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1/31開催【ドコモベンチャーズピッチ】日本の農業の未来を救う!スマート農業これからの効率的な農業のあり方と

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2023年01月31日(火)に行ったイベント、

【ドコモベンチャーズピッチ】日本の農業の未来を救う!スマート農業これからの効率的な農業のあり方とは

についてレポートしていきたいと思います!

本イベントでは、様々な角度からスマート農業に取り組まれている注目のスタートアップ4社をお招きしピッチしていただきました。

  • スマート農業に関心のある方

  • アグリテックにご興味がある方

  • フードテックにご興味がある方

  • 新規事業、オープンイノベーション等をご検討されている方

  • 最新のサービストレンド、テクノロジートレンドに興味のある方

にぜひお読みいただきたい内容となっております。

以下、各スタートアップにピッチをしていただいた内容をご紹介します!


■1社目:株式会社笑農和(えのわ)

1社目は、笑農和 下村様にご登壇いただきました。

<株式会社笑農和 代表取締役 下村 豪徳様>

株式会社笑農和 代表取締役 下村 豪徳様

・笑農和社の事業内容

笑農和社は、農業DXを実現するスマート水田サービス「paditch(パディッチ)」を提供しています。下村様は2017年から大量離農時代が始まり、農業従事者が急激に減っていることに、危機感を感じていると言います。

突然農業から離れてしまうことで、技術継承が行われません。また農家1人あたりの耕作面積が広くなるため、超省力化が必要です。さらに、農家は異常気象への備えや環境への配慮も求められるなど苦しい状況にあります。

笑農和社は「100年後も美味しいお米が食べられる未来をのこす」をミッションに掲げ活動しています。

・水管理のDX

種まきから始まる米の生産過程において、の3つを適切にコントロールすることが大切です。そこで笑農和社では、水の管理にフォーカスして事業を展開し水資源のDX化を実現しています。

水管理のDX

田植えにおける水管理では水位と水温の調整を行う必要があり、現在は人が行っているそうです。そして、この水管理に時間がとられていると言います。

また、水管理に失敗すると米の品質が低下するだけでなく収穫量までもが低下し、農家の売り上げが下がってしまいます。

そこで、この手作業を自動化しIOTデバイスによる遠隔農業を実現することで遠隔から自動で行う水管理のシステムが「paditch」です。

・paditchについて

ここからpaditchについて詳しく見ていきます。paditchを導入することで、土地に縛られないデータドリブンによる遠隔農業を実現することができます。

paditch

paditchには

・paditch cockpit(スマホ、タブレット、PCからの操作を可能にする)
・paditch cloud(センシングで得たデータを蓄積)
・paditch gate(水管理センシング)

の3つに分かれています。

クラウドを経由し、デバイスと水管理センシングを接続することで、水管理をデジタルでコントロールできます

paditchでは、水位・水温をデータ化し、蓄積しています。そうすることで、水位・水温の現在の様子や、一定の期間での推移を可視化することができます。また、推移の傾向や原因を効率的に分析することができます。

これらを、地域ごとに行うことで、地域の水資源をDX化し、お米の収量・品質を向上させることで、農業法人の売り上げの増加に繋げることに成功しています。

下村様によると、paditchは、水管理における、手間・時間を80%減らし、収量を最大で16.4%増やすことに成功しているそうです。

現在は、ゲートだけでなく、バルブ、ドレインなどに展開し、より多くの農家の水管理のDX化に貢献しています。

・農業もカーボンニュートラルの時代

現代社会は、カーボンニュートラル実現にむけて様々な取り組みが実施されており、農業においても水田の水管理によるメタン削減の取り組みが行われています。

水を完全に干す作業を一週間延長することができれば、微生物の動きを停止し、メタンガスの発生を30%削減することができるという調査もあると下村様は言います。

これを利用し、J-クレジットによる農家の新しい収入源を生み出し、儲かる農業の実現を目指しているそうです。

今後は、アジアを全てスマート農業にしていきたいと語って頂きました!


■2社目:株式会社農業情報設計社

2社目は、農業情報設計社 庄司様にご登壇いただきました。

<株式会社農業情報設計社 執行役員CFO 庄司 敬央様>

株式会社農業情報設計社

・農業情報設計社の事業内容

農業情報設計社は、「新しい農業へのチャレンジを支える」をミッションに掲げ、「アプリで誰でもスマート農業を行えるサービス」を提供しています。

トラクターに関するソリューションを提供しており、トラクター版のカーナビのようなサービスです。

農業情報設計社の事業内容は、

・農業者向けのアプリの開発・提供 
・農業機械通信機器の開発・製造・販売
・農作業情報ハブサービスの開発 提供

となっています。

・Agri Busシリーズについて

農業情報設計社では、AgriBusシリーズとしてGNSSガイダンスアプリ・自動操舵システムを提供しています。GNSSガイダンスアプリは、ダウンロード数が185万DLを記録しており、90%が海外ユーザーとのことです。


Agri Busシリーズ

【GNSSとは】
GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)は、米国のGPS、日本の準天頂衛星(QZSS)、ロシアのGLONASS、欧州連合のGalileo等の衛星測位システムの総称です。

