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12/8開催【ドコモベンチャーズセミナー】インパクト・ESG投資の最新潮流~SDGsとの関係性から今後の展望までを語る~

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2022年12月08日(木)に行ったイベント、

【ドコモベンチャーズセミナー】インパクト・ESG投資の最新潮流~SDGsとの関係性から今後の展望までを語る~

についてレポートしていきたいと思います!

今回はゲストとしてGLIN Impact Capital社の代表パートナー 秦 雅弘様をお招きし、昨今盛り上がりを見せるインパクト・ESG投資の概要や最新動向についてお話していただきました。

  • インパクト・ESG投資に興味のある方

  • SDGsに興味のある方

  • インパクト、ESG、SDGsそれぞれの用語の関係性を知りたい方

  • 新規事業、オープンイノベーション等をご検討されている方

にぜひお読みいただきたい内容となっております!

<GLIN Impact Capital 代表パートナー 秦 雅弘 様>


GLIN Impact Capital 代表パートナー 秦 雅弘 様

■経歴/自己紹介

GLIN Impact Capitalの代表パートナー。
三菱商事で事業会社の経営再建に従事した後、ブラジル駐在経験をきっかけにサステナブルファイナンスに興味を持ち、ハーバードビジネススクールへ留学。
Anzu Partners(米国VC)やJAFCOでスタートアップ・グロース投資に携わると共に、インパクト・ESG投資に関する知見を深める。
ビジネススクールを卒業後、GLIN Impact Capitalを創業し現職。
インパクト志向金融宣言におけるベンチャーキャピタル分科会の座長も務める。

・GLIN Impact Capitalの事業紹介

GLIN Impact Capitalは、インパクト投資を行うベンチャーキャピタルです。社会的インパクトと経済的リターンが相乗効果を出しながら成長することができる、サステナブルな資本主義の実現を目指し、以下をミッションとして掲げています。

課題認識
・短期的経済利益のみを追求する資本主義の仕組みが社会課題を増大させている側面を学ぶ

ミッション
・経済成長とともに社会課題が自律的に解決される「よりサステナブルな資本主義へのアップデート」に貢献すること
・その実現に最も有効な手段としてのインパクト投資を発展させること

同社は、社会課題の解決に取り組むミドル・レイターステージの未上場企業を対象に、投資をおこなっています。また、グローバル視点から捉え直した日本の社会課題を投資領域としています。

投資領域の例
①世界に先駆けて日本が直面する問題
・少子化(労働力不足、社会保障、過疎化)
・高齢化(介護負担、高齢者の生きがい)
②世界に遅れて日本が直面する問題
・女性社会進出/賃金格差
・多様性社会(外国人/障がい者労働、LGBT)

・ESG投資について

ESGは、E(Environment、環境)、S(Social、社会)、G(Governance、ガバナンス)の観点を指します。この3つの観点を通して、企業の将来性や持続性などを分析・評価し、投資先企業を選別します。ESG投資とは、これらの要素を投資判断や積極的なオーナーシップに取り入れた投資のことです。

環境の観点
・脱炭素
・資源
・再生可能エネルギー
・生物多様性
・水の利用
など

社会の観点
・強制労働
・地域との関係
・従業員健康と安全
・サプライチェーンと労働管理
など

ガバナンスの観点
・取締役会構成
・企業倫理
・所有と経営の分離
・会計リスク
・不正の防止
など


ESG投資とインパクト投資

ESG投資は、企業がその製品・サービスを生産するという一連の流れの中で、以下の通り社内のオペレーション部分に関わる投資を指すとグローバルの実務者の中では線引きされつつあります。

・原料を調達するまでの調達先の管理(サプライチェーンにおける児童労働・強制労働など)
・原料調達後の自社生産、自社社内管理、自社意思決定の仕組みなど(自社生産活動時の環境汚染、労働問題、男女賃金格差など)の管理

2010年代後半から、環境問題、社会課題の深刻化に伴う法整備や国際イニシアティブの動きにより、ESG投資の拡大が加速しています。

・なぜESGなのか

ESG銘柄の資本供給の増加

①ESGが出資条件になりつつある
世界のESG投資規模は年25%成長と急拡大し、資産全体に占めるESG投資の割合は約40%まで増加しています。実際、ESGスコアが高いほど株価のパフォーマンスが高い傾向にあるそうです。
 
②ESGと企業業績との間に正の相関関係
ESG対応が出来ている企業のほうが優れたパフォーマンスを出しているという研究も出てきています。ESG 対応をすることで、優秀人材の確保・維持、サステナビリティ志向の高い購買行動、規制の回避等が実現され、企業業績を向上させていると考えられています。

