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災害支援プラットフォームの構築をめざして

今回は、八幡浜青年会議所 四国地区 愛媛ブロック協議会の増田竣輔さんと愛媛県社会福祉協議会の高田敬士さんから、災害支援プラットフォームの構築に向けてのこれまでの活動と今後について報告をいただきました。

八幡浜青年会議所の活動報告

災害プラットフォームの構築に向けて

青年会議所として新しいネットワークをどんどん構築していこうとしています。
八幡浜市のトロール会議に値するものが宇和島、新居浜、今治にもありますが、これを愛媛県各地で増やしていきたいと活動してきました。

トロール会議の良さは、地域の人たちが顔を合わせて防災の話をすることによって、防災意識の向上、災害時の行動の迅速化につながることです。
災害が起こってからでは動けないことも、平時に予期して情報を共有することにより、災害時の行動の迅速化が図れます。

そのため青年会議所としてこのような会議をするにはまず、行政との連携、関係づくりが必要不可欠と考え、県の社会福祉協議会の方々と連携しながら関係づくりに励んできました。

防災協定について


「防災協定」とは、災害時に青年会議所、行政、社協が相互に協力して災害ボランティア活動などの被災地支援を効率的、包括的に行うことを目的としています。
具体的な内容は、災害時の災害ボランティアセンターへの人的支援、ボランティア活動のための資材の調達、仕分け、運搬、専門的な技能を活用した支援活動です。

青年会議所には8つの拠点(今治、法皇、新居浜、西条、松山、大洲、八幡浜、宇和島)があります。
今治・新居浜・宇和島の3つはすでに行政と連携し、協定を結んでおり、有事の際にすぐに動けるネットワークを構築しています。

7月28日に大洲青年会議所が大洲市、大洲社協と協力協定を結びました。
八幡浜でも現在準備中で、今年中に協定を結べる予定です。

青年会議所は全国に690の拠点があり、約3万人の会員がいます。
建設業、卸売業、司法書士などさまざまな業種の人達で、経営者の人が多いです。

経営者、つまり自分で会社を動かせる立場にある人が多いので、有事の際の支援の決定や行動が早い
例えば水が不足しているときに、会社に水があればすぐに水を提供できるなど、指示や決定を待たずに早く的確に支援を行えるのが強みです。

ただ、青年会議所は「40歳まで」の会員の団体であるため、青年会議所としてできることを具体的に表せません
例えば、卸売業の経営者がメンバーにいたので水をすぐに提供できたが、40歳になって会を抜けるとそれができなくなってしまうなど、構成メンバーによってできることが変わってしまうのが弱みです。

しかし、全国規模で考えると「ない業種はない」と言えるほど会員の業種は幅広いです。
そのために必要なのは、市や社協との連携はもちろん、地域での共有会議が重要になってきます。

平時からの話合いで、どの地域に何が必要なのかを共有し、有事のときに必要になるもの、こと、人をあらかじめ知っておくことで、事前に必要なものを確認することができます。
八幡浜のメンバーで手配ができるのか。できないなら県で対応できる人がいるのか。それがだめなら全国で、というように常に状況を把握できるので、平時からの会議、情報共有が大事であると思っています。


今後は5年間で東予、中予、南予だけでなく、四国中央市や松山市など自治体ごとの共有会議が行われるように、青年会議所としても県庁や県社協や各市間のサポートをしたいと考えています。

防災授業について

7月23日に八幡浜で小学生に向けてリモートでの防災授業を行いました。
コロナ禍で集団、集合での防災訓練が行われないなか、八幡浜市、伊方町にもご協力いただ
き、コロナ時代における新たな防災計画の機会となりました。

インターネットのZoomを使ったリモート型の防災アトラクションは、教育だけでなくエ
ンターテインメント。
クイズ形式やドラマチックな形でのアクションがあるので、楽しくわかりやすい授業にな
っています。

小学生は集合での防災訓練ができないと、有事のときに何をしていいのかわかりません。
ある小学生に「運動場で遊んでいたときに防災訓練のアナウンスがあったらどうします
か?」と聞いたら、「教室に戻って机の下に隠れて手をかぶせる」と答えたそうです。