(国土地理院)

・誰でも気軽にスマート農業を実現するためのソリューション

農業情報設計社は、誰もが気軽にスマート農業を行うためのサービスとして、GNSSを利用したトラクターで「真っ直ぐ等間隔」に作業を行うためのアプリとデバイスを提供しています。

トラクターを真っ直ぐに走らせることができたり、アプリを基盤に、WEB上のデータ管理システム、アプリの位置情報をより高めるデバイス、トラクターを手放しで操作できるオートステアなどのラインナップとなっています。

昨今の社会環境とスマート農業ソリューションについて、庄司様は

・就農人口の減少、少子高齢化
・世界情勢における肥料・燃料・資材費の高騰

といった課題を抱えており、農業の効率化を実現するスマート農業のニーズが高まっているのではないかと言います。

・なぜトラクターなのか

それでは、なぜトラクターにフォーカスしてサービスを展開しているのでしょうか。

それは、トラクターを操作することの難しさにあります。

トラクターを真っ直ぐに走らせることができないと、何度も通る場所と通らない場所が発生してしまいます。その結果、肥料を散布しすぎたり、種をまくことが出来ないエリアが発生します。このような作業の重なり・空白の発生は、生産ロスや過剰な肥料が原因で作物が病気になり、作物の収量・品質に大きく影響してしまいます。そのためトラクターを真っ直ぐ走らせることが非常に重要です。

しかし、トラクター操作の精度は作業の熟練度に依存しており、広い敷地で真っ直ぐにトラクターを走らせることは初心者には困難です。

・AgriBusシリーズにより作業を効率化

そこでAgriBus-NAVIによって、トラクターが進んだ道筋を可視化することによって、トラクターの操作に不慣れなかたでも真っ直ぐ・等間隔に進むことをサポートします。


AgriBus-NAVIとAgriBus-Web

また、データを蓄積できるAgriBus-Webにより作業結果を今後に生かすこともできます。

・海外を中心に導入が進む

AgriBusシリーズは、AgriBus-NAVIを中心に海外での導入が進んでおり、そのうち3割はブラジルが占めています。またヨーロッパ、南米、アメリカの一部でも利用されており、アフリカでも実証実験中とのことです。

このように、幅広い国で利用されていることからも、誰でも簡単に利用することができることが伺えます。

今後はアプリに留まらず、適切な作業時期や生産性向上に資する指数の提供や作業状況に連動した指数を国別・地方別/作目別に算出・提供も行っていきたいとしています。


■3社目:株式会社トクイテン

3社目は、トクイテン 豊吉様にご登壇いただきました。

<株式会社トクイテン 代表取締役 豊吉 隆一郎様>


株式会社トクイテン 代表取締役 豊吉 隆一郎様

・トクイテン社の事業内容

トクイテン社は「持続可能な有機農業へのシフトを加速化させる」をミッションに掲げています。

そこで、有機栽培をロボットで全自動化することを目指し活動しており、現在は愛知県で直営農場を設立し、ミニトマトの栽培をロボットで全自動化に向けて研究を行っています。

・解決する課題と農業の収益構造

豊吉様は、農業では人手不足が深刻で、さらに気候変動や農業資材価格の変動が原因で、有機農業へのシフトチェンジが進んでいないと言います。

しかし、人手不足・少子高齢化などの課題がある一方で、スタートアップとしてのチャンスもあると言います。

有機市場はこれから10倍以上に成長するとされており、消費も増えています。アメリカで消費されている野菜のうち12%が有機野菜です。そして、日本はそのアメリカの1/10の量しか消費されていません。


有機市場の成長

そのため日本の有機野菜の消費がアメリカと同じレベルになるには、約1兆分の有機作物を栽培する必要があります。

しかし、有機作物はだれでも作れるわけではありません。

・有機作物が供給できない理由

有機作物を栽培するには

・水耕栽培・植物工場は不可。土耕栽培も2年の転換期間が必要
・栽培技術が違う
・手間がかかり、かつ高齢化で採用が困難

などの制限があります。

有機作物にも、国際的な法律が定められており、日本では有機JASがそれにあたります。

・化学肥料を使わない 
・農薬を使わない

上記のように、有機作物を栽培するには、有機JASが定めた条件を満たす必要があります。

・トクイテン社のビジネスモデル

トクイテン社はこのような制限のある有機栽培を全自動化し、有機農業へのシフトを加速化しようとしています。

そこで、トクイテン社ではロボット農場の直営パッケージの提供の二つのアプローチが行われています。

2,000平米の直営農場では、現在はミニトマトを栽培しています。直営農場は今後も拡大していく予定とのことです。

現在準備中のパッケージ提供では、有機農業の自動化を実現する「トクイテンパッケージ」を開発し、スマート農業のためのロボット、環境整備の仕組み作り、有機農業の技術の提供などを行う予定です。


トクイテン社が提供するパッケージ

このトクイテンパッケージにより

・収穫量を2倍に増加
・人件費を50%削減

することを目指しているそうです!

