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9/13開催【ドコモベンチャーズピッチ】ヘルスケア最前線~デジタル技術の活用による医療の変化をご紹介~

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2022年9月13日(火)に行ったイベント、

【ドコモベンチャーズピッチ】ヘルスケア最前線~デジタル技術の活用による医療の変化をご紹介~

についてレポートしていきたいと思います!

本イベントでは、ヘルスケアに関連する事業を展開し、新しい事業に取り組まれている注目のスタートアップを5社をお招きしピッチをしていただきました。

・新規事業開発を担当される大企業の皆様
・ヘルスケア事業動向に興味のある方
・スタートアップへの投資や事業連携をご検討されている方
・医療×デジタル技術に興味のある方
・既存産業のアップデートを目指す皆様

にぜひお読みいただきたい内容となっております!

以下、各スタートアップにピッチをしていただいた内容をご紹介します!

■1社目:株式会社魔法アプリ

1社目は、魔法アプリ 福井 様にご登壇いただきました!

<株式会社魔法アプリ 代表取締役 福井 健人 様>

株式会社魔法アプリ 福井 健人 様

・魔法アプリ社の事業内容

魔法アプリ社は、公共交通機関や雷、高所などに苦手意識がある方々へ、苦手克服VRトレーニングシステム「NaReRu」という新しい練習ツールを提供しています。その目的は、VR技術で不安症罹患者を救い、医療環境を改善することです。

・不安症と曝露療法

精神疾患の分類の一つである不安症は、パニック障害や社交不安症など、精神疾患における「不安」を主な症状とする疾患群です。魔法アプリ社によると、現在、日本国内の罹患者数は約700万人に上り、不安症に罹患して働けなくなってしまうことによる損失は、年間で約2兆3932億円になると推定されています。

NaReRuの紹介

不安症の治療は、抗不安薬などを使った薬物療法と、カウンセリングなどを行う心理療法を組み合わせて行われます。そして、心理療法の最終治療法として曝露法が行われます。

曝露法とは、不安や苦痛を克服するため、患者が恐怖を抱いているものや状況に段階的に触れて慣れてもらう治療方法です。厚生労働省のウェブサイトでも紹介されています。

エクスポージャー療法(曝露法 / 曝露反応法)

厚生労働省「e-ヘルスネット」 > 健康用語辞典 > 休養・こころの健康

・NaReRu -ナレル-

曝露法の問題点は、患者が恐怖を抱く対象物によっては病院で実施することができないということです。たとえば、飛行機に対する恐怖を曝露法で治療するには、実際に飛行機に乗るという体験をしなければなりません。

その問題を解決するのが「NaReRu」です。鉄道、飛行機、新幹線、雷、高所、バスなどをVRで再現できるため、病院のカウンセリングルーム内で様々な症例の治療が行えます。

NaReRuの操作と表示されるVR映像

心理士もしくは精神科医が左の画面のように操作し、患者は右の画面のようにVRを見ます。

画像は雷恐怖症患者の例です。雷や雨の量、日の落ち具合などが調整でき、患者一人ひとりに合った環境を提供することができます。

・日本の不安症に寄り添う

魔法アプリ社への問い合わせは、パニック障害、広場恐怖症、閉所恐怖症の患者から受けることが多いです。

公共交通機関に乗れず、病院にすら行けないという不安症患者のために、魔法アプリ社は、患者の自宅と医療機関とを繋ぎ、メタバース空間で曝露法やカウンセリングを行うことを目標にしています。

また、現在日本では、心理士によるカウンセリングは保険適応外となっており、患者はカウンセリングのために高額な治療費を払っています。しかし、精神科医の判断のもとNaReRuを使用する場合、保険が適応されるため、低コストでの治療が実現します。

現在は、病院内のパソコンで操作できるようにすることで機材の導入コストを下げる一方、Webブラウザ上やスマートフォンで操作できるシステムを開発中だそうです。

NaReRuの活用事例
いつでもおかえり心のレシピchー【苦手克服】カミナリVR体験してみた

「いつでもおかえり心のレシピch」

■2社目:株式会社mediVR(メディブイアール)

2社目は、mediVR 新本 様にご登壇いただきました!

