2023年のマンガ読み①
マンガを色々読んでいると「単品のnote記事にするほどではないけど、少し語りたいことがある」という感想が蓄積していく。せっかくなので、列挙型のメモ記事を書いておこう。
2023年に完結まで、あるいは最新話まで読んだ作品が対象となっている。
沈黙の艦隊
政治と国際平和をテーマにした壮大な作品。海江田の一人称視点での思考が出てこないため、カリスマの行動をヒヤヒヤしながら追っていくような感じ。また、かわぐちのアメリカ観にはニヤニヤしてしまう。
海戦は脳内でうまくイメージできないためうまく楽しめなかった部分もあるが、このテーマで面白いと思わせるのだからすごい。
深町は初期の扱いからもっと重要な動きをするのかと思ったら、終盤までかなり出番は限られていた。調べてみたら、作者の予定としても深町が主人公のつもりだったのだが、海江田が育ちすぎて作品をジャックしてしまったようだ。
ラストは、海江田の妻の家に手紙がとどき、「海江田」の表札がつけなおされる。つまり、手紙届くまでは妻は海江田の姓を隠す必要があったが、届いた手紙によって隠す必要がなくなったことを示している。
いじめるヤバイ奴
いじめを題材とした学園ナンセンスギャグ。会話のなかにさりげなく織り込まれる謎の前提だったり、狂ったバトル描写だったりで笑いを誘う。
キャラクターが真顔で会話するなかで織り交ぜられる狂気というのは笑えるもので、特に各話でコメントをつけられるアプリで見るのに適していたかもしれない。終盤は勢いが落ちた気もするが、なんとかまとめきったという印象だった。序盤は特に面白かった。
へうげもの
織田信長から徳川家康までの時代を「数寄」という新しい観点から表現した名作。序盤は古田がわび数寄に傾倒しているとか、盗み癖があるとかを面白がる程度なのだが、乙の境地に至っていくのが面白い。
織田信長は派手好きでゴテゴテとした美を好んでいた(華の美)。秀吉も箔がつくような美を好んでいた。
一方、そのときの茶道筆頭、利休は無駄を排した「詫びの美」を牽引していた。古田は利休に評価されようと試行錯誤し、恥をかきながらの研鑽の末に「楽」「一笑」などに自分の本質があることを悟っていく。
徳川家康はもはや数寄などいらぬという立場をとる。
そんな一連の流れを通じて、人が生きるにおいて文化とはいかに大事なものなのかを突きつけてくれる。
また、マンガ表現としても斬新で、身長の高かったキャラは3mぐらいに書いていたり、斬新なカメラアングルでド迫力の表現をしたり、表情の幅が広かったり。さらに重要人物の最期の回はどれも胸に響く演出がされていた。
ぶっとんでいたのは、利休だったか秀吉だったかの最期の回、「住み慣れた 我が家に 花の香りを添えて」と新日本ハウスのCMソングの歌詞が書かれる離れ業。そんなのありかよ。
逆境ナイン
スポコンのパロディのような漫画。グレンラガンのテンションってこのあたりからきているのかなぁと思うぐらい。
画力も画面の構成力もすごいのに、やっていることが熱血で無理を通して道理を引っ込めていく感じで、メチャクチャに面白かった。
しかもたまに本当にいいこというし。Twitterでたまに島本和彦の吠えよペンが流れてくるけど、彼の他作品を見たくなった。
化物語
ひたぎクラブからつばさキャットまでのアニメ第一シーズンの内容に加え、傷物語を間にいれてコミカライズしている。最後のつばさキャットにはつばさタイガーなども織り込まれ、オリジナル展開がふんだんに入っていた。
傷物語に入ったあたりから筆がノッた状態に入っていて、大半は既知のストーリーだったにも関わらず惹きこまれ、グイグイ読んでいった。
大暮維人は明らかに羽川翼を推しており、戦場ヶ原よりも相当に内面が描写されていた。そういった別の作家性が入り込み、しかも独善的にならなかったことで、アニメや原作を知っている人が戸惑うことなく、コミカライズを心から楽しめたのではないだろうか。名作といっていいだろう。
虚構推理(18巻まで)
作品としての特徴はいくつかあって、主人公が怪異の世界を知恵で統べる存在であること、不死者の彼氏がいる事、何より推理の体裁で恣意的に都合のいい結論に着地させようとすることである。
自分はとても面白く読んだが、「虚構に向けて推理で合理的にたどりつく」という作品の核となる部分は自分にはあまり重要でなく、とにかく岩永のキャラクターが良すぎることに浸った感じだった。
はじめの一歩(110巻まで)
ボクシングマンガの金字塔。44巻ぐらいまでは文句なしのA評価。だが以降、鴨川ジムはどんどん無策になっていくし、ストーリーもダレていく。
110巻まで無料開放の機会に読んだが、80巻以降は酷い。対戦相手の研究が浅すぎるし、一歩は根性論でしか動いていない。
鷹村のモチベーションの根源は鴨川会長への恩義とか忠誠心なんだろうけど、無策に一歩にダメージを蓄積させていく鴨川会長に自分はかなり嫌悪感を抱いている。