
経験0だが楽しくカスタマーサクセスしようと取り組んだ話
こんにちは、株式会社primeNumber で trocco というサービスのエンジニア兼SRE兼カスタマーサクセスを担当しております百々と申します!
本記事は CS HACK Advent Calendar 2020 の12月18日の記事となります。
troccoについて
前提知識となるので、troccoについて簡単に説明をさせてください。
troccoは企業の様々なデータの活用を支援するデータ統合自動化サービスです。主要な機能としては以下の3点があります。
① RDBやストレージサービス、DWHはもちろん広告データ(Google広告、Line広告)やSFAサービスやMAサービスなど様々なデータソースに対するETL処理をGUI上で設定できる。
②DWH管理機能を用いて分析テーブルの構築をGUI上で設定できる。
③ETLやDWH分析に関するデータパイプラインをGUIで設定できる。
CSチームの立ち上げとイライラ
troccoチームでは今年の1月からカスタマーサクセスチームを立ち上げることとなり、経験0ではありましたが私はCSチーム立ち上げを担当することになりました。
troccoの定着率をあげよう、や、商談におけるトライアルフェーズで技術的なサポートを厚めにして成約率をあげよう、など色々なお題を受けて取り組むわけですが正直最初はあまり楽しくありませんでした。
何故かというと「商談の状況」であったり「troccoの利用状況」のようなカスタマーサクセスの業務を進めるにあたって必要となってきそうな情報が散らばっていたためデータを集めるだけで疲弊してしまうような状況だったためです。
SRE的な観点でいうとtoilのような仕事ばかりで思わずイライラしちゃっておりました。toilとは以下のような仕事のことを指します。
1. 手作業(Manual)
2. 繰り返し作業(Repetitive)
3. 自動化可能(Automatable)
4. 戦術的(Tactical)
・割り込みで作業が発生する
・On-call対応
5. 永続的な価値なし(No enduring value)
6. サービスの成長に比例して増加する (O(n) with service growth)
クライアントと向け合う事が主眼となるので一定はしょうがないことはわかってはおりますが、それにしてもこんなもの立ち上げた瞬間に地獄じゃないか、いい加減にしてほしい。と思った私は以下の2点について自動化できるところは自動化し、仕組み化できるところは仕組み化することでtoilっぽくなっている業務について改善していくことを決意しました。
①商談の状況がよくわからない
②サービスの活用状況がよくわからない
①の「商談の状況がよくわからない」については現状の業務フローとあるべき姿みたいなところを徹底的に見直しSalesforceに適用していくことで対応しました(こちらについては別の機会で書かせていただこうと思います。)
②の「サービスの活用状況がよくわからない」については何かクライアントの活用度合いを測るための指標のようなものを設けて、そこで管理していけばいいんじゃないかと思うようになりました。そこで出会ったのが「THE MODEL」にかかれていたカスタマーヘルスでした。
カスタマーヘルスの導入
カスタマーヘルスの説明については以下のとおりです。
・カスタマーヘルスとは
「ヘルススコア」をもとに顧客のどのような状態が「健康」と言えるのかを定義するもの
・ヘルススコアとは
顧客がサービスを継続利用してくれるかどうかの指標のこと
各クライアントに対して「健康」なのか「要観察」なのか「不健康」なのか。また不健康な場合はどこが悪いのか。そういったところがパッと見でわかるダッシュボードのようなものが作れたら素敵じゃないかと思いカスタマーヘルスを導入すべく動き始めました。
カスタマーヘルス導入のためにはヘルススコアを何にするかが重要になります。ここではTHE MODELの考え方に従って以下の4つカテゴリーをもってヘルススコアを設定することとしました。
1. ビジネスポテンシャル
2. 製品活用度
3. プログラム活用度
4. 顧客とのリレーション構築
1. のビジネスポテンシャルのヘルススコア項目についてはTHE MODELに載っていた項目から抜粋する形で以下を採用することにしました
・契約プラン
・月額費用
・契約期間
・年商
・従業員数
2. の製品活用度のヘルススコア項目についてはtroccoの活用具合やオンボーディング・カスタマーサポートの状況などを測りたいと思い以下を採用することにしました
