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セミナーを成功に導くのは話し手ではなく「事前準備」だよという話

ここ数年でビジネス系イベントの形が大きく変わりましたね。

元々リアルで集まり、そこに集う人と発信者双方向かつ横方向の繋がりが持てることがセミナーやイベントの良さだと言われていました。

もちろんそのニーズは変わらないと思いつつ、WEBでのセミナーが主流となったいま、リアルでの実施以上に満足度が「コンテンツの質」に依存するようになったと感じています。

では、どうすればコンテンツの質を上げることができ、オーディエンスを満足させることができるのか。今日はそんなことを考えていきたいと思います。

参加者の満足度を意識しよう

まず、セミナーというのはもともと主催者が何かを目的として開催し、テーマに反応した人達が参加者として集まることで成り立ちます。

セミナーという場には主催者と参加者の2種類の登場人物がおり、それぞれに目的を持ってセミナーという場に集まります。

主催者の目的で言えば「リードを集めたい」とか「商品を紹介したい」などがあると思います。

でも、率直に言えば参加者はそんなことどうでもいいんです。

参加者が欲しいのは「情報」や「ノウハウ・ナレッジ」だったりします。なので個別の製品の紹介はテレビで流れてくるCMくらいどうでもいい情報です。

そして、どうでもいい情報を与えられ続けるのは苦痛しかありません。人は、苦痛を感じるとその原因を排除しようと考えます。もちろんその原因を嫌います。

すると、セミナーの場で参加者の中の苦痛が大きくなると「苦痛の原因=製品・サービス・会社」となり、自社の宣伝をするつもりがディスブランディングになってしまうこともあります。

なので、まず参加者の満足度を上げることを最大限に考え、事前準備として「参加者がこの時間で何を持って帰れるのか」をデザインするところから考えることが重要です。

満足度を上げるための企画方法

では、どうすれば参加者の満足度を上げられるのか。

それを考えるには3つの段階を踏んで企画を立てていきます。

1.ターゲットの設定とニーズの確認(誰が何を欲しがっているのか)
2.ペインの特定(ターゲットはなぜそれが欲しいのか、何が課題なのか)
3.ゲインの設定(何を持って帰ってもらうのか)

この3つのいずれかが欠けても成功しません。あくまでセミナーを開催する上で最低ラインの情報と思って頂くと良いと思います。

順に見ていきますね。

1.ターゲットの設定とニーズの確認(誰の何を解決するのか)

1つ目のターゲットとニーズの確認では、「誰に」向けて情報を発信するのかが一番重要です。

ここで、2つのペルソナを作ります。
「同じ課題を抱える人物群」と「顔が見えるくらい具体的な人物像」です。

これは。抽象的なペルソナと具体的なペルソナで、抽象的なペルソナは最大公約数を取るため、具体的なペルソナは参加者に自分事化させるために必要となります。

例えば、複業マッチングプラットフォームの企業が、複業したいと考える人に複業で成功する方法を発信することを考えたとします。

そこで2つのペルソナを考えると
・抽象的なペルソナ「複業をしたいがどう始めればいいかわからない人」
・具体的なペルソナ「大企業で経験を積んだが、他の会社で働いたことが無い30代ビジネスマン。普段はマーケティング部門でマネージャーとして勤務しており、広告運用やオウンドメディアの運用などを管理している」

こんな感じで擬人化します。

抽象的なペルソナは今回の中心となるテーマです。ただし、現時点ではまだ「事象」を言語化したものです。ここは次のステップで詳しく説明します。

そして、具体的なペルソナは課題を抱える人物の詳細なイメージですね。

ここまで書きだすと、参加している人達の顔が浮かび、どんな話をすると喜んでくれるのか、どんなことを求めてるのかが何となく見えてきます。そこで重要なのが、このペルソナに合う人へきちんとヒアリングをすること。

ペルソナは、あくまで仮想人物なので想像で組み立てられています。その確からしさを確認するためには、実際の参加者像に近い人にヒアリングするのが一番です。

ここでもらった意見がセミナーの企画を作る土台になります。

2.ペインの特定(ターゲットはなぜそれが欲しいのか、何が課題なのか)

ヒアリングする際は、困っていることを聞くだけでなく、なぜそれに困っているのか。という背景を聞いてみてください。

先にも伝えましたが、困っていることはあくまで事象です。そして、困っている背景が根源的な悩みです。

複業の例で言えば、「複業を始めたいけど何をしたらいいかわからない」が事象です。本質的な悩みは「なぜ副業したいのか、しないといけないのか」の部分にあります。

もしかしたら「今後フリーランスとして活動したい。その為の基盤を先につくりたい」かもしれません。とすると、その人は「複業がしたい」のではなく、「フリーランスになったときに困らない状態を作りたい」のです。

この違いは大きく、事象を悩みだと勘違いして「複業の始め方を伝えればOKだ!」と単純な複業の始め方を教えても、フリーランスになったときに困らない状態は作れません。そうなると、この人は「自分の欲しかった情報と少し違うな」と感じます。

なぜなら、この人が本質的に欲しいのは「独立しても困らない状態とはどんな状態か」「どうすればその状態を作れるのか」という部分だからです。

ここを踏み込んで理解しておくのとそうでないのとでは、セミナーのコンテンツの深さが変わります。ヒアリングの質が、コンテンツの質を醸成する大きなポイントとなります。

3.ゲインの設定(何を持って帰ってもらうのか)

