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光は常に正しく在り その④:約束をやぶることにした

先週一週間、体調を崩していた。月曜日、急に嘔吐して、「あー、これはちょっとおかしいなぁ」と思って熱を測ったら、37.6度。それから38度まで上がったけど、朝起きたら35.7度まで下がっていたので会社に行った。だけど、18時くらいになったらまた熱が上がり始めた。フラフラと帰宅して、寝て、起きたらまた下がっている。そんなことを身体は繰り返していた。

原因は解っていた。最近、誰と何を話していても、何か一枚ヴェールに包まれているような感じがして、うまく会話ができない。もっと端的に言うと、会話が楽しくなくなっていた。聞こえる声、話題、もたらす空気感。その何もかもが気持ち悪く、うすっぺらく、馬鹿らしく、汚らわしく感じる。そして、そんな風に感じてしまう自分がとても申し訳なく、「あぁ、楽しくないって感じてしまうおれがおかしいんだ。おれの心が汚れてるんだ。おれが楽しくないやつなんだ」と思ってしまう。それがとてもストレスだったし、誰にも話す気になれず、抱え込んだ結果が体調に表れた。

体調不良は週末まで続いた。土曜の21時頃、微熱の中、どうしても海が見たくなった。車で行く気にはならなかったのだけど、歩いて行くには遠すぎる。だから、比較的近場にあるダムを見に行くことで折衷案とした。

ダムは山奥にある。真っ暗闇の中、ひとりトボトボ歩くぼくの影は、きっと通りがかる車には幽霊のように見えただろう。多分、僅かにそんな気持ちが、、、もう幽霊になってしまおうという気持ちがあったかもしれない。

だけど、片道3時間かけてたどり着いた先で、ダムと水面に反射する桜の花、月と粉砂糖を振り撒いたような星空を見たとき、とてもきれいだと感じた。同時に、こう思ってしまった。「あぁ、おれはこんなにもきれいだと感じることができるんだ。だから、汚いのは、おかしいのは、楽しくないのは、おれ以外のやつらなんだ」と。そう思ってしまった時、熱が少しずつ引いていった気がした。

ぼくは「約束」を重くとらえてしまう。思い詰めてしまうわけでもなく、躍起になるわけでもなく、ごくごく自然に、「それを守ること」に多くの情熱を注いでしまう。

例えば、友達とやっているラジオの打ち合わせで「ライトな話をしていこうよ」って約束したときも、それにそぐわない話は一切しないと、とても自然に決めてしまっていた。「そんな深刻なつもりで話したわけじゃなかった」と彼は言ってくれたけど、ぼくも別に深刻にとらえていたわけではない。ただ、約束を守りたかっただけなんだ。

例えば、「ずっと友達だよ、ずっと一緒だよ」とか「がんばろうね」とか「頼りにしているよ」とか「応援しているよ」とか。そんな言葉たちをぼくは大切な約束として受け止めてしまう。だけれど、言ってくれた側は、それこそ、そんなにシリアスに言葉にしてるわけではないんだ、って。ぼくが自分勝手に、永遠に守るべき約束にして、自分を縛り付けていたんだってことに、ようやく気づいた。

だから、ぼくはもう、約束をやぶることにした。たったひとつの、本当に大事な約束を守るために、それ以外のありとあらゆる約束を捨てる。帰り道。真っ暗闇の中を再び歩きながら、そう決めた。

そんなことを考えながら作ったのがこの曲。真っ暗闇の中で見つけた、全てを肯定する音楽。「この曲ができたら、やっと終われる」って、そう思えた。ぼくはもう、終わりにしたいんだと思う。すべてを終わらせるために続ける。


いま、あらゆることが、とてもおだやかで、凪いでいる。悲しくもないし、無駄にはしゃいでもいない。言い換えると、すべてがどうでも良くなってるってことなのかもしれない。これはきっと、良い意味で。だから、いまは自分が思っていることをできるだけ雑な言葉にしないでいたい。ぼくが感じたこと、見つめたこと。それは自分だけの宝物にしていたい。語るなら、表現にして。

今日、この日記を書いたのは、最低限のエクスキューズをしておきたかったから。ただの自己満足だけど、できる限りの筋は通しておきたいって思ったんだ。

自分の感情が、あんまり良くない方向に向かってるんだろうなぁ、っていうのは、自分でもよくわかる。それでも、心配になるどころか、「これからどうなっちゃうのかしら」って、少しワクワクしてる自分がいる。向かう先が明らかなバッドエンドでも、「ハッピーエンドだったよ」って言いたい。

とっても寂しいのに、ひとりでいたくなるのは、どうしてなんだろう。性格なのかしら、病気なのかしら、業なのかしら。治したいとおもっていないので、まぁ別にそのどれでも良い。

これだけ自分勝手にしてたら、みんなそろそろぼくに愛想を尽かしてくれるだろう。結局、最後の最後で、自分から捨てる勇気は出ないんだ。だからって、代わりにみんなにそんなことさせるなんて、とてもダサくて、ズルいね。

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