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7/5開催【スタートアップピッチ】ヘルスケア最前線〜注目の睡眠領域スタートアップ3社をご紹介〜

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2022年7月5日(火)に行ったイベント、

【スタートアップピッチ】ヘルスケア最前線
〜注目の睡眠領域スタートアップ3社をご紹介〜

についてレポートしていきたいと思います!

本イベントでは、睡眠に関連する事業を展開し、新しい事業に取り組まれている注目のスタートアップを3社をお招きしピッチをしていただきました。

・新規事業、協業創出をご検討されている方
・ヘルスケア事業動向に興味のある方
・スタートアップへの投資や事業連携をご検討されている方
・大企業/中小企業でスタートアップとの新規事業創出をご検討されている方

にぜひお読みいただきたい内容となっております!

以下、各スタートアップにピッチをしていただいた内容をご紹介します!

■1社目:ACCELStars株式会社

1社目は、ACCELStars 飯田 様にご登壇いただきました!

<株式会社ACCELStars  執行役員 飯田 悠祐 様>

株式会社ACCELStars 飯田 悠祐 様

・ACCELStars社の事業内容


ACCELStars社は、東京大学大学院医学系研究科の上田泰己教授が創業した東大医学部発ベンチャーです。「睡眠を解明し、新たな医療を創造する」をビジョンとして掲げ、睡眠を誰でも・どこでも・手軽に高精度で測定できる仕組みを提供している企業です。

睡眠の課題によって引き起こされる人体への影響
「睡眠は健康に深く関連する」
これは誰もが実体験を持ち、人々の共通認識であると思います。では、睡眠に課題が生じると具体的に何が起きるのか、睡眠は何に関連するのか、ということをいくつか紹介します。

1.睡眠は「集中力」を奪う。自覚症状は乏しい。
まずは、睡眠時間が短くなると、集中力が低下するということです。これは実体験をお持ちの方も多いと思います。また、寝不足であるという感覚はある時間を境に頭打ちになってしまうため、主観と実際の集中力にギャップが生じてしまう、ということも明らかになっています。

2.不眠の頻度が高いと業務上の事故率が高くなる
睡眠に課題があると業務上で事故を引き起こす確率が上がってしまい、これによる怪我などが原因で、退職のリスクも上がってしまうという研究があります。

3.睡眠不足&過睡眠は抑うつ症状スコアを悪化
睡眠は身体機能だけではなく、精神面にも影響を及ぼします。睡眠時間が短くても、長すぎても抑うつスコアは悪化してしまうことが研究で明らかになっています。また、適切な睡眠時間を守らなければ、仕事でのパフォーマンスが悪化することが明らかになっています。つまり、睡眠時間と生産性は大きく関連している、ということです

4.睡眠不足は生活習慣病に大きく影響を及ぼす
研究では、睡眠習慣を改善することで肥満を解消した事例や、睡眠不足によって心血管疾患リスクが大きく上昇してしまう、といった結果が得られています。

5.睡眠は女性の健康に大きく影響する
研究によれば、不規則な生活は不妊率を上げてしまうことが明らかになっています。またそれだけでなく、お子様を授かった後の流産率も大きくなってしまうことが明らかになっています。

6.若年期からの睡眠課題が認知症発症に繋がる
アルツハイマー病の原因の1つは「アミロイドβ」が脳内に蓄積することです。その予防・進行抑止に「ノンレム睡眠」が深く関わっていることが解明されてきています。

このように睡眠は多くの健康課題に影響するバイオマーカーです。睡眠の把握が新たな診断・予防・治療に繋がります。

しかしながら、睡眠の正確な把握には脳波測定が必要であり、そのハードルは高いのが現状です。具体的には、次のような理由が挙げられます。

睡眠測定のハードル

・専門機器が必要:入院必須、検査場所が限られる、高価
・装着が大変:技師の補助が必要、特殊環境下での睡眠測定
・基本的に一晩の測定:
 日々のリズム変化は測定できない(社会的時差ボケ)
・睡眠に影響する日中の活動は計測できない

