オーディブル記録14『嫌いなら呼ぶなよ』
自己啓発本によりすぎていたので小説。綿矢りさに初挑戦。
4本の短編が収録されており、楽しかった。
眼帯のミニーマウス
フリフリのファッションにこだわり、整形も繰り返す女性が主人公。現代では整形もかなり身近になっているらしく、主人公の思考回路にはむしろサバサバしたものを感じる。むしろ彼女に遠慮なく好奇の目線を浴びせる同僚たちのほうがいやらしい存在に見えてくる。オチも爽快。
神田夕
ブレイクしきれない中堅?のYouTuberにハマり、応援のつもりで粘着する女性の話。こういう人、本当にいそう。
嫌いなら呼ぶなよ
不倫常習犯の、サイコパス気味の思考回路を持つ男性。彼が多人数に詰め寄られ、表面的に申し訳なさを演じつつも、切り抜けようとする話。
老は害で若も輩
綿矢という作家とライターが文章表現でもめ事を起こし、編集者にCCをつけながら殺伐としたメールをやり取りしている様子。もちろん綿矢は著者本人である。苦笑しながら聴いた。
自分も口喧嘩メールにCCで巻き込まれ続けたことあったなぁ…
全体としての感想
あまり小説を読まない自分だが、ごくたまに有名作家を試している。ここ数年でチャレンジした女性作家だと村田沙耶香、川上未映子、綿矢りさになる。いずれも、現代的な若者世代の生々しい思考回路を、一人称目線で描いてみせている。
YouTuberに粘着するひと、自らの容姿に執着するひと、浮気するひと。一般に何を考えているのかわからない人々の思考回路がリアルに描かれるところがやっぱり面白い。(もちろん、一般化はできないのだが)
また、今作はコロナ禍前半に書かれたらしく、マスクや感染症予防に関するセリフや描写がかなり多かった。それはたった2,3年前の肌感覚なのだが、妙に懐かしく感じられる。
また、小説にせよマンガにせよ、登場人物が多すぎると負荷を強く感じてしまう自分のような人間からしたら、短編というのはとても聴きやすい。評価の高い短編集を漁ってみるのも、オーディブルのいい使い方なのかもしれない。