<株式会社mediVR メディカルサイエンスリエゾン/医師 新本 啓人 様>

株式会社mediVR 新本 啓人 様 

・mediVR社の事業内容

mediVR社は、2016年に大阪大学発ベンチャーとして創業した医療機器メーカーです。VR技術を用いたリハビリテーション医療機器「カグラ」は、ゲームのような形で脳と体の正しい使い方を再プログラムする製品です。

ヘッドマウントディスプレイを装着し、手に持ったコントローラーで、VR空間上に見えている的や落ちてくる球体を触るリーチング動作によって、リハビリテーション(以下、「リハビリ」)を円滑に行えるようにします。

・mediVRカグラを使ったリハビリの事例紹介

リハビリ事例1

[リハビリ事例1]~ 左基底核脳梗塞後、右片麻痺10ヶ月目~
こちらの30代男性は、カグラを1回20分間使用してリハビリを行いました。リハビリの前後で、右から左へボールを30秒以内に移せるかという検査を行ったところ、上肢の動きがかなりスムーズになりました。

リハビリ事例2

[リハビリ事例2] ~脳性麻痺~
初診時、座位保持椅子を使用かつ立ち上がりに重介助を必要とした男児の事例です。1回40分間のリハビリ(カグラ20分、筋トレ20分)を週5回続け、約1ヶ月後にはロフストランド杖(1本の脚と体重を支えるグリップ、前腕を通す輪っかから成る杖)で歩行可能になりました。目標にしていた「卒業式で自分の足で卒業証書を取りに行く」ことを達成できたそうです。

カグラは、入院患者でも在宅患者でも使用が可能です。また、疾患が発症して早ければ早いほど効果がありますが、慢性期でも十分効果を得られるとのことです。

(参考)カグラについてさらに詳しく知りたい方はこちら

mediVR社HP

・カグラの仕組み

カグラの用いる治療理論とは、どのような病気/病態でも、「脳と体の情報処理過程の異常」と考えることができるという理論です。この理論を適応させ、カグラを使って脳と体の情報処理過程を整理することで、リハビリが必要となるどんな疾患でも治療効果を発揮することができます。カグラは、整形外科、神経内科、脳神経外科、麻酔科、精神科、腫瘍科、小児科などで使用することができます。

・成果報酬型のリハビリ施設

mediVR社が設立した「成功報酬型」リハビリ施設

mediVR社は、世界初の「成果報酬型」の自費リハビリ施設を設立しました。まず、患者がリハビリを通した最終目標を設定します。最終目標を達成するため、施設側でステップごとの小さな目標を立て、リハビリを実施します。小ステップが達成されるごと、つまり疾患が治っていくごとに初めて施設に報酬が入る仕組みです。mediVR社は、

1. 医療機関にカグラをさらに導入し、患者の誰もがカグラの治療効果を得られるようにしていくこと
2. 成果報酬型のリハビリ施設を展開していくことで、患者から病院に「カグラを導入してほしい。」と言ってもらえること

という二つの指針を達成するため、カグラと従来のリハビリを組み合わせて事業に取り組んでいます。

(参考)業界の常識を打ち破る“成果報酬型”リハビリ施設「mediVRリハビリテーションセンター東京」を日本橋に開設

PR TIMES  株式会社mediVR 2022年10月6日 ニュースリリース

■3社目:DeepEyeVision株式会社

3社目は、DeepEyeVision 髙橋 様にご登壇いただきました!

<DeepEyeVision株式会社 代表取締役CEO ・自治医科大学准教授 髙橋 秀徳 様>

DeepEyeVision株式会社 髙橋 秀徳 様

・DeepEyeVision社の事業内容

皆さんは、目から体全体の健康状態を把握することができることを知っていますか。眼底写真を撮ることで、体に一切傷をつけることなく眼底の組織や血管を映し出すことができるのです。DeepEyeVision社は、「目からはじまる健康」と題して、目を起点に全身を含めて人々の健康を促進していくことを目的に自治医科大学発ベンチャー第一号として設立されました。

現在の異常発見までの流れ

WHOの2017年度の調査によると、視覚障害を持つ方や失明した方のうち、およそ80%が、眼科医の治療を受けてさえいれば、失明等を免れたということです。

もちろん、目の不調を防ぐには、健康診断での早期発見が基本となります。健診で目の検査を行うプロセスは、以下の通りです。

1. 健診施設の眼底カメラで目を撮影
2. 撮影画像をプリントアウトし宅配便で眼科専門医に郵送
3. 医師は、画像を読影し、異常所見を紙に記載
4. 健診施設へ結果を返送

このやり方の問題点は、眼科専門医は多忙なため、読影(プロセス③)を専門医以外が行っている可能性があることです。目の健診には費用・時間・医師の専門性が必要です。しかし、コストパフォーマンスの点から、特定健診からも外れているため、多くの失明性疾患が見逃されている現状があります。

