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ひとつの分岐点


 わたくし、イシス編集学校の卒業生であります。
 編集学校? 

 ふだんは意識していない、情報のインプットとアウトプットのあいだ。いわば、ブラックボックスで動いているのが、「編集」です。このブラックボックスで起こっている「編集」を取り出し、「思考の型」としてさまざまな場面や局面に活かすようにしてみようというのが、「編集術」です(ホームページより抜粋)。



 入門すると、上級にかけて、「守・破・離」と進む。
 弓道に夢中になっていた時期がある。武道家のはしくれのきれはしのしっぽくらいの、わたしのハートは、ここでクラッときた。
 「1・2・3」じゃなく。
 「松・竹・梅」でもなく。
 「守」を卒門し、「破」を突破した。要した時間は、1年弱。

 一つのクラスが7人くらい。一つずつ、「〇〇教室」と名前がついている。「ひまわり組」とかと、違いますからね。オリジナリティーあふれる教室名。
 指南してくれる先生は「師範代」。
 その上に「師範」。
 ほか、「学匠」「番匠」などなど。
 背筋がぴーんといたしますね。

 お稽古がはじまる。「お題」が出され、メールや専用サイトで回答していく。1回でOKが出ることは、まずない。指南されて、ほほー、とか、むむう、とか唸りながら、再回答、菜々解凍、再々祭、、、などする。ユニークなのは、この過程が、教室内でオープンにされているところ。「穂音さん、ここ漢字間違ってますね」から、「特徴をもう少し展開してください。それは、まだ概観でしかありません。穂音さんならでは、のアイデアについては披露されていない印象です」のごとく、苦し紛れに核心まで辿りつかずに提出したら、あっという間に見破られてバッサリ斬られ、息も絶え絶えになるわたし、まで、ぜーんぶクラスメイトと共有するのだ。

 そんなことを繰り返していると、面白いことが起きる。
 オフ会のごとく、実際顔を合わせてお稽古しましょうか、と、いう日。それまで、お題と指南のやりとりは、文字のみだ。画像の類は、一切、ない。名前は知っている。しかし、年齢や職業は、明かしている人もいれば、そうでない人もいる。
 にもかかわらず、ご対面すると、一目で、誰なのか、わかる。
 お互い、そうだった。
 「Aさんて、絶対若くて、いまふうの、サラサラ毛の、男子。アゴはシュッとしてる」というところまで当てて、わたしはご満悦だった。
 書くことには、熱量が伴う。読んだ人に伝わる。理科で習った「エネルギー保存の法則」みたいに。それ以上に、気とか、まとっているオーラとか、ブラックマター(見えないし触れないし感じられないけど、宇宙のなりたち上、存在するとされているもの)とかまでが、流れていく。ちょっとこわくて、でも、ちょっとだけ、たのしいが上回る。

 「破」の時分に、物語を一つ書く。
 物語には、原型がある。水戸黄門、というと「ああー」というものがあるでしょう。あれが型。映画を見て、型を分析して、それを元に、自分の物語をこしらえる。ちなみに、わたしが選んだのは「クレヨンしんちゃん:ちょー嵐を呼ぶ金矛の勇者」。PTAが墨を塗り、燃やしたという、ご禁制のクレヨンしんちゃん、初観賞。
 しんちゃん、めっちゃいいやつやん。
 それが、こうなる。



 お題はとにかくユニークで、今まで使ったことのないような思考回路を開けないと対応できないし、量はあるし、スピードも求められる。それはそれは、怒涛のような1年だった。でも、小学校で、中学校で、こういう教育があったなら、と痛切に思った。

 師範代は「守破」ののちに、「花伝所」を卒業した人々である。生徒の回答から、足るも足りないも、炙り出すのがうまい。また、この人はこの程度まで炙る、という目利きもすごい。指南してくる切り口が、いろんなかたちをしていて、飽きない。たいてい、師範代は、本業があり、その傍で編集学校に携わっておいでである。それもまた、指南の彩りとなっているのだろう。師範代と、時に師範と、たまに学匠そのほかの人々と、そしてクラスメートと、くんずほぐれつした日々は、わたしの中で爆発して、小宇宙として残った。

 noteで小説を読んでもらいたくなって、その背景にあったイシス編集学校のことも、ちょっと紹介してみようと思った。だったのだが、あの日々のことが思い出されるにつれ、師範代と師範とクラスメイトの気配がそこかしこに、止まらなくなってしまった。ぐすぐす、ティッシュ頂戴。みなさんどうされていますか、お元気ですか。素敵な時間をありがとうございます。過去形ではないのよ、いままだ、わたしの小宇宙は成長しているので。当時はわからなかったけれど、間違いなく、大きな分岐点を通過したのだ。

 こうしてnoteに出逢ったのも、いつか、分岐点だとわかる日が来るかな。きっとね。
 その日まで、ありがとうはおあずけ?

 でもね、やっぱり。
 ありがとう。



 ちなみに、イシス編集学校の校長先生は、松岡正剛氏。
 色んなお仕事をなさっていますが、これもその一つです。
 自分では書棚の近くにも行かないような本がたくさんあり、吸い込まれる、ブラックホールに。



お気持ちありがとうございます。お犬に無添加のオヤツを買ってやります。