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4/19開催【ドコモベンチャーズピッチ】五感を再現?!6G・メタバース時代に必須の感覚センシング技術特集

皆さんこんにちは! ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2022年4月19日(火)に行ったイベント、

【ドコモベンチャーズピッチ】五感を再現?!
6G・メタバース時代に必須の感覚センシング技術特集

についてレポートしていきたいと思います!

本イベントでは、感覚センシングに関連する新しい事業に取り組まれている注目のスタートアップ2社をお招きしピッチをしていただきました。

  • 6G、メタバースの発展に関心のある方

  • 感覚センシングに興味のある方

にぜひお読みいただきたい内容となっております!

ピッチに先立ち、感覚センシングのトレンドをRouteX 塚尾様にまとめてお話いただきました。

■感覚センシングトレンドのご紹介:
RouteX株式会社

<RouteX株式会社 COO 塚尾 昌浩 様>

RouteX株式会社  塚尾 昌浩 様

RouteX社は、「情報の非対称性が無い世界へ」をMissionに世界中のスタートアップ・エコシステムに関するリサーチ/コンサルティング事業を行っています。

それでは、塚尾様の解説をみていきましょう。

期待されるメタバースビジネス
「メタバース」という言葉が、近年社会に浸透してきたことは皆さんも感じていることと思います。様々なプレイヤーがこのメタバースのビジネス化に動いています。世界経済フォーラムでは以下の4つが期待されるメタバースビジネスとして挙げられています。 

WebMe:現実と理想の連続性の実現
アンリアル:非現実世界の実現
プログラマブルワールド:操作可能な世界の実現
新たなコンピューティング:(メタバースに大きな技術進化をもたらすであろう)量子コンピューティング

https://www.weforum.org/agenda/2022/04/accenture-metaverse-technology-vision-2022/

メタバースの実現、事業化へ向けて
メタバースにおいて人の感覚を再現するためには、多くの技術的なハードルがあるそうです。塚尾様は、CBINSIGHTSが公表したメタバース業界マップを用いて、技術的なハードルを以下の3つのステップに分けて解説してくれました。なお、本イベントのメイントピックは、Step 2-1に関連しています。

メタバースにおいて感覚を再現するための3ステップ

出典:CBINSIGHTS  "The companies building each layer of the metaverse" 

https://www.cbinsights.com/research/metaverse-market-map/

Step 1:通信インフラの構築~2030年までに5Gから6Gへ~

  • ICチップ・プロセッサー

  • 低遅延ネットワーク(特に今回の五感の実現において重要な要素)大容量クラウド

  • エッジコンピューティング

Step 2-1:現実-仮想インターフェース構築(技術による五感再現)VR/AR

  • ホログラフィクス

  • ハプティクス(触覚技術)

Step 2-2:仮想空間構築

Step 3:プラットフォーム/NFT/ゲーム etc

まず、Step1で通信インフラの構築により、メタバースビジネスを発展させるのに必要な技術的な土台が整います。次に、Step2で仮想空間における五感再現が進みます。Step3では各プレイヤーがさらなるビジネスの拡張に向けて技術開発を進めていきます。

五感再現における技術的なハードル/潜在市場
では、いよいよ今回のメイントピックであるStep2の五感再現を詳しく見てみましょう。五感それぞれの開発過程に技術的なハードルがあり、潜在市場にも違いがあります。そこで、塚尾様は視覚/聴覚、触覚/嗅覚、味覚に分けて解説されました。

・視覚/聴覚
光と音の仕組みは物理現象として解明されており、再現技術が確立されているため技術ハードルは低い。AR/VRに代表されるような技術を活用した製品の値段も低下しており、Covid-19による需要拡大が今後も続くと考えられる。

・触覚/嗅覚
物理現象ではなく化学現象として扱う必要があり、感覚の全容は不明であるが一部を切り出して再現が可能である。需要は少しずつ増えており、特定のシーンにおける活用が今後期待されている。
なお、Covid-19の後遺症を改善するため、デジタル嗅覚などの研究も進められている。

・味覚
化学現象として扱う必要があり、感覚の全容は不明である。それに加えて嗅覚と関連しているとされ、再現のハードルが高い。味覚をデジタル化する需要があるのかは不透明である。

これら解説してきた五感センシングのテクノロジの現在地をもとに、最後に、海外での事例や今後、注目すべきイベントについても紹介してくれました!