・AIによる眼底写真の読影

AIによる実際の診断画面(研究開発用)

この問題に対して、DeepEyeVision社では、自治医科大学等との共同研究の一環において、AIによる診断支援と、眼科医設計のUIで高品質な眼健診の実現を可能にしました。このモデルでは、眼底写真をアップロードすると、AIにより病名の候補が挙げられます。

全身を反映するといわれる血管状態の判定や、眼底出血の発見も可能です。疾患の判定も可能で、現在100の疾患に対応しています。共同研究においては、読影時間を9割以上削減し、コストパフォーマンスを大きく改善することに成功したそうです。

クラウドを利用した診断フロー(遠隔読影サービス)

また、遠隔読影サービスである「クラウド型AI診断支援ソリューション」によって、

1. 健康診断センターから眼底画像がクラウドシステムに送られる
2. 眼底画像をAIが分析する
3. AIによる分析結果を読影医が判断する
4. 読影医による読影結果がクラウドシステムに送られる
5. クラウドシステムから読影結果が健康診断センターに送られる

という一連の流れを確立しました。

・具体事例

DeepEyeVision社では、株式会社ニコンと共同で、深層学習を用いた「逸脱可視化AI」眼底カメラ用プログラムを開発し、医療機器としての薬事認証を取得しました。

これにより、医療現場における眼科医の負荷軽減と、医療の質の向上が期待されるそうです。

(参考)「ニコンとDeepEyeVisionが、日本初の健常眼との差異を色表示する、AIを用いた眼底カメラ用プログラムを共同開発」

DeepEyeVision社HP 2022年2月8日 プレスリリース

また、DeepEyeVision社では、眼科医でもわからない糖尿病網膜症の失明原因領域を指摘するAI、眼底写真から視力を予測するAI、若年男性に多い失明原因の円錐角膜を正確に検出するAIなど、さまざまなAIを研究しています。「AIで目からはじまる健康を支援する」というモットーのもとに発達する、これからの眼健診が楽しみですね!

■4社目:株式会社エム

4社目は、エム 森 様にご登壇いただきました!

<株式会社エム 創業者 森 進 様>

株式会社エム 森 進 様

・エム社の事業内容

エム社では、全脳505構造の萎縮度数値化と同年代ビッグデータとの比較を掛け合わせて、医療画像解析の力で認知症医療をアップデートする事業を行っています。

森様が米国ジョンズホプキンス大学にて開発した脳のMRI画像の自動解析技術により、脳全体を505の構造物にセグメンテーションし、構造物の体積や形状を数値化することに成功しました。さらに、日本の「脳ドック」という世界的にもユニークな仕組みが生みだした巨大な健常者の画像データを組み合わせることで、脳の萎縮度を健康管理指標として実装することに成功しました。

・脳に対する健康意識

日本の主な介護要因の1位となっている認知症。認知症は生活習慣病であり、予防が最良の対策とされています。しかし、認知症を発症するまで脳の状態に無頓着な方が多く、予防による対処という大切な機会を失っているのが現状です。

脳の萎縮度は観察対象外

また、脳は加齢とともに萎縮しますが、認知症によって萎縮した脳でも、場合によっては異常とみなされないことがあります。脳の萎縮度合いは、認知症で最も共通してみられる特徴の一つですが、未病の段階では医療現場では観察対象外となることがほとんどなのです。

その結果、自分の脳の萎縮度を知っている方、またそれが正常な範囲かどうか把握している方は少ないのです。脳に関しては、病気を予防するための健康管理指標が存在していないのが現状です。なお、脳の萎縮度を知る方法には脳ドックという健診サービスが存在しますが、現状では健康意識が高い人など一部の方が任意で受ける限定的な医療サービスとなっています。

・脳健康評価プログラム MVision

「MVision」の一連の流れ

MVisionは、MRI検査を手がける医療機関であればどこでも導入可能です。MRI装置で脳画像を撮影します。医療機関は、MVisionのWebアプリを使って、脳画像をアップロードします。アップロードされた画像は、MVisionのクラウド解析環境で計算され、構造部位別の数値データを出力します。

健診受診者には、脳の状態を正しく知るための「健康評価レポート」が渡されます。このレポートには、脳の健康状態の総合評価や脳の年齢比較等が示されています。これを、経年ログと次回目標値の提示と同期することで、経年変化の記録や結果に基づく将来目標が提示されます。さらには、脳の部位別萎縮度の傾向まで知ることができ、今まで「ブラックボックス」だった脳の状態について、身近に知ることができます。