・自社開発ロボット「ティターン」

トクイテン社のサービスのカギとなるのが、 遠隔制御で農作業を自動化する農業ロボット「ティターン」です。

農業は1年に数回しかない作業も多く、収穫以外にも、モニタリング、運搬、収穫、葉かき、防除、薬剤散布など多くの作業を必要とします。

そこで、ティターンはパーツを付け替えることで様々な農作業に対応できるように開発されています。

ティターンによる収穫は50%の成功率を目指しており、100%の収穫を目指すのではなく、全体最適を実現することで、農作業を効率化していきたいと豊吉様は言います。

拡張機能パーツを交換することで様々な農作業に対応していく予定だそうです。

・今後の計画

ピッチでは今後の予定についてもご紹介していただきました。

トクイテン社では、3月より

・有機ミニトマトの出荷開始
・農場での収穫ロボット稼働開始

することを予定しており、来年以降は

・直営農場の拡大
・パッケージ販売先の開拓
・ミニトマト以外の作物への展開

などを実現することを目標にしているとのことです。

■4社目:株式会社CuboRex

4社目は、CuboRex 嘉数様にご登壇いただきました。

<株式会社CuboRex 代表取締役 嘉数 正人様>

株式会社CuboRex 代表取締役 嘉数 正人様


・CuboRex社の事業内容

CuboRex社はスマート農業事業者に向けてサービスを提供しています。

スマート農業のために、ロボット開発を行う際に、CuboRex社のサービスを使用することで、簡単に開発することができます。

CuboRex社はその中でも、

・農業
・土木建設
・太陽光発電所
・プラント

などの、舗装・整備されていない土地で実施される不整地産業の作業を楽にする機械化を推進しています。

・CuboRexのコア技術 

CuboRex社のコア技術は、あらゆる機器に不整地を踏破できる”足”です。CuboRexが提供する「足」を利用することで、整備されていない土地でも自由に移動できるようになります。

その一つが、E-cat kitです。E-cat kitは農地や工場現場で使用される一輪車を電動化します。市販されている、一輪車のタイヤをとりはずし、E-cat kitを取り付けることで利用できます。


E-cat kit

農業では特に、果樹園などの中山間地農業での導入が進んでいるそうです。中山間地農業では、坂道が多い、道が狭いなどの問題があり、人の移動に労力を使います。そこで、E-cat kitを取り付けることで、簡単に移動することができるようになります。

また、CuGoシリーズのキャタピラ型の移動装置も注目されています。小型軽量ハイパワーといった特徴があり、車を牽引することも可能です。

一輪車電動化キット、不整地ロボットの開発キットが好調で、

一輪車電動kit E-cat kitは3年間で累計1,200セット販売しており、来年は年間1,500セットの売り上げを目指しているそうです。
CuGoシリーズも3年間で累計800ユニット販売しており、来年は年間1,000ユニットの販売を目指しているとしています。

・CuGoROS開発キット:2022年秋発売

CuGoROS開発キットはロボット開発そのものを簡単にします。CuboRex社の小型軽量キャタピラ走行装置の上に、PC・センサー類を含めた防水・防塵のパッケージを搭載しています。

ロボットを開発する事業者は、このキットを購入すると、ソフトウェアエンジニアを揃えるだけでロボット開発することができるようになります。

・大企業との協業、エコシステム構築&技術提携

CuboRex社はさらに、大企業との協業、エコシステム構築、技術提携を進めています。
協業の一つ目は、共通バッテリーシステムの研究開発です。これは、リチウムイオンバッテリーを、CuGoシリーズ商品や、他社の警備・収穫・運送といったロボットのバッテリーに利用できるサービスです。

さらに、超軽量でハイパワーな超薄型新技術モーターの開発も進めています。

・独自の事業開発サイクル

嘉数様は事業開発において

①要素技術のユニット化
②ユーザーによる現場活用
③サービスロボットの事業化検証

のサイクルがポイントであると言います。

エンジニアリングに優れたユーザーが、それぞれの用途に応じて利用でき、現場で利用されることで、より確かなニーズを発見し、事業開発に活かすことで人々に求められるサービスを開発することができます。


CuboRex社独自の事業開発サイクル

このサイクルを回すために、CuboRex社では、モーターやバッテリーの開発から行っています。

・大企業と協業、人目につかないサービスを提供

CuboRex社は

・プラントにおける除草剤散布ロボット
・プラント清掃サービスロボット

など他にも大企業と協業しています。

確かな技術力や企画開発力をもつCuboRexと共に新製品を出すと新市場に手を伸ばしやすいメリットがあるため、CuboRex社に注目が集まっています。

まとめ

今回は、スマート農業の代表的な4社のお話をお聞きしました。

私たちの生活に欠かせない食ですが、生産現場の少子高齢化や人手不足が深刻です。そこで、今回ご紹介したようなサービスが活躍することで、課題解決になるだけでなく、農業がもっと魅力的な業界になる予感がしました!

スマート農業のサービスが普及した世界は非常に楽しみですね。

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます。

引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!

>>今後のドコモ・ベンチャーズのイベントはこちら


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