「小さな学校の時代がやってくる」

小さな学校の時代がやってくる・・・・時代がやってくるんだ!と感じさせてくれる本書でした笑。これからの時代は学習の多様さや選択の自由が求められるし、広がってくるのではないかなと感じます。子供が主体的にそして民主的なコミュニティを築くことができるのはこの本に書かれているスモールスクールではないかと思います。本書では世界のオルタナティブ教育と日本の個別教育の歴史。大規模学校ではなく小さい学校が良い理由、実際に作るとしたらどんな法律が関わり運営はどうしたら良いのかなど具体的に書かれていました。以下オルタナティブ教育に視点を当てて本書で紹介されていた学校を少しまとめてみます。

世界のオルタナティブ教育

■19世紀後半に始まった デンマーク「フリースコーレ」…子供の個性を尊重し、歌や物語、対話を通して想像力を育む学校。当時は一般的であった体罰や試験がない小規模で家庭的な学校。他の影響として、教育を受けるのは必ずしも学校とは限らないとして「フリースコーレ法」ができ、家庭でも教育できるようになり、現在デンマークでは親は子供の学習の場を公立学校、私立学校、自宅教育と選択することができるようになった。(ホームスクーリング)

■19世紀末から20世紀初め「新教育運動」…児童中心主義を掲げ、知識を教え込むのではなく創造的な自己表現と子供の最大限の成長を目標としたもの。

「シュタイナー教育(自由ヴァルドルフ学校)」シュタイナー の人智学を基に独自の教育観(世界観?)から環境設定や教育プログラムが作られた。「自分の判断で自由な自己決定ができるような大人になるための教育」と言われいる。長期的な視点で人間のサイクルを捉え、人智学に基づいた発達段階の課題を習得して人間を完成させていく。人智学が一般的な知識とは離れているため理解し難い部分がある。が、具体的な教育法としては、芸術教育を基盤に学習環境に色合いや素材などに気を配りホリスティックな教育が行われる。(他に様々な教育方法があるようだが今回はさらっと…)

(日本ではよく耳にするシュタイナー教育の普及の背景には、高度経済成長時に取り組まれた所得倍増計画が影響していると考える。教育の分野において、当時の池田内閣が行った政策は人間の規格化を考え、教育の規格大量生産化教育カリキャラムを定め、学習指導要領をつくり、全国の学校で同じことを教えさせた。生徒指導に当たり、生徒の長所を伸ばすより欠点をなくすことに重点を置いた。5段階評価とすると、優秀な子供は全科目に5が並び、普通の子供は3が並ぶ、従って能力の差は丸の大きさだけで測れる。丸の大きさを示すのが偏差値で、これ1つですべてが評価できる仕組みを徹底させ、これが教育の場に浸透した。そのことへの国民からのアンチテーゼだったようだ。現在の自由度の低さの要因はここにあると感じた。もう少し掘りたいところである。)

 参考 https://ci.nii.ac.jp/naid/110008152798 日本におけるシュタイナー教育の動向 https://ja.wikipedia.org/wiki/所得倍増計画#文教政策

「サマーヒル・スクール」イギリスの教育家アレクサンダー・サザランド・ニイル(Alexander Sutherland Neil,1883~1973)が設立した。この学校の理念は、子どもの立場を徹底的に尊重する自由と自治の精神にあった。1960年代後半から盛んとなった英米のフリースクール運動に大きな影響を与えると共に、多くのフリースクールにおいてそのモデルとなった。寄宿学校になっており、授業の出欠は自由で、クラスも自由に選択できる。また、生活の中での困りごとや問題に関しては、週一回夕方にミーティングを設けて子供全員で議論し自治をしていく。

参考 https://www.juen.ac.jp/lab/takada/itigo/hatanag.htm 教育史におけるニイルの位置 https://core.ac.uk/download/pdf/45286592.pdf A.S.ニイルにおける「自由教育」の理論と実践に関する研究

「フレネ学校」セレスタン・フレネ(1896-1966)が始めた教育方法。フレネ教育は、それまでのフランスで行われていた「大人から子供に押し付ける」伝統的な詰め込み教育ではなく、子供たちが主体となって「自由な表現」を取り入れた画期的な教育法で注目された。フレネ教育では、「活動計画表」にしたがって学習するというスタイルをとっている。自分で決めた活動計画に則って、学習することができる。また自己評価を発表し、クラスのみんなに評価してもらう。年齢の違う子供たちが同じ環境の中で学び、クラスは縦割りになっており、3歳~5歳、6歳~7歳、8歳~11歳のように3学年ぐらいの子供たちが一緒に活動するようになっている。

参考 https://studystudio.jp/contents/archives/41222

「イエナプラン学校」イエナプラン教育の発祥は、ドイツのイエナ大学の教育学教授だったペーター・ペーターセン(1884~1952)が同大学の実験校で取り組んでいた教育です。一人ひとりの個性を大切にしながら自発的に学ぶ姿勢を大切にしているイエナプラン教育。カリキュラムは「会話」「遊び」「仕事(学習)」「催し」という四つの活動を循環させて取り組む。仕事(学習)については自立学習と共同学習があり、学習環境としてリビングルームのようなリラックスした環境を整えている。クラスとしては、3学年が混在した異年齢で構成されており、学び合いが自然に発生していく仕組みになっている。

参考 https://coeteco.jp/articles/10535

本書をキーワードにかなり簡単にただ引用を繰り返して調べましたが、オルタナティブ教育といっても方向性は様々です。オルタナティブ教育の定義は既存の教育以外のものであって、それぞれに育成したい人間像は様々なので、良し悪しはそれぞれにあります。紹介しきれていない教育については後日記事にしていきたいと思います。教育は多様であり、また時代背景も大きく影響し、この教育の理念が何なのかの軸をしっかり持ち、学習スタイルを自分で選べる時代になっていくのだろうと感じました。

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