デジタル触覚技術を用いた海外の事例

HaptX社(Haptics gloves)
2012年にシアトルで創業し、デジタル空間上での触覚を現実世界に代替する手袋型のデバイスを開発するスタートアップ。創業者にカルフォルニアポリテクニーク大学の研究者がおり、その技術をベースに事業開発を推進したと考えられる。

https://haptx.com/

Ultraleap社(Non-touch Solution)
世界最先端のハンドトラッキングと、空中で触れる感覚を生み出すハプティクス技術を一体化させたソリューションを提供するスタートアップ。空気を噴射し、その空気を直接手で感じることで物の存在を認識させる。タッチレスでの動作分析やVRを用いたトレーニング等toB向けにサービスを展開。

https://www.ultraleap.com/

デジタル嗅覚技術を用いた海外の事例
現在は、ハードウェアの開発者=コンテンツの開発者であり、今後デジタル嗅覚技術分野のさらなるプレイヤー参入が期待される。

OVR Techonology社(Non-touch Solution)
VRセットの下部にセットするハードウェアを開発するスタートアップ。仮想空間における行動と連動し何千種類ものユニークな香りのナノ粒子をミリ秒単位で生成し、従来のVR体験に嗅覚体験の追加が可能。嗅覚を通じたデトックスやリハビリテーション(Covid-19、薬物治療など)、退役軍人の精神疾患治療などに注力している。

https://ovrtechnology.com/
デジタル五感 (触覚、嗅覚)の今後の展望

今後、先進技術の基盤と特定分野の市場形成を重ね合わせた産官学のエコシステムでの発展が見込まれるとのことです。

イベント紹介 ~awe(Augmented World Expo)~
6月1日から3日間、アメリカのサンタクララで開催されるaweには、XRに関する最新情報が集まるので要注目です!

https://10times.com/awe

また、視覚・聴覚の代替を通じたメタバースの実現にあわせ、デバイス開発だけではなく、触覚を起点とした五感への広がりが期待できます。

では、いよいよスタートアップ2社のピッチを見ていきましょう!

■1社目:モーションリブ株式会社

1社目は、モーションリブ 緒方様にご登壇いただきました!

<モーションリブ株式会社 取締役COO 緒方 仁是 様>

モーションリブ株式会社 緒方 仁是 様

・モーションリブの事業内容

モーションリブ社は、「世界に、やさしいチカラを。」を理念に掲げ、リアルハプティクスに関するソリューション事業/キーデバイス事業/ライセンス事業を行っている企業です。

ロボットに人のような「感触」と「力加減」を与える感触制御技術で、人にしかできない作業の自動化により、社会課題を解決しようとされています。

モーションリブ社が解決する社会課題
日本全体で少子高齢化による労働人口現象により、人手不足に起因した現場課題が急拡大しています。2016年国土交通白書によると、日本全体の生産年齢人口(15~64歳の人口)は、2030年までに568万人減少すると推定されています。

これにより、

  • 職人の定年退職前に、属人的な技能を社内で継承したい(製造業)

  • 農地を後継者に渡したいが、少子化でなり手が見つからない(農業)

  • 高齢患者が増える反面、医療従事者は増えずに現場が逼迫(医療福祉)

などの現場課題がさらに深刻化すると考えられます。

このように、日本中あらゆる場所で現場の人手が足りず労働力を補いたいというニーズがが増えています。

この解決にはロボットの活用が期待されますが、現状として普及が大変遅れています。日本ロボット工業会が2012年に出した市場動向の予測と、2020年に同会がまとめたロボット統計では73%も乖離がありました。

