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◎手帖P13「堺の包丁」

2020/8/12,19OA

包丁ってどうやって選んでいますか?何となくで選んでいませんか?種類も値段の幅もありすぎて、よく分からない。そこで、和包丁の本場、大阪・堺市で「和包丁づくり体験」を実施されている、「堺内刃物(さかいうちはもの) 道具屋 和田商店」に伺って、包丁の種類、手入れの仕方、包丁作りと古墳の関係、などなど教えてもらいました。

和包丁の柄付け・研ぎを体験できて、自分の名前入りの包丁を持って帰ることができる、和田商店の「和包丁づくり体験」。

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まずは堺刃物ミュージアムの見学からスタート。ここにはたくさんの包丁が展示されています。種類が多いとは思っていたのですが、思っていた以上で驚きます。用途によって、柳刃包丁、たこ引き包丁、出刃包丁、身卸包丁、薄刃包丁、鎌型薄刃包丁、角型薄刃包丁、はも切骨包丁、うなぎ裂包丁、すし切包丁、麺包丁、菓子包丁、汎用包丁、ペティナイフ・・・などなど。しかも同じ用途でも、調理方法の違い・食文化の違いによって関西型と関東型があったり、さらには京都型なんていうものも・・・!基本の形は出刃包丁なんです。

出刃包丁ができるまでの、途中の状態も展示してあります。まず鋼を叩いて包丁の形にして→磨いて切れるようにして→柄を付けて完成。
堺の特徴は分業制で、それぞれの工程を鍛冶屋、刃付け屋、柄付け屋がそれぞれ担当するんですね。分業することで、同じ作業を繰り返すので技術が上がるし、たくさん生産できる。そして次の工程を外のお店に回すため、適当な仕事をしたら信頼関係も崩れるし、お互いに責任を持ってしっかりした仕事ができる。切磋琢磨しつづけて技がどんどん磨かれるんですね。

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ミュージアムを見学した後は、包丁とぎを教えてもらいます。ツルツルになってしまった包丁に砥石を当てることで、細かいギザギザをつけ切れるようにする。これが包丁とぎ。言葉にしづらいので割愛させていただきます・・・が、教えてもらって研ぐと本当に切れ味が回復!

そして柄付けの体験もしました。まっすぐに最後まで入ると、木槌で叩いている音が重い音に変わりました。研ぎも柄付けも、どちらも手の感覚や音に耳を傾けるのが大事だなと感じました。頭じゃなくて体で出来るようになるものだとか。

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そもそも、堺で包丁作りが盛んになったのは、、、実は古墳と関係があるんです!?
ご存知の通り、堺には古墳がたくさんあります。古墳を作る時に道具が必要ですよね。その道具を作る鍛冶屋さんが全国から集まってきたんだそうですが、彼らがそのまま住みついたんですって。その後、ポルトガルからタバコとタバコを切るタバコ包丁が一緒に入ってきたのですが、堺の職人がタバコ包丁を作ってみたら、めちゃくちゃ切れる良い包丁ができて評判になったそう。さらに江戸時代には天下の台所である大阪船場で堺の包丁がよく切れるぞと評判が立ち、用途に合わせたいろんな包丁が開発され、出刃包丁などが生まれたそうです。近くに口うるさい料理人たちも多く、品質も技術もますます磨かれ、いつの間にか堺に良い包丁があると言われるようになったんですね。堺で包丁作りが盛んになったのは、遡れば、古墳があったからというわけです!

和包丁は大体、片刃です。(中には両方刃になっているものもあります)素材は、料理人が使うものはステンレスではなく鋼のもの。鋼は錆びるけれどやっぱり切れ味がいいし、手入れをすると長く使えます。切れ味が良いとやっぱり料理が楽しく、美味しくなる。なので、当たり前だけど切れ味の良い包丁を選ぶのがいい。そして、何を切るのかによって種類を決めます。ただ、最近は料理番組をみていても料理人でさえ包丁を取り替えず1本を使っているし、ご家庭で普段使いには、まずは万能な三徳包丁で良いですよ〜とのこと。あと、見ていて良くても、実際に持ってみたら、自分には重いとか大きいとかもあるので、実際に手にとってみましょう。
手入れはシンプルに、使ったら綺麗に洗ってすぐに拭くこと。洗った最後に熱湯をかけると乾きが速く、水分が残らないので、錆びにくいとのことです。濡れたまま置いておくのが、一番NGです。砥石も用意して、最低でも1週間〜10日くらいに一度は研ぎましょう。(もちろん使う頻度によって研ぐ頻度も違います。)

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この包丁作り体験の企画を始めたら、予想と違って若い人たちが興味を持って来てくれたり、海外の人が驚くほど詳しかったりで、そういう色んな人たちと包丁作りを通して交流できるのが、和田商店さんとしても楽しいそうです。これからもより多くの人に、包丁を楽しく知って、料理を楽しんでもらいたいとおっしゃっていました。

包丁作りを通して、2030年までに達成したいSDGsは。
しっかりとした仕事を続けていくこと。作る責任。(使う私たちは、ちゃんと選んで使いたいですから、使う責任。)そして信頼関係に基づく分業制によって、技術を守っていくこと。パートナーシップ。さらに視野を包丁作りだけではなく、堺の町に広げて、宿泊施設などとパートナーシップを作って、堺にもっとたくさんの人に来てもらえるようにアピールしていきたい。実は包丁以外にも2km範囲に、線香屋さんや、自転車メーカーもあるとのことで、分業制だからこそ築かれた信頼関係・パートナーシップを、より広いジャンルの人たちに広げて、ひとつになってまちづくりをしていきたいとのことでした。

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料理人の90%もが手にするという堺の包丁。最高の切れ味です。和田商店の「和包丁づくり体験」では、名前を入れた包丁を持って帰ることができます。最近では、新郎から新婦へのサプライズギフトとして、結婚式で流す為のVTRを撮影しながら新郎が体験する、というパターンも多いそうです。未来を切り開くという意味で、お祝いに喜ばれるのだとか。

土井の持ち帰った三徳包丁。素材は安来鋼(やすきはがね)の白紙2号。間違いない素材なのだそうです。嬉しい〜。感動的な切れ味で、料理上手になった気分。包丁の種類は選ぶことができます〜。

▼堺内刃物(さかいうちはもの) 道具屋 和田商店
https://www.sakaiwada.com

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土井コマキ
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