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ある日の出来事

「あなた、教養がないのね」

その言葉を浴びせられたのは、大手モーターサイクル会社の懇親会に出席したときでした。

その懇親会には、私がアルバイトしていたバイク屋の社長が、善意で参加させてくれました。

建前上「モーターサイクルの関連会社の社長夫人」の懇親会ですが、社長夫人の友達や娘さんが出席していました。

その中に社長夫人の友人であるA夫人が私の隣の席に座っていました。

懇親会では観劇の後、フルコースの料理の食事会があります。

フルコースの場合、使用するナイフやフォークなどの食器は既にテーブルに置いてあり、外側から取って料理ごとに変えていくのが一般的なマナーです。

私以外の同じテーブルの人が、一斉に皿から一番近いところからナイフとフォークを取った時、A夫人が

「ナイフとフォークを取る順番って決まってるのにねぇ。××さん、学校でこれくらい習ってるわよね。」

目くばせをされた女性は

「ええ。私は学校で少し。。」

と答えました。

その言葉を聞いて、私のテーブルマナーの知識が間違っていたのかと戸惑いました。

でも、やっぱり外側からナイフとフォークを取った私は間違っていない。

しかし、A夫人は私に対して

「あなた、教養がないのね。
私は、仲のいい友達に誘ってもらったから参加しているのよ。
私の夫は銀行員でこういうことは慣れてるの。」

と蔑むように言いました。

その一言で私はわかりました。

「この人は見栄を張っているだけ」

私は彼女の言う銀行員の妻だし、銀行員の妻だからってタダの会社員の妻でしかない。

そんなに大威張りするということは、おそらく彼女は銀行員の妻ではないと確信しました。

それに私のテーブルマナーは間違っていない。

当時若かった私は、何も言えず、黙ってしまいました。

今ならきっちり倍返しできそうですが。

でも、私が何故そんな失礼なことを言われたのか。

懇親会には、和服を着てくる人もいるし、普段着で来る人もいました。

思えば、私のテーブルには和服や、よそ行きの服装の人ばかりで私だけ貧相にみえたのかも。

「懇親会とは言っても、普段着でいいよ」といわれ、素直に普段着で出席したのがいけなかったのか。

服装で判断されたのではないだろうか。

「わたしは何を着ても大して変わらないから」洋服はほとんど買わず、髪型にも無頓着な私は、そう考えました。

必要な時はブランドの服を着て行けば、こんな経験はしなくなるかもしれない。

そこで百貨店で似合いそうな洋服を購入し、万が一に備えていました。

ある日、趣味の仲間と写真を撮った時、愕然としました。

小学校教師生活25年、すっぴんで子供たちと校庭を走り回り、しみの多い彼女は、生き生きしていて若く見える!!!!

肌の手入れに余念のない、お高い洋服を着た私はおばあさんみたいでした。

彼女の服装は、けして高価な服ではなく、紫色のレギンスにショートパンツのジーパンが彼女らしい服装でした。

初対面の人に、あんな失礼なことをいう人が間違っているだけ。

もしかしたら、服装ではなく他の何かが見下される原因だったのかもしれません。

「人をみかけで判断するな」とはよく言われる言葉です。

初対面の人のために、一目でわかるよう服装で自分を表現すれば、人に間違った態度をさせず、楽しい懇親会だったのかもしれません。


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