ACCELStars社のサービス
睡眠というデジタルバイオマーカーの活用を普及させるには、誰でも・どこでも・手軽に・高精度で測定できる仕組みが必要です。

このためにACCELStars社では、手首に取り付けることができる睡眠検出ウェアラブル端末の開発とそれを用いたサービス展開を行っています。

ACCELStars社の睡眠検出ウェアラブル端末
  • 世界最高精度のアルゴリズムを持つデバイス
    睡眠障害検知に必要不可欠な中途覚醒をウェアラブルデバイスのみで世界最高精度で捉えることが可能です。特異度(※)は82.2%であり、他社と大きく差をつけています。また、手首につけるだけの腕時計型のデバイスなので簡便に計測することができます。現在、社会実装を進めています。

※特異度とは、PSG(終夜睡眠ポリグラフ)装置の睡眠と覚醒を「真」のデータとした際に、ACCELStars社のウェラブルデバイスとアルゴリズムが、覚醒を判定できる確率のこと

  • 睡眠健診サービス
    ACCELStars社のデバイス・アルゴリズムを用いて測定した睡眠の量・リズム・質に加え、Web問診を行います。練習1日+本番7日の計8日間で測定を行い、そのデータをもとに個別レポートを作成します。主観と客観の睡眠と生活習慣により、個別の情報提供と改善を提案します。

睡眠健診サービスの概要

これらを利用することで、睡眠可視化と改善を通じ、予防アプローチを強化することができます。例えば、特定保健指導対象者に対して睡眠診断を提供し、睡眠状況と影響因子を可視化することで、保健指導の効果をより大きくできます。

今後の展望
現在、メンタルヘルスの改善や事故率の改善を目標に、自治体や企業への導入が加速しています。今回紹介したものは1次予防事業=睡眠健診のみですが、睡眠は0次=睡眠習慣/環境から、3次=睡眠医療まで幅広く打ち手を講じる必要があります。そのため、今後は様々なステークホルダーとともに睡眠の解明とサービス開発をすることで、エコシステムを作り上げる予定です。

睡眠の質を測定できるデバイスやアプリが数多く出てきていますが、ACCELStars社の「睡眠健診」は、誰もが膨大な時間を費やす睡眠の改善に大きく貢献してくれること間違いなしです!

■2社目:S’UIMIN株式会社

2社目は、S’UIMIN 藤原 様にご登壇いただきました!

<株式会社S’UIMIN 代表取締役社長 藤原 正明 様>

株式会社S’UIMIN 藤原 正明 様

・S’UIMIN社の事業内容

S’UIMIN社は、2017年10月17日に発足した筑波大学発のスタートアップ企業です。「世界中の睡眠に悩む人々にとっての希望の光となる!」をビジョンに掲げ、最先端のサイエンスとテクノロジーを駆使し、ひとりひとりの睡眠の悩みに寄り添ったサービスを提供している企業です。

わたしたちを取り巻く環境と睡眠の重要性
現在、急速なテクノロジーの発展により、遠い未来の話だと思われていたことが実現できる世の中になってきました。仮想空間を利用したビジネスがトレンドになったり、SNSの活用だけで億万長者になるような人も出てきています。その一方でCOVID-19や気候変動など、わたしたちを取り巻く環境も大きく変化しています。このような急激な変化・熾烈な競争に対し、生身の人間は対応できずに疲弊してしまいます。このような環境だからこそ、睡眠の重要性が昨今うたわれています。

藤原様は睡眠を取り巻く社会課題を多く指摘しています。

・約4人にひとりが睡眠に悩んでいる
 →国内経済損失は約15兆円であり、先進国の中では最悪の値
・健常者の約半数が、睡眠に関して改善もしくは専門医の受診が必要な状態
・睡眠への課題が、メタボ・精神疾患・認知症などのリスクを高める
・レム睡眠を削ると寿命が短くなってしまう(寝不足が直結する)

これらに加え、睡眠検査(終夜睡眠ポリグラフ検査=PSG検査)自体が煩雑であることも課題です。入院が不可欠であるため、被験者と検査技師の双方の負担が大きく、ハードルが高いのです。被験者に対しては次のような課題があります。

被験者側の課題
1.寝づらい!

