映画レビュー「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」

物凄い情報量のおバカ炸裂マトリックス風家族物語
★4

予告編を一度だけ見て、なんか凄く面白そう!と感じたので、楽しむためにほぼ全ての情報をシャットアウトした状態で鑑賞。アカデミー賞関連の話もよく知らずに。

なのでSF作品だとさえ知らずに見始めたので
ストーリーについていけるようになるまで
少し時間が掛かりました。
 
最初から映像もセリフも怒涛のように押し寄せるので
まずそれを受け止めるだけで精一杯になります。
 
途中で、ああそうかSFなんだという事と
どういう事が起きているかが理解できてからは
俄然面白くなりました。
 
要するに
ミシェル・ヨー演じる主人公エヴリンが
マルチバース(平行宇宙)を行き来して
ステファニー・スー演じる長女ジェイが企てる悪事を
防ぐべく大活躍するというお話です。
 
でもそのマルチバースを行き来するための
バースジャンプのキーが「変な行動を取る」事なので、
もうシッチャカメッチャカになります(笑)。
 

細かい設定やストーリー展開については
それを文章にしても意味がないような作品なので割愛します。
是非ご自分の目でお確かめください。
 
それ以外の感想を少し。

 

尺は2時間20分あり、かなり長いです。
実際に観ていて最後の方は長いしクドイなぁと
感じなくもなかったです。

それでもダレる事は全くなかったし
退屈は一切しませんでしたね。

とにかく映画から溢れてくる情報量がハンパじゃないです。

マルチバースという設定なので
いろいろな世界線を描く必要があるのですが、
それがまた凄いんですよね。
いったい映画何本分の映像を撮影しているんだろうと思います。

映画の途中で、主人公エヴリンが驚く表情を浮かべた時に
あらゆるマルチバースが一気に交錯するように描かれるシーンがあるのですが、
エヴリンのメイクも含めて物凄い種類の設定映像がほんの数秒の間に詰め込まれています。
ここだけでどれぐらいの手間が掛かっているのか!
ひとコマずつ送って何種類の映像があるのかを確かめたいぐらいです。

調べた訳ではありませんが
過去の映画作品の中で「カット数」の多さが圧倒的ナンバーワンな作品だったりしませんでしょうか?

 

そんな怒涛の情報量の洪水の中で
物語の芯は実は家族愛の物語なんですよね。

にしても
あれだけの展開を経なければ
親子や家族の絆って元にもどらないものなんでしょうか。
あまりにコストパフォーマンスが悪過ぎると思います(笑)

 
あとは俳優さんたちみんなよかったですね。
 
夫ウェイモンドを演じるキー・ホイ・クァンは
「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」に出ていたあの男の子なんですね!
ビックリしました。
俳優業は長らくされていなかったようですが
復帰して即素晴らしい当たり役。
彼の柔和な雰囲気こそはこの役に不可欠だったと思います。いや人生って本当に面白いですよね。

 

作品自体は物凄いパワーを持っていますし
こんなにメチャクチャでカオスな映画なのに
ちゃんと面白くて
途中で回収不能みたいな事にならないのは
監督の力量でしょう。
 
よくこんな作品を作りましたよ。
ある意味脱帽です。

人生にはいろんな可能性があって
今がうまく行ってないと感じる人は
自分が選ばなかった人生の方がよかったんじゃないかと考えがち。

でもあらゆる可能性があるともいえる反面
結局どの選択をしたとしても
その中のどれかひとつの中で生きていくしかないという事実。
そして当然どの選択の中でも光もあれば闇もあります。

それに気づいたエヴリンが最後には
元の自分の人生を大切に生きようとする選択をするんですね。

インターネット時代になり
ネットの中に無限の可能性が広がっているような
幻想にとらわれている我々への
強烈なメッセージであるという風に私は捉えました。

情報過多の時代で選び取るべき大切な事とは?
という事ですね。

 
 
下品なギャグ要素も満載なので
そういうのが苦手な方には合わない場合もあると思いますし、
マトリックスシリーズやクリストファー・ノーラン監督の一連の作品群のように「待てよ、今この人の状態はこうなっているんだよね?じゃあこの場所はこういう事?」みたいにひとつずつ状況を正確に把握しようとすると
頭の中が摩擦熱で相当ヒートアップしてしまうような難解な構造の作品でもありますが、
私は大いに楽しみました。

物凄く破茶滅茶で、ホントにバカバカしくて、
でも愛らしくて、ちゃんと芯があって、
あまりの情報量に圧倒されっ放しになる
「ストロング・キッチュ」な作品でした。

 
 
もう一度いいます。
よくこんな映画作りましたね!(笑)


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