日本ロボット工業会による2012年の市場予測と2020年の実績値

ではなぜ普及が進まないのでしょうか? モチベーションリブ社は、2つの課題を指摘しています。

  1. ロボットの感触を制御できない
    現状では、環境をロボットに合わせることで一部の作業を自動化することがほとんどです。そのため、対象物を規格化できない状況では自動化は困難です。

  2. ロボットの動きを作るのが難しい
    現在のロボットは動きをプロが作り込む必要があります。そのため、現場のユーザーが変更対応などはできません。そして、作り込むためには数ヶ月ほどの時間がかかり、人手不足の急速な拡大に、全く追いつくことができません。

これらの課題をモチベーションリブは慶應義塾大学で生まれた感触制御技術「リアルハプティクス」によって解決します。

リアルハプティクスとは?
一般的な「ハプティクス」とは、振動や擬似的な力で「人に錯覚させる」技術であり、本物の柔らかさ、重さ、手触り、力加減は表現できません。

これに対し、「リアルハプティクス」は遠隔手術のために生まれた力触覚伝送制御技術であり、柔らかさ、重さ、手触り、力加減といった「力触覚」を自在に表現することができます。
これにより、先に示した課題の解決が期待できます。

  • 位置と力を制御統合する特許アルゴリズムでロボットが感触を制御し、人のような器用な作業を達成できる

→接触対象の特性(重い、硬い等)を理解し、動きを柔軟に変化させられるため、規格化できず自動化が進んでいない業界の作業も自動化できる

  • 感触を伴う遠隔操作により「人の動き・力加減」を記録して、ロボットにそっくり真似させることができる

→プログラム不要で、誰でも簡単にロボットの動きを作れる

参考動画はこちら 

力触覚とは?
作用・反作用の法則(AがBに力を加えると、必ずBからAに逆向きの同じ力が加わるという法則)に示されるように、「力触覚(触覚)」だけが双方向に伝わる感覚です。また、五感の中でも伝達速度が速いのが特徴です。これをセンシング、制御するためには「位置」、「力」の情報が必要となります。この2つはそれぞれ次のように説明できます。

力触覚の伝送・提示には「位置」と「力」の情報が必要
  • 力制御(力の釣り合い):物との間の相互作用力を制御する手法

  • 位置制御(位置の追従):物が目標とする位置に達することだけを目的とする手法

したがって、互いに相反する運動、矛盾する制御であるため、両立はこれまでできませんでした。

しかし、「リアルハプティクス」は世界で初めて「力制御」と「位置制御」の統合制御を実現したのです!!

感覚制御ICチップ「AbcCore」
モーションリブ社はリアルハプティクスのアルゴリズムを感覚制御ICチップ「AbcCore」に集約し、誰でも簡単に扱えるようにしました。特徴は以下の4つです。

力加減の計測と制御:位置、速度、力を制御し繊細な力加減を制御

力触覚の伝送:離れた場所へ力触覚を伝送可能

力センサレス:力を測定するセンサを使わずに独自のアルゴリズムで推定

高い汎用性、拡張性:特殊なセンサやモータが不要で市販の装置が利用可能

モーションリブ社は「AbcCore」によって下記の4つの領域に価値を提供しています。

  1. 「つたえる」:遠隔操作 完全な感覚を離れた場所につたえる

  2. 「はかる」:計測・可視化・分析 あらゆる現象をはかる

  3. 「あやつる」:機械の自動化・再現 あらゆる機械やロボットをあやつる

  4. 「しめす」:VR・メタバース 数値化された物の感触データをしめす

これまで、80社(100プロジェクト)以上の共同研究開発を実施しており、2018年から続々と実用化がスタートしています。

世界初の力触覚の制御技術がどのように社会に変革をもたらすのか、今後の進展に大注目ですね!!

■2社目:H2L株式会社

2社目は、H2L 玉城様にご登壇いただきました!

<H2L株式会社 CEO 玉城 絵美 様>

H2L株式会社 玉城 絵美 様

・H2Lの事業内容

H2L社は、手や腕の「位置覚」や「重量覚」を光学式筋変位センサーによって推定する「FirstVR」や、センシングに加えて電気刺激によって「固有感覚」を体験できるハードウェア・ソフトウェアを展開している企業です。
イメージしにくいと思いますので、これから具体的に説明していきますね!