  センサーを多数身体に装着する必要があります。また、普段とは異なる 
 環境で寝なければならないため、被験者にとって大きな負担になる
2.費用が高い!
  一晩の入院が必要であり、費用が30,000円以上と高額
3.検査施設が足りない!
  検査を行える施設数は国内に300程度で、地域格差があります。さら 
 に、結果 入手まで2〜3週間程度かかります。

一方で、PSG検査では脳波を目視でステージ判定するため、検査技師には次のような課題があります。

検査技師側の課題
1.心身の負担が大きい!

  1回の検査につき2~5時間を要する
2.検査技師の技量により結果が異なる!
  技師間での一致率が80%に満たない

S’UIMIN社のサービス「InSomnograf(インソムノグラフ)」

このような多くの課題を解決するために、S’UIMIN社は「InSomnograf(インソムノグラフ)」というサービスをつくりました。これは、

睡眠時の脳波を測定してAIで解析し、医師のアドバイスや改善アドバイスを利用者にレポートする、これまでにない睡眠測定サービスです。

装着性の良い睡眠脳波計

InSomnografには、以下の特徴があります。

  • 入院せずにどこでも
    従来の病院での計測に比べ、簡易なデバイスを使用していますが、PSG検査で計測された脳波との一致率は約87%です。

  • 電極を自分で簡単装着
    鏡を見ながら一人で、1〜2分程度で電極を装着できます。電極は一晩ごと使い捨てです。

  • 複数晩の連続計測可能

  • AI判定で迅速かつ正確
    トップレベル技師による脳波の判定とAIによる脳波の判定結果の一致率は平均で約84%です。

一般の被験者に対して、これらの分析結果とともに、分かり易い解説を提供することができます。また、5日間の測定で簡易結果がすぐに確認できるようになっています。

レポートの概要

今後の展望
現在はステップバイステップで事業を拡大中で、医療機器認証の最終審査段階に差し掛かっています。一方で、その他の取り組みについてヘルスケア領域の2つを紹介します。

  1. 研究支援
    様々な企業の睡眠改善ソリューション(食品・サプリ・寝具・睡眠環境等)の評価を行っています。従来は、寝心地・スッキリ感・日中の眠気などの主観的な指標で評価されていました。これをS’UIMIN社のサービスを活用し、客観的な指標である深睡眠・寝つき・中途覚醒などで定量的に、数値で評価しています。現在は、主な案件だけでも50以上の企業の支援をしています。

  2. 健診センター
    健康診断のオプション展開を行っています。これまで約30施設で導入を行っており、2022年9月までに約30施設との契約を目指しています。測定直後に端末で簡易レポートを見ることができます。また、睡眠専門医のコメントも付いた約20ページにも及ぶ総合レポートも提供しています。

このような事業を通して得た、誰も手にし得なかったビッグデータは、将来の疾患予測やその対策、ひとりひとりに寄り添った睡眠の提案のパフォーマンス向上に有効です。S’UIMIN社は、かつて家庭用血圧計が普及し、手軽に血圧の把握ができるようになった時と同様に、睡眠の質や量が気になったらS’UIMIN社のサービスを使ってもらえるような世界の実現を目指しています。

脳波による睡眠の計測をどこでも簡単に行えることに、大変驚きました!
現在はBtoBtoCがメインとなっているそうですが、BtoCでの展開も楽しみですね!

■3社目:マリ株式会社

3社目は、マリ 瀧 様にご登壇いただきました!

