オーディブル記録⑦『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』

著者は尾原和啓。同著者の『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』を読んでいたこともあり、オーディブルのラインナップで見つけて聞いてみた。

「今どきの若者はすぐに会社をやめてしまう。無気力で困ったものだ」

そう思えるかもしれないが、そこには時代背景が関わっている。昔は物が無かった。仕事に励むことは、モノが充実していくこと、日本が発展していくこと、自分の地位が上がっていくことに直結していた。だけど今の若者はモノがあふれているところから始まっている。だから飢えていない「渇けない世代」なのだという。

では、渇けない世代は無力な、絶望の世代なのだろうか?

今の「渇けない」若者は、だからこそ単純な成長・拡大以外の意味を求めている。働くことのなかに、他の意味を求めずにはいられない。自分の趣味や嗜好、個人的な価値観を世に投げかけるような、あるいは意義を心から確信できるような仕事を求めているのだ。

一方、時代背景はどうなるか。これから先はAIの影響もあって、先読みできない不安定な”VUCA”の時代がやってくる。そこで必要なのは「誰かに決められたやるべきこと」を熱心にやるような人材ではない。それはAIに代替できる。AIにできないことはむしろ、合理性を超えた個人的な嗜好や価値観を持つことなのだ。そう、渇けない世代というのは、見方によっては時代にマッチしているかもしれないのだ。

こんな内容がメイン。VUCAの時代だからAIに代替できないのは~というのは、最近ではもううんざりするぐらい聞いている内容である。だが注意したいのは、本書は2017年のものだということだ。この論旨をかなり早めに言ってた人、ということになるのかもしれない。

もう一つ面白かったのは、チーム作りのハウツーを紹介する部分だ。強みを活かす仕事という文脈からストレングスファインダーを活かした「自分の取説」などのチーム作りのハウツーが語られる。最近になって、ポジティブ心理学やら「強み」やらが自分のアンテナに引っ掛かってきたが、やっぱりこの内容を2017年に持ってきているわけだ。尾原氏の時代の動向をキャッチする早さには感心させられる。

なお、そういった「クリエイティブな個人になって生き延びよう!」という路線で輝く人はたくさんいるだろうが、多く見積もっても労働者の10%ぐらいにとどまったりしない?という疑問はやはり付きまとう。

こんな感じの本だったが、7年前の本だし、同著者のもっと新しい本を先に読んでいたので新しさはあまり感じなかったというのもある。今ではそこそこ説得力を持っている論調を、早めに発信していた本として理解しておくのがいいかもしれない。

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