小学生は純粋なので同じ訓練をすると、どんな場所にいても最初の定位置に戻る、というこ
とをしてしまいます。
防災の教育は自分で考えて、どう行動しないといけないのかを学ばなければならないと思
います。

リモート型のアトラクションは、プロの方が演技するクイズ形式などで内容がわかりやすく、小学生や家族も一緒に参加できます。
子どもたちは、その場その場で「自分たちが何をしなければいけないのか」「何が必要なの
を考え、楽しみながら勉強できます

授業では空のペットボトルを用意してもらって人工呼吸のレッスンをしたり、自分の家に
どんな災害グッズを備蓄しているかを確認したりします。
子どもだけでなく家族の人も「水や食料が少ないな」とか「携帯トイレがないな」と気づく
ことができました。

私たちは、楽しみながら「自分で考える防災」を子どもたちに教えていくことが大切である
と考えて活動しています。
今後も新しいことに向けて試行錯誤しながら、地域のために活動を続けていきたいと思っています。

Q&A

八幡浜市でも年内に協定締結が予定されていることに対して、
Q.八幡浜の青年会議所では具体的にどんな支援ができるのか?

A.運送業者がいるので、トラックがいくらでも使える。
建築会社があるので、工具や器具を使っての土砂の撤去はスムーズに行える。
みかん関係の会社があるので災害時に不足しがちなコンテナの問題も解決できる。
不動産会社があるので、余っている土地を使って避難場所や物資の仮置き場を確保できる。

現状では「何ができるのか」がわからない状態だと思うので、協定を結んだ後に具体的にどういったことができるかをトロール会議を含めて進めていくことで、青年会議所の力を発揮できると思う。

Q.平成30年の西日本豪雨のとき、ボランティアが動き出したのが1週間後だったが……

A. 協定を結ぶメリットは、災害時にまずボランティアセンターが立ち上がり、そこが表に立って、何が必要かなどを把握していく。
八幡浜市はまだ協定が結ばれてないが、協定が締結すると災害が起こったとき迅速な行動ができると思う。
活動が1週間遅れたのは、青年会議所はすぐに大洲と宇和島の方には行っていたため。一番被害の大きかったとところを優先に動いていた。


愛媛県社会福祉協議会の活動報告
 地域支え合い・災害支援ネットワーク会議

これまでの取り組み

内閣府でも三者連携を勧めていますが、とにかくいろんな主体が連携しなければいけないと言われています。
全国的にネットワークの構築が進みつつあり、特に災害のあった地域では進んでいます。

平成30年以降、松山で行われる情報共有会議と愛媛防災害支援協議会(愛媛会議)をずっと開催してきました。

コア会議は松山で行うため参加者は関係者ばかりになりますが、愛媛会議は宇和島・大洲・西予と持ち回りで毎月開催地が変わり、関係する行政、社協、NPO、支援団体のみなさんが集まって、いろんな情報共有をしてきました。

3年半の間に仮設住宅からの解除が宇和島市の一部を除いて大洲、西予の方ではすべて完了されました。
まだまだ再建途中ではありますが、自宅に戻られたり、新しい賃貸住宅へ入られたり、災害住宅に入られたりしたので、ひとまず今の災害支援の会議は終了にしようということで、愛媛会議は令和4年3月で、38回をもって終了しました。

令和4年度の活動

令和4年度から愛媛では、4者連携でネットワークを作っていく方向で進めています。
4者とは行政、社会福祉協議会、NPO、諸団体で、行政には公民館や自主防災組織も含みます。

社会福祉協議会には、災害ボランティアセンターと地域支え合いセンターが含まれます。
災害ボランティアセンターは発災後2・3カ月が活動の中心ですが、地域支え合いセンターは災害ボランティアセンターが終了するころから始まり、みなさんが生活再建を終了されるまでの長い期間の支援を担っています。

NPOには教育機関をはじめ士業(社会福祉士、弁護士、調査士)などさまざまな活動をされている団体があります。

諸団体には天理教などの宗教関係、青年会議所、フジリテイリング、コープ愛媛、ライオンズクラブなどがあります。
これらの企業、組合員は大きな組織で人力があるので、あえて明確に別にして4者という形で含めています。