<株式会社マリ 代表取締役 瀧 宏文 様>

株式会社マリ 瀧 宏文 様

・マリ社の事業内容


マリ社は、瀧様が2017年にスタンフォードバイオデザイン(グローバルファカルティ研修)に参加し、その成果をもとに、2017年11月に設立されました。
「Sleep Freely. 世界の睡眠障害をやさしく解決したい」をミッションに掲げ、非接触で睡眠時無呼吸症候群を治療する装置の開発・簡易スクリーニング装置の開発を行っている企業です。

創業の原点
マリ社の創業の原点は、「”いびき”の社会的課題の解決」です。
スタンフォードバイオデザインで米国スリープクリニックに来院する患者を分析したところ、来院理由で最も多いものが、パートナーのいびきに対する苦情でした。

いびきは自覚症状がないため、離婚の理由にもなりうる深刻な問題です。そしてこれは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の主要な症状として引き起こされるものだということが明らかになっています。
そこでマリ社は、いびきによって生じる夫婦間の問題を最も受け入れやすい方法で解消(Marital Relationship Improvement = MaRI)することをミッションに掲げ、創業しました。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
SASは、低呼吸等により生じる睡眠障害です。症状としては、よくいびきをかく、ということが挙げられますが、自覚症状はほとんどありません。
重度の方は、血中酸素濃度低下・交感神経の段階的な高まりなどが引き起こされ、心不全・不整脈・冠動脈疾患等の合併症のリスクが増大する恐れがあります。そのため、SASは睡眠に関する最も重篤な疾患であるとされています。

患者数は先進国を中心に増加傾向にあり、それに伴いSASのソリューションについての市場規模も成長している領域です。

現在のソリューションとしては、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)が標準とされており、有効性の高さが示されています。
しかしながらマスクを装着しなければならないため、その違和感により治療継続を断念してしまう人が多いという現状があります。

マリ社の非接触SAS治療機器
そこで、マリ社は非接触型のSAS治療機器を開発しています。

マリ社の非接触SAS治療機器

これは、睡眠中に患者の低呼吸・無呼吸状態のシグナルを検知した際、低周波音を照射することによって、その状態を解消することができるものです。この機器を使った治療は、

・患者は治療中に何もつけなくてよい
・患者自身、睡眠を含む日常生活の行動変容が不要
・そのため、継続治療が容易である

という強みがあります。
そのため、従来の治療方法であるCPAPを継続できなかった閉塞性無呼吸症候群(OSAS)の患者に気軽に使っていただけるサービスとなっています。

また、マリ社は非接触ミリ波レーダーセンサ技術に強みを持ち、非接触見守りセンサ”VitaWatcher”(ビタウォッチャー)の販売も行っています。
これは、非接触で、呼吸・心拍による体動を測定することができるデバイスです。最大検知距離は4m(推奨1m)であり、布団の上からでも問題なく測定することができます。

参考動画はこちら:chie1gp challenge 株式会社マリ

この非接触モニタリングは、病院や介護施設などで活用することにより、患者と医療従事者の双方にメリットが生まれます。

非接触モニタリングの応用例


具体的には、病室などに1人1台設置することで、多数の患者の状態を遠隔・非接触で集中モニタリングすることができます。これにより、ケアの品質向上や看護コストの削減を実現することができます。

今後の展望

  • SAS治療機器について
    現在、患者への試験となる特定臨床研究を推進中です。
    2023〜2024年の治験を元に承認申請を行い、治療ガイドラインへの記載・保険適用を目指していく予定です。

  • 非接触バイタルセンシング技術について
    現在、研究用機器販売・PoCによる技術評価中です。
    今後、京大医学研究科等との協調により、機器の精度を確保し、医療機器・非医療機器として技術ライセンスの取得を行っていく予定です。

いびきって思っている以上に、緊急性の高い症状なんですね・・・私も家族にいびきの状態を聞いてみようと思いました。
非接触でストレスフリーにこれが解決できるマリ社の治療機器の需要はとても大きいですね。

まとめ

今回は、睡眠関連の代表的な3社のお話をお聞きしました。

睡眠に関する課題を全て解決し、誰もが健康的で幸せな睡眠をとることができる将来が待ち遠しいですね!

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます。

引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!

>>今後のドコモ・ベンチャーズのイベントはこちら



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