表情に。
情緒がおかしくなっても
「いずれかならず笑える日が来る」
みたいなことか。
お寺の掲示板に筆の美文字で書かれる格言みたいなことなのか。

ちなみにグリコのサイトにいくと
「スマイルプラス+パナップ」や「パナップ マルチパック」は、皆様にわくわく・ドキドキお楽しみ頂こうと、たまにソースが笑顔になっています。」

え。『たまに』!
全品笑顔じゃないというところが、奥深い。
人生は凪ばかりじゃつまらんからな、笑顔じゃない日もあるしな、と的外れな気がする感慨を得て最後のひとさじをすくった。

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