災害時に備えては平時から連携しておく必要があります。
平時からの連携のメリットは、

・災害時に支援活動が速やかに円滑に自主開催される
・各団体機関の立ち上がりが早くなって、各方面で同時に支援が開始される
・災害直後でも連携体制が早く行動される
平時からつながって顔が見えるからこそ、すぐ連絡がとれる
・被災者支援の隙間を減らすことができる
それにより少しでも十分な支援が行き届く

ネットワークに参加いただく団体及び機関に望むのは、

・愛媛県内で発生した災害に対して、災害ボランティアセンターの運営、災害支援活動、その後長く続く被災者の生活再建も含む支援活動に、愛媛県域レベルで協力できる
・県域にわたってよく活動できるネットワーク、東予、中予、南予にネットワークをもっている
・災害が起これば得意な領域、専門的な機能を活かして支援できる
・社会交誼活動を使命と捉えていて、組織内の構成員がボランティア活動に参加できる
・施設設備、物資などいろんな資源を提供できる

ネットワーク会議は、東予会議を9月に46名で開催。南予会議は10月28日に西予市で、初めての中予会議は11月24日に開催を予定しています。

これまでネットワークを構築するためにコア会議、県域会議、エリア会議までは枠組み作りを進めてきましたが、一番の目標は各市町で会議が構成されることです。

今年度は県域会議とエリア会議の開催、先行して連携会議を開催している市の状況の共有化を進めてきました。
八幡浜市のトロール会議、宇和島市の牛鬼会議と災害ボランティア連絡会、大洲市と西予市の連携会議、今治市の災害ボランティアネットワーク会議など、先行して行っている会議に関しては、これから行う市町の参考になるように、事例報告をしてもらうようにしています。

まとめ

  1. 東予会議では1回目で枠組み作りはできた。2回目以降は情報共有を深め、「参加してよかった」と思ってもらえる会議にしていきたい

  2. 全県会議は参加人数が多すぎて逆に顔が見えない状態になってしまった。45名ぐらいのエリア会議なら、机の配置やグループ分けなどにより「顔の見える」状態になり、名刺交換もしやすいのではないか

  3. 初めて開催の東予会議では、同じ市の行政、社協、企業、支援団体が参加していたので、「顔合わせができてよかった」という声があがっていた

  4. 青年会議所、フジリテイリング、天理教、県の社会福祉会の4つの団体は、全域会議、エリア会議の両方に参加しているので、つながりをもった関係ができている

  5. 東予会議においては、範囲が広いので2つの地域に分けては?という案が出たが現状のままでいくことに

  6. 八幡浜のトロール会議の先行事例に興味をもつ参加者が多かった

  7. 市町行政では福祉関係と防災の2つの部署に声かけをしている

  8. 市町行政で八幡浜や宇和島の連携会議の説明をすると、「どこが主に担当しているのか」という質問が多かった

  9. 行政の中では、「どんな人(役職)が会議に参加したらいいのか」という質問が多かった

今年度は何とか枠組みを作り、来年度から中身のある会議にしていけたらと考えています。

グループワーク・参加者からの意見

年間計画の見える化が必要。年間で計画を立てないと参加の調整がしにくい。さらにそこから3年、5年という中長期計画も必要ではないか。
予算化への対応。予算をとらないと行動ができないので、そういうところへ早めにアプローチして参加できるようにすることが必要

情報発信するときは公開しないと参加できない。参加できなければ、見えない・わからないままで、どういうことがあったのかが整理できないので、記録として残すことが重要ではないか。
そのようにしていけば、行政の中でも企業内でも情報の共有ができて、横のつながりが広がるのではないか。

実際に発災したときに、トロール会議は震度5で動くのか、震度6なら動くのか、という具体的なアクションの指針が必要ではないか。
発災したときにどこに集まるのかということも決めておいた方がいいのでは。
団体だけでなく、個人でボランティアとして協力してくれる人を増やしていくのもありでは。

まとめ

みなさんの思いに共通するのは、「会議に人を増やしたい。もっと来てほしい」ということでした。
「人が集まるためには、まずどうしなければならないのか」ということを考えるのが、一番大事なところだと思います。

年間計画を立てることにより、日程や内容を知っておくことで対応もできるし、人が集まりやすい時間や日程にすることで参加する人も増える。
今後、こういったことも話し合い、会議としてより良いものにしていきたいと思います。

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