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【読書日記⑤】声優 宮村優子 対談集 アスカライソジ(著者:宮村優子、構成・文:木俣 冬 /カドカワ)

エヴァンゲリオンのアスカや、名探偵コナンの遠山和葉役で有名な声優さんです。



<きっかけ>

noteのこの記事でした。


 宮村さんは、例えばエヴァンゲリオンの碇シンジ役だった緒方恵美さんや、綾波レイ役だった林原めぐみさんと比べて、私にとって謎が多い人でした。詳しく調べたわけではありませんが、極端に露出が少なく、雑誌などでもお見掛けすることはなかったように思います。Wikipediaを見ると「オーストラリアに移住」と書いてあり、おそらくそれが大きな理由であるのだろうとは思っていました。


 そんな折、上記高河ゆんさんの記事をたまたま読み、なんか面白そうだなという印象を抱いたのを覚えています。本屋でたまたま見つけたので、これも何かの縁だろうと思い、購入しました。結論、マジで面白かったです。


<構成>

  • 岩田光央

  • 高河ゆん

  • 森恒二

  • 三間雅文

  • 緒方恵美

  • 林原めぐみ

  • 宮村優子ロングインタビュー

  • 庵野秀明特別寄稿


※インタビューの間に宮村さんの過去のお話が挿入されています


<これいいな、と思った観点>

  • 雑誌の企画で、事務所の社長からは「コペンハーゲンとかの綺麗なお皿を紹介する企画」を提案されたが、興味がないので嫌だと答え、じゃあ何なら興味があるのかと聞かれたので「戦隊」と答えた。当時、女性の声優では特撮が好きという方はおらず、特撮の撮影現場にいる宮村さんは、傍からは「落ちぶれたな」と思われていた。ただ、宮村さんとしては自分のオタク魂を、自分の職域や人生で満足させることを優先してやった結果だった

  • 旦那さんと一緒にオーストラリアに行くと言い出した時は、岩田さんをはじめ周りの人たちに思いとどまるように何度も説得されたが、「いや、私はいまこれがやりたいからやるんだ!」と意思を変えなかった

  • オーストラリア時代、バセドウ病にかかってしまった。さらに辛かったのは2011年に2人目の子供が生まれた後の橋本病。甲状腺ホルモンがでなくなり、だるくて起き上がれず、ずっと寝たきりだった。息をするのも疲れるため、コナンを降板することを申し出たが、諏訪プロデューサーからは心配せず、病気を治すことに専念してほしいと言われた

  • 宮村さんは好きなものに燃えているときしか生きている実感がない。ところが、子育てでバタバタしているうちに自分の中の好きだったものが見えなくなり、探している最中。最近、声優の養成所で教えているのもその一環

  • この本を作ろうと宮村さんが思ったきっかけは、三浦健太郎先生(ベルセルクの漫画家さん。2021年、54歳の若さで亡くなられる)。50歳になる節目として本を出すとなったときに、いま会いたい人と、話したいことを存分に話そうと思った

  • 宮村さんが音響監督を手伝うようになったきっかけは、役者としてひとつのことしかできないことによって徐々に先細っていくのを感じて不安になったから。歌もやったし、JAC(ジャパンアクションクラブ)に入ったりと色々されていた

  • エヴァンゲリオンがブームになった1990年代半ば、テレビ番組は今と違ってアニメ関係者をイロモノ扱いして冷たかった。碇シンジ役の緒方恵美さん、葛城ミサト役の三石琴乃さん、綾波レイ役の林原めぐみさんがテレビ出演を断ったことで、宮村さんが攻撃を受けることになった。宮村さんとしては「自分のようなものでも、ちょっとでもできることがあるのなら」という気持ちで心を殺して出演していたが、一度ファンやオタクを馬鹿にする内容に編集されており、戦ってお蔵入りにさせたものもある。当時はアニメやアニメファンを馬鹿にして、視聴率を取ろうとする番組にあふれていた

  • 林原さんが演じた綾波レイは小声で、しゃべらず、抑揚がないキャラクター。舞台出身の宮村さんは、マイクの性能と、声を出さずにこんなに感情が届くのかと驚いた。(視聴者は抑揚のない綾波レイを見て衝撃を覚えたと思うが、宮村さんは林原さんが演じられているところを実際に見て、その後の映像で、微かな声なのに感情が乗っていることに二重の衝撃を受けていた)林原さんが綾波レイのキャラクターを確立させたことで、その後似たようなキャラが何百と生まれていった

  • 林原さんからすると、宮村さんは「こなれない」。体当たり!という感じ。喜怒哀楽のむき出しさ加減が宮村優子の真骨頂



<類書>

私は元気です 病める時も健やかなる時も腐る時もイキる時も泣いた時も病める時も。(著者:後藤邑子/文藝春秋)


声優さんという意味でも、闘病生活という意味でも。宮村さんもそうでしたが、「これをしたい」と思ってからの、腰の軽さが半端ないです。


ちなみに、この本の中で、後藤さんは「やまない雨はない」というセリフが嫌いだと書いています。すごい共感したお話なので、ご紹介させていただきます。

 「やまない雨はない」って言葉が私は嫌いです。やまない雨はあります。

 少なくとも人より多く雨に打たれ続ける人はいる。そういうことを余儀なくされる状況の人はいます。

 私が病院で長い時間を過ごし、ソープランドのお姉さんたちと交流があったせいもあるけど、ひねくれているせいもあるけど、この言葉は誰かを慰めるには足りない気がします。

 大上段にかまえて無邪気に振り下ろされるような、傲慢さが好きではありません。

 もちろん純粋な優しさからの言葉なのでしょう。今まで私にそう言ってくれた何人もの人たちは、きっと心から思いやって言ってくれたんだから、その言葉は好きじゃなくても、そう言ってくれた皆の気持ちは好きです。

 私は、雨の中でも、生きていてよかったって思える瞬間が多ければよいなと思います。

 そのうち雨に降られていることすら忘れてしまうくらい何かに熱中できたらいい。正解はわからないけど、やまない雨はないと言われるよりずっといい


 なかなかやまない雨の中でタフに明るく過ごした人を私は何人も見ました。その人たちを尊敬しました。

 いま闘病中の友人もいます。闘病の末に亡くなった友人もいます。

 彼女たちに私はちゃんと優しい言葉を言えていたかな?とよく考えます。

同著

個人的に顎が外れるくらい頷けた意見なのですが、皆さんはどうでしょうか。

<一言感想>

宮村さんは演技だけでなく、人生全部がいい意味で「こなれない」方という感想を持ちました。人生に熱量を感じる、魅力的な人でした。

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