ターゲットへのヒアリングが済み、何をテーマの主軸に置くのかが決まったら、次は提供する情報を決めていきます。

ここを考える際に一番大事なのは、「伝えたことはほとんど忘れる。何を一番持って帰ってほしいのか」を決めることです。

人間は忘れる生き物であり、実際にエビングハウスの忘却曲線という記憶の保持率の研究結果もあります。

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例えば60分のセミナーをやると、話題はいくつかのネタを経由しエンディングを迎えます。その間に、最初に話したネタは20分後には半分近く忘れられています。そして終了後には6割程度は記憶から無くなっています。

つまり先にも書いた通り、伝えた情報の大半は忘れられてしまう。これを理解したうえで、これだけは記憶に残したい!というポイントをどこに置くのか。この設計が一番重要になります。

複業の例なら「人の為になることをする。そうすると自然と信用が集まって仕事が増える」ということを一番伝えたいことに設定した場合、このポイントを一番際立たせるストーリー設計をすればよい。となります。

もしくは、「まずはさっさと試してみる。その上で改善を繰り返す」が一番でもいいです。このセミナーのメインキーワードを決めましょう。

そして、登壇者全員にこのメインキーワードを周知し、ここを一番伝えたいという共通認識を作る。抜けがちだけどとても大事なポイントです

肉付けして味付けする

企画の骨ができたら、更に肉付けします。

私は、このタイミングでターゲットが欲しい情報を一度網羅的に書き並べます。その上で企画で決めた一番伝えたいポイントを中心に、どの要素が入り、どういう流れになるとメインキーワードが一番おいしくなるのかを考えます。

この時、パネルディスカッションなどで登壇者がいる場合は、相手方の一番得意なところなどを盛り込むと、上辺の情報ではなくその人ならではの深い知見や経験が入ります。これが良い味付けとなることが多いです。

相手方の一番おいしいところを引き出すためには、その人を好きになって興味を持ち、その人の発信する情報や書籍、打合せ時の発言などを拾い集め、自分の中でイメージを練っていくことで見えてきます。

この「ターゲットが欲しい情報」と「登壇者の一番おいしいところ」を掛け合わせながらストーリーラインを組み立てます。

ここでおこなう肉付けと味付けでセミナーという料理が出来上がり、参加者の満足度がある程度決まっていきます。

当日の会話を更に練りこむ

あとはセミナーのタイトルや内容をわかりやすく言語化する作業です。ここまでで企画ができたら、セミナー開催に向けて動き出せると思います。

動き出したら、実際の集客時にアンケートを取りましょう。このアンケートで「今回興味をもったポイント」「現在の課題」「なぜ課題と感じているか」などを参加者にも問いかけましょう。

ここで集まった情報が、当日のストーリーの盛り付けに必要になります。

美味しい料理ができても、盛り付けが悪いとせっかくの料理も台無しになります。参加者に美味しい料理を届けるためにも、より参加者へ届ける形を整えなければなりません。

作ったストーリーをより参加者へ届けるために、アンケートで集まった内容に寄り添う形でストーリーや内容を再度見直します。参加者はどんなことを気にしているのか。何に悩んでいるのか。そこに応えるためにはどうすればいいのか。

ここを最後の最後まで詰めていくことで、参加者に寄り添ったセミナーとなります。ここもメインキーワードと一緒に登壇者全員で共有しておきましょう。

私も、開始5分前まで、何ならセミナー中もそこを考えながら話します。

実施後のアンケートの重要性

いま紹介したことをしっかりやれば、それなりに満足してもらう場が作れると思います。

でも、遠足は家に帰るまでが遠足です。重要なのは参加者がどう思ったかが一番大事。

なので、開催後はちゃんとアンケートを取りましょう。できればセミナー中にその場で回答してもらいましょう。それが難しいなら、プレゼントなどを用意するなりで回答率を極力高める努力をしましょう。

プレゼントの例は色々ありますが、グラレコや当日投影した資料などが手間も少なく私がよく使うコンテンツです。

このアンケートで集まった「参加者の声」が、自分のやったことへのフィードバックであり、次回の改善ポイントを教えてくれる一番の教科書です。

私がおこなうイベントの満足度は基本的に95%を切ることはありませんが、100%でないこともあります。この5%がどういう部分に不満を持ったのか、大満足ではなく満足になった理由は何か。こういう情報は参加者の中にしかありません。

この情報をいかに集められるかが、次へつながる大事なピースなのです。

自分が楽しむのが一番

私は自分が登壇するもの、自分は出ないが裏方で動くもの。色んなイベントに関わります。

色んな企画に関わってきて一番感じるのは、「いいイベントになるときは自分が楽しんでいるとき」です。

自分が楽しめないものを人が楽しめるわけない。そんなところでしょうか。

企画段階からワクワクできたり、話していく中でどんどん面白くなっていくものは、やはり参加者の満足度も高くなりやすいなぁと感じます。

ビジネス系のイベントは堅くなったり企業の目的に寄りすぎてしまうことも多いと思いますが、自分が楽しめる・参加者が楽しめる、そういう状態のあとに目的達成がついてくるんだと思います。

ぜひ、セミナーを企画する際は楽しむことを忘れないで取り組んでみて欲しいなと思います。

少しでも参考になりましたら幸いです。


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