さらには、外部提携を活用して、生活習慣の改善ソリューションも提供していきます。神経内科・精神科による遠隔カウンセリングや、パーソナライズされた行動指針に基づく健診データのクロス分析により、認知症予防行動に生かします。

具体策として、睡眠改善のためのソリューション、スポートロジー(※)による推奨運動、「脳にいい食事」情報など、睡眠、運動、食事に関するアドバイスを提供します。

※スポートロジー(Sportology)は、単なる”スポーツ医科学”ではなく、身体活動をキーワードとして関連するさまざまな専門分野の深化と統合を目指す新たな学問領域のこと

順天堂大学 大学院医学研究科スポートロジーセンターHP

エム社では、このようなサービスを通じて、誰もが当たり前に脳の状態を正しく知れることを目的としています。そして、認知症の患者を1人でも少なく、認知症の発症を1年でも遅くすることがエム社の願いです。

■5社目:株式会社Dental Prediction

5社目は、Dentral Prediction 宇野澤 様にご登壇いただきました!

<株式会社Dental Prediction 代表取締役 宇野澤 元春 様> 

株式会社Dental Prediction 宇野澤 元春 様

・Dental Prediction社の事業内容

Dental Prediction社では、世界の歯科医療をより安心安全にすることを目標に事業を進めています。現在、主に3つの事業を展開していますが、本レポートではAIを用いた健康相談事業について説明していきます。

・歯科の無料健康相談

患者が歯医者に行く際、病名・治療法・治療回数・費用のみならず、自分に最適な歯科医院がわからないまま受診することが多いのではないでしょうか。その結果、歯の治療に対する消費者からの不満や相談が年々増加しているそうです。

歯科の無料健康相談の意義

そこで、Dental Prediction社は、AIによる事前予測によりこのような弊害を避けられるのではと考えました。こうして開発されたサービスが「健康増進アプリ 歯科の無料健康相談」で、総数25名の歯科医師・歯科衛生士と共に収集・解析・蓄積したビッグデータを使用しています。AIを活用した歯科相談により、利用者は気になる症状に対する病名、治療法、治療回数、最適な歯科医院を簡単に把握することが可能になります。

その後、日本IBM株式会社と共にビッグデータを分析し、自動で回答案を提示するソリューションの開発に成功しました。

これにより、歯科医師や歯科衛生士は歯の疾患を持つ利用者からの問い合わせに、場所や時間を選ばず回答できるようになりました。症状から、関連性の高い疾患や利用者に役立つ回答案などを、迅速かつ的確に提示することが可能になり、その正答率は86.5%にも上るということです!

(出典)Dental Predictionと日本IBM、IBMのAIを活用し症状から関連性の高い疾患を提示するソリューションを開発

PR TIMES 日本IBM 2022年7月7日 ニュースリリース

「歯科の無料健康相談」では、「AI + 歯科医師」という、AIを使いこなしながら人の力との共存を図ることを目指しています。

また、「歯科の無料健康相談」は、以下の特徴もあります。

・認証済みの歯科医師が返答
・Web(テキスト)、電話共に対応
・NLP(自然言語処理)で13ヶ国語に対応

これにより、どこでも誰でも治療にアクセスすることができます!

・相談の流れ

アプリケーションを使った相談フローは至って簡単です。

相談の一連の流れ

<相談者の相談フローの流れ>
1. 相談する
メールまたは電話相談で歯科医師に相談。AIが相談者の疾患を予測し、歯科医師が回答のテンプレートを選択。
2. 回答を確認する
利用者はメールまたはショートメールで回答を受け取る。回答には症状に対応できる病院を検索できるURLが添付。
3. クリニックを調べる
添付されたURLからクリニックを検索。予約後、歯科医院へ利用者の情報が自動共有。
4. 歯科医院受診

医科の健康相談アプリは多く存在しますが、歯科の健康相談アプリはまだあまり存在しません。口腔領域から国民もしくは世界の人々の健康を守っていくことが、Dental Prediction社の願いです。

まとめ

今回は、ヘルスケア関連の代表的な5社のお話をお聞きしました。

ヘルスケア技術が発展することで、医師の負担が減るだけではなく、病気の予防にもつながると思います。

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!

引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!
>>今後のドコモ・ベンチャーズのイベントはこちら

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