『王様達のヴァイキング』が最高に面白かったのでほめちぎる

「本当に面白いマンガを読んだ」という余韻とともに書きなぐる。例によって、ネタバレは自重しない。

あらすじ

主人公の是枝は天才的なハッカー。彼はADHD気味というか、サヴァン症候群というか、PCの世界にしか自分の居場所を見いだせない青年だった。

そんな彼がエンジェル投資家の坂井に見出され、自分の力を社会の中で活かす方法を一緒に探り始める。やがて彼はサイバー攻撃を防ぐ(というより仕掛ける側に攻撃することで事態を収束させる)ホワイトハッカーとして覚醒し、居場所を獲得していく。

そして、是枝の関わる仕事はサイバー戦争など大規模なものになっていき、物語はクライマックスへと突き進んでいく…

テーマが良すぎる

何しろホワイトハッカーとエンジェル投資家である。自分にはすごく新しい切り口のマンガだった。

「サイバー攻撃」という語は聞いたことがある。何か深刻なものだと理解している。でも具体的なイメージはロクにありません…という自分にはとても興味深かったのである。

ハッカーvsホワイトハッカーの戦いということで、本当は見せ方が難しかったはずだ。敵も味方もPCの前でカタカタやっている絵と、長文の解説だらけになってもおかしくない。それでも、説明のレベルや演出が抜群で、山場ごとの盛り上がりも見事だった。

IT弱者の自分は「とにかくなんか高度なことをしているのだ!」と読まざるを得ないところもあったが、それで5点ぐらい減点したとしても、120点ぐらいのポイントが大量のあるので問題ないだろう。

キャラクターが良すぎる

主人公、是枝君の成長物語はやはり目が離せない。最初は本当に、パソコンが無ければ何もできないという感じなのだが、一点突破の自分の特技で居場所を、自尊心を、プライドを獲得していく。終盤の彼のカッコよさたるや…

エンジェル投資家の坂井も魅力的だ。単にスタートアップを上手に支援して稼ぐというだけの人間ではない。むしろ何か面白いことを実現できないか、どうにかして世界をよりよい場所にできないかを本気で探っている人間だ。

坂井はまず、是枝の才能を見いだし、引き出していく。だがそれだけでなく、是枝と共に大望を遂げるため、坂井にしかできない役割を果たし続ける。坂井は是枝を利用しているのでも、高みから育てているのでもない。本当に一蓮托生のバディになっていくのだ。

そして何より、是枝のライバルである「笑い猫」と「ヴァルキュリア」である。この二人は単なる悪役のハッカーという役割にとどまらない、むしろ、ある意味では是枝の最大の理解者なのである。

展開が良すぎる(直球ネタバレあり)

全体的に、ストーリーにしっかりとした起伏があるのだが、何より熱かったのは、笑い猫とヴァルキュリアが主人公陣営に巻き込まれていくところだ。是枝個人での戦いで限界にぶち当たるたび、この2名が躍動する。

特に、ヴァルキュリアが是枝に
「おちついて説明して、私だけはあなたの考えを理解できるのだから」
的なことをいうシーンが良すぎて気が狂いそうだった。



というわけで、本当に文句なしに面白いのでお勧めです。


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