ESG対応の効果(例):
社員エンゲージメントの向上や優秀人材の維持・獲得
→サステナビリティは企業にとって、労働市場において価値を高める機会とも、価値を損なうリスクともなり得る
→若い世代ほど、働く場所を選ぶ尺度として社会的意義を重要視するようになっている
消費者の購買活動におけるサステナビリティの高まり
→約9割の消費者が、同じ価格・品質であればサステナブルなブランドを購入する、と回答した調査もある
→過半数の消費者が環境・社会に配慮しないブランドの商品購入をやめた、と回答した調査もあり、実際に購買行動の変化が見られている

・インパクト投資について

インパクト投資とは

インパクト投資とは、経済的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトを生み出すことを意図する投資のことです。

企業がその製品・サービスを生産するという一連の流れの中で、

製品・サービス販売後、それらが社会にもたらす影響
→二酸化炭素を排出しない自動車、女性社会進出を促す就労支援サービスなど
それらが二次的にもたらす影響
→直産ECにより増えた地方と都市部の関係人口の増加により地方訪問人数が増え地方創生に繋がるなど

に関わる投資を指します。


グローバルで急拡大するインパクト投資

インパクト投資は、現在グローバルで急拡大中です。

事例:
・テクノロジーの進化等を背景に、従来の寄附や非営利団体(日本赤十字、ユニセフなど)と異なり、営利事業を通じて社会課題解決を目指す企業(テスラ、メルカリ、ファイザーなど)が増加
・既に欧米を中心とするインパクト投資の本格化


インパクト投資のリターン

加えて、インパクト投資のリターン実績は着実に積み上がってきています。

・インパクト投資ファンドはマーケットを上回る経済的リターンを達成
・インパクト投資家の88%が経済的リターンの期待値に沿った実績を出し、また99%が社会的リターンの期待値を達成

実際に、欧米ではインパクト投資が本格化しています。大型インパクト投資ファンドも誕生しており、グローバルのインパクト投資残高は約150兆円となっています。

一方で、日本のインパクト投資残高は約1.3兆円と限定的です(2021年度)。その主な要因は、「社会に良いことは儲からないという共通認識」「ファンドマネージャー不足」「IMM方法の発達不足」などがあります。
  
しかし、日本でも、政府の積極的な働きかけにより2021から2022年にかけて、インパクト投資が急発展を遂げています。

・2021年11月:インパクト志向金融宣言発足(岸田政権「新しい資本主義」)
・2022年2月:金融庁がインパクト指標を発表
・2022年6月:内閣官房「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の発表。インパクト投資の推進を言及
・2022年6月:経団連がインパクト指標例公表


・企業に求められるESG対応

ステークホルダー資本主義における企業は、ESGにどう対応していけばいいのでしょうか。それは、以下のプロセスを通して、企業の社会的価値向上と経済的価値向上を両立させることです。

ESG対応のステップ:

ステップ1
ステークホルダーが自社にどのようなESG項目への対応を期待しているかを把握(投資家、取引先、従業員、地域社会等からの期待)

ステップ2
ESG項目の自社の事業成長への重要度も踏まえ、ESG経営を推進する上で特に意識すべき重要事項(=マテリアリティ)の特定

ステップ3
マテリアリティを踏まえ、自社の事業成長とステークホルダーの期待に応える事を同時に実現するESG経営を推進(コアビジネスにおける取り組み)

ステップ4
ESGに関する自社の方針・取り組みを効果的に開示

結果としての企業価値向上
・ESG Indexへの選定
・ESG資金の流入
・優秀な人材のリテイン・採用
・売上増加、コスト削減、規制回避

マテリアリティマップ

特定されたマテリアリティは、マテリアリティマップという形で整理・公開されることが多いです。マテリアリティマップは、縦軸を社員や顧客、サプライヤー、株主、地域社会などステークホルダーにとっての重要性、横軸を事業成長における重要性としています。右上の象限に示された項目が、会社の成長やステークホルダーにとって重要で注力すべきESG項目となります。マテリアリティは、いわば会社のESGに基づく中期経営計画であると言えます。

特定されたマテリアリティに対してKPIを設定し、取り組みを推進していきます。また、ESG情報を効果的に開示することも重要です。ホームページ(サステナビリティ・ESG経営ページ)やサステナビリティレポートを通じて、現状の取り組みや定量KPIなどを開示します。

このようなプロセスを経てESG経営が推進された結果、売上増・コスト減や優秀人材の確保等を通じて業績向上が実現され、またESG Indexへの選定等を通じてマルチプルが向上することで、企業価値が向上されます。

・インパクト投資のガイドラインとその事例


社会的インパクトの測定・管理手法例

社会的インパクトの可視化・測定・管理は、シンプルに申し上げると、

1.アウトカムを