空間と作品展、展示室ごと味わう贅沢な時間。
都内でお気に入りの美術館を挙げるなら、
わたしはここをそのひとつに紹介したい。
東京駅の八重洲口から10分も歩けば着くアーティゾン美術館。
今回は「空間と作品」という所蔵作品の展示が行われていた。
今美術館に展示され誰もが眺めることのできるアート。
これらはプライベートな部屋を飾るために制作されたり、
色々な人の手を渡ったりとわたしたちが気軽にみられるものではなかった。
ではそのアートたちは本来どのような姿で飾られていたのだろうか?
誰と関係を持って存在していたのだろうか?
そんな視点から紐解いていくとても面白い展示だった。
建物の6階に上がり、5階・4階と降りて展示室を回っていく。
エレベーターで上まで登り展示室に入るとまず現れたのは仏像が2体中央にすっと佇んでいる空間。
6階はスペースを贅沢に使い、その空間ごとアートを楽しもうと試みる展示だった。
祈りの対象として作られた仏像も今や美術品としてそれ以外の意味を持つ。
けれどこうしてぽっかりと静かに集中できる場所にいると、仏像からは信仰の対象であるというオーラが出てきているようだった。
次は真っ赤な部屋だった。
大きなダイニングテーブルを囲む4枚のピサロの四季。
ある銀行家の依頼で制作された作品たちは、その邸宅でどのように壁を彩っていたのか想像する展示。
さらに進みピカソの絵を前に並ぶ椅子を通り、
奥まった部屋に行くと応挙の襖の間が待っていた。
保護ガラスも取り払われたありのままの襖の姿を、
実際に畳の上に座って鑑賞ができるというもの。
ちょうど人もいなくて独り占めできた。
深く息を吸いながらそっと目の前に正座すると静謐な雰囲気に包まれた。
左手には波にゆらりと浮かぶ1匹の鴨。
右手には今まさに羽ばたいた瞬間の2匹の鴨。
色褪せた波は柔らかく下で揺れ動き、
ところどころに散りばめられた金箔が華やかさを忘れさせぬようしがみついている。
200年以上も前に描かれたものがわたしの目の前にある。
黄ばんで、薄れて、いろんな人の目の痕跡が張り付いた姿で。
なんだか不思議な感じがした。
出来上がった当初は、きっと真っ白な襖にきらびやかな金が映えていただろう。
その次は、家具や小物たちと一緒に作品が飾られ、
部屋の一角を再現したインスタレーションのような展示だった。
こちらも実際に飾られていたらどんな感じなのかな、と想像しやすく見ていてわくわくした。
6階の展示に絞って感想をまとめてみたが、
5階・4階も所有者に焦点を当ててみたり、額に焦点を当ててみたりと、
普段と少し違う鑑賞方法で楽しむことができた。
そして所蔵品の見せ方が上手いなと思った。
鑑賞の方法は人それぞれ。
わたしにもわたしなりの見方がある。
でもこうやって自分とは違う視点を教えてもらえた今回の鑑賞時間はとても有意義なものになった。
ひとり美術館巡り恒例、鑑賞後のカフェは日本橋高島屋の黒沢文庫さんに。
割といつも混んでるイメージだったがタイミングよくすぐ座れた。
お昼時だったのでガレットのセットを注文。
予想以上に大きくて食べるのが結構大変だった。
欲張って一緒に注文したミニデザートはショートケーキ。
どちらも美味しく、店内も居心地よかったけれど、
かなり満腹になって帰りました。