・trocco設定数
・troccoジョブ数
・問い合わせ数/クローズ率
・改善要望数/クローズ率
・アクセス数
3. のプログラム活用度のヘルススコア項目については以下を採用することにしました
・ハンズオン
・テレカンによる機能紹介
・成熟度アセスメント
4. の顧客とのリレーション構築については以下を採用することにしました
・企業ロゴ掲載
・事例登録
ヘルススコアの収集・算出・可視化
ヘルススコアの収集・算出にはtroccoを用います。データの流れとしては以下のとおりです。
ヘルススコア算出に利用しているデータソースは以下の3つです。
troccoのデータベース(MySQL)
Salesforce
New Relic
これらのデータはそれぞれBigQuery上に集約したのちにtroccoのDWH管理機能を用いてカスタマーヘルスの算出をします。また、算出したデータはGoogle Dataportal を用いて可視化、さらにSalesforceにヘルススコアデータを戻すなどしています。
各データソースについて説明します。
troccoのデータベースからは「trocco設定数」や「troccoジョブ数」などを算出するためのデータを取得します。こちらはtrocco経由でBigQueryに収集します。
次にSalesforceからは「問い合わせ数」や「契約プラン」「成熟度アセスメント」といったクライアントに関する定性的なデータや定量的なデータを取得します。こちらも同様にtrocco経由でBigQueryに収集します。
最後にNew Relicからは「アクセス数」といったtroccoの利用に関するデータはを取得します。こちらも同様にtrocco経由でBigQueryに収集します。
それぞれ収集したデータはBigQuery上でクライアント単位・ユーザ単位でそれぞれ集約・計算し、カスタマーヘルスを算出していきます。
算出したカスタマーヘルスはGoogle Dataportal にて可視化します。可視化した結果は以下のとおりです。
ダッシュボードの上部にはカスタマーヘルスのスコア結果を表示します。運用してきた実績から現在では「80点以上」は「健康」、「60点以上」は「要観察」、「60点以下」は「不健康」であるという分類をしております。
「不健康」な場合はスコアの内訳を確認し、どの項目が実際に下ぶれているのかを確認するようにしています。
内訳を確認した後に、その項目に関する具体的な状況(問い合わせがたまり続けている、troccoジョブが常にエラーになっている、など)を確認するようにしています。
データを自動で連携して可視化までもっていくことで、toilのような辛い作業を抑えた上で必要なことにフォーカスしてカスタマーサクセスをすることができるようになりました。
ヘルススコアのアラート
またカスタマーヘルスの運用をより楽しくするための働きとして、ヘルススコアの値が一定値より下回った場合にSlackにアラートを飛ばすようにしています。
実現方法としてはBigQueryで集約したデータをもとにRedashでアラートを追加することで実現しております。
こうすることで「クローズされていない問い合わせ」や「急にエラー率が増えた」などカスタマーヘルスに響きそうな内容を検知できるようになりました。
まとめ
上記のカスタマーヘルスの施策を通じて以下の動きをtoilを抑えた上で出来るようになりました。
1. チャーン防止につなげる
2. troccoの利用活性につなげる
3. ジョブのエラーなどお困り事はないか能動的に問い合わせる
また、サービスの利用がダイレクトに分かるのでカスタマーサクセスチームを組成するにあたってのモチベーションにもつなげることができ、立ち上げ時で大変なことも多々ありましたが「楽しく」運用出来ているのではないかと思います。
ネクストアクションとしては「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の概念を導入した上でカスタマーサクセスをさらにスケールさせる、であったりアップセルにつなげる動きをする、troccoのプロダクトとしての質の向上にカスタマーサクセスチームから積極的に寄与する、などの動きをしようと考えております。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
それではCS Hackアドベントカレンダーの18日のパートは以上となります!
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