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死にたくなるその日まで

「あなたの人生なのだから、好きなように歩みなさい」

「生きて、あなたの大切な人たちのためにも」

どちらもよく聞くような言葉だが、よく考えたら矛盾している。

自分の人生なのだから、生きるも死ぬも自分の勝手ではないか。

死にたくなるほど追い込まれた時にも、他人のために生きなければならないのか。だとすれば、そんなに酷なことはない。

でも、なるべく周りを悲しませてはいけない。そのことも十分理解できる。

難しい。本当に難しい。


先日、加藤シゲアキさんの小説『ピンクとグレー』を読んだ。

芸能人として生きる人間の苦しみを描いた作品だった。普通の人間としては生きられない、常に周りの評価を正面から受け止めながら生きる芸能人の苦しみ。

一般人の私には想像もつかない世界だ。簡単に「憧れる」なんて口に出せない。色々なものが目に入ってしまう今の世の中ならなおさら。

せめて世の中がプラスの言葉であふれていればいいのに、人は自分の抱える不安や不満を武器に代えて他人に突き刺してしまう。そうでもしないと、みじめな自分を支えきれないのだ。

共感はできないが、理解はできる。みんな必死に生きているんだ。


「あれ?何のために生きているんだっけ?」

長い人類の歴史の中でいまだに解決できていないこの疑問。壁にぶつかるたびにそれっぽい理由で乗り越えてきてしまったけど、生きることが、困難に立ち向かうことが正しいことなのかと言われれば、正直わからない。

だから、人生に疲れてこの世を去っていく人がいても、それを止める理由はない。

ただ、自分にとって大切な人が生きている限りは、つらい思いをさせたくない。たくさん愛情を注いで、相手にとっても自分が大切な存在になれるように生きたい。それが、自分のためにも、相手のためにもなる。

そうして紡いでいく一瞬一瞬が、幸せを生み、生きる意味となってくれるのならば、死にたくなるその日まで、私は大切な人を大切に想い続けたい。

人生とは、そんな僅かな希望を信じて耐え続けるものなのだろう。その結果が”死”だとしても、それはその人の選択であり、唯一私たちにできることは、それを静かに見守ることだ。きっとその先に自由があることを願って。


一日だけでも、ときめきたいの。
生まれてはじめて 自由だから。


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