体験を分かち合うためのTech
人は、体験を喜びとして生きています。いつの時代も当時の最先端技術を使って、人は体験を分かち合ってきました。

現代で人々は、マイクとカメラで「視覚」と「聴覚」の受動的な体験を共有しています。たとえば、ダンサーが踊っている動画を見ただけでは「一緒に踊っている」という能動的で臨場感がある体験共有とはいえません。

能動的で臨場感のある体験共有のために最も重要な感覚は「固有感覚」であると玉城様は指摘します。これは、重量覚/抵抗覚/位置覚/深部痛覚など、物体に作用する感覚のことです。

固有感覚とは

H2L社の「BodySharing」
BodySharingは、個人の体験の拡張を実現するシステムです。身体情報の中で重要な感覚である固有感覚のデジタル化を新技術で実現しました。独自の筋変位センサで人の動作や感覚をデータ化し、そのデータをバーチャルアバター、ロボット、あるいは他者へ伝える事で、人類の体験をすべての人に共有する未来を目指しているそうです!

たとえば、カヤック体験について、玉城様は感覚ごとに体験の分かち合いの違いをまとめてくださいました。

感覚ごとの体験の分かち合いの違い

水の重さや、どうパドルを漕ぐかといった固有感覚に関する情報まで伝えることができるのがBodySharingなのです。

H2L社は、人間の固有感覚をコンピュータに入出力するデバイスとして以下の2点を発売し、アプリケーションの作成を行なっています。

  • UnlimitedHand(研究開発用)

  • FirstVR(産業導入用)

固有感覚をコンピューターに入出力するデバイス2つ


また、BodySharingを用いてロボットや他者と固有感覚を共有する事業開発も盛んに行われています。

  • 遠隔農業(RaraaS, PwC財団助成)

  • 遠隔観光(NTTドコモ, H2L 5G通信による遠隔カヤック実験)

  • 動作教示(遠隔ロボット操作, エクササイズ, リハビリ)

参考動画はこちら


最後に、新たなSaaSビジネスを本イベントで初公開していただきました!!

もし、お互いの「感覚」を業務時に認識し合うことができれば、日々のコミュニケーションは格段にスムーズになります。
BodySharingでワーカーの「感覚」をリアルタイムで見える化し共有することで、よりよいビジネス環境を整えるサポートをすることができます。

BodySharing + AI = 新たな感覚をメタバースに反映

固有感覚から伝達できる3つの感覚

固有感覚から、以下の3つの人間の感覚を機械学習で推定し、伝達することができるそうです!

メンタル(緊張):目には見えなかった緊張度を毎秒ごとに計測

フィジカル(残体力):固有感覚と筋肉の反応推移から残体力を数時間ごとに測定

スキル(力加減):筋変位から力加減(作業のコツ)を0.1秒ごとにを測定

BodySharingを用いて、リモートワーカーの上述の3つの感覚の変化をリアルタイムでメタバース上のアバターに反映することで、コミュニケーションロスを減らして、仕事をもっと楽しく効率的に行うことができます。これによって、意図的にコミュニケーションをする環境から、いつの間にか他者と通じ合えている環境へ変化させることができます。

さらに、

  • リモートワーク下での公平性の維持

  • 最適配置による生産性の向上

  • 人材流出の抑制および労災の抑制

  • 研修コストの削減

  • 現実世界における作業の遠隔伝達

などの効果が期待できます。

全ての体験がBodySharingによって共有できる未来が待ち遠しいですね!!

まとめ

今回は、感覚センシングに関するトレンドのご紹介、関連する代表的な2社のお話をお聞きしました。

視覚・聴覚の共有に止まらず、様々な感覚の再現が可能な未来が近づいており、とてもワクワクしますね。
社会問題の解決への貢献にも期待大です!

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます。

引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!
>>今後のドコモ・ベンチャーズのイベントはこちら


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