岡部閏『グッド・ナイト・ワールド』

少しだけあらすじ

主人公の家庭は崩壊している。完璧主義で、過ちも犯している父親。役割を放棄している母親。ひきこもってゲームをする長男…

そんな崩壊した一家だが、それぞれの癒しはオンラインゲーム「プラネット」だった。彼らはゲームの中では互いの素性に気づかぬままに身を寄せ合い、理想の家族を演じ合っている。

そんな中、ゲームのラスボスである「黒い鳥」が現実世界にも影響をおよぼしはじめ、主人公の現実世界での家族関係も変化していく…

世界鬼

岡部閏と言えば『世界鬼』である。20歳ごろから新都社に投稿していた作品が、裏サンデーで商業リメイクされたものだ。

世界鬼は自分のなかでは”惜しい”作品だった。デスゲームに巻き込まれる人物に薬物中毒者やセックス中毒者がいるのは面白い。こういったキャラクターの配置は彼独特のものだろう。そして何より、「全部、私がやる」の回は身震いするほどの神回だった。

だが、後半は自分からすると失速で、人間ドラマとしては突き放されすぎて好きになれなかった記憶がある。

本作の手ごたえは

そんな世界鬼の記憶があったので、今回は「全話無料だし、まあ完成度の問題があるにせよ、楽しめる部分はあるだろう」ぐらいの期待値で読み進めた。終わってみると、彼の良さはそのままに、物語としての完成度がグッと上がっていて、これはかなりの良作であると感じた。

元からの魅力であったトガった設定、少々の狂気を含んだギャグ、意表を突く展開は健在だったし、加えて人間ドラマが本当にしっかりしてきた。著者のインタビューをみると「妻と散歩するのが好き」という言葉があり、結婚したようだ。そんなことも、「家族を描く」ということに変化を与えたのかもしれない。

1日限定無料が終わったとはいえ、マンガワンで無料で読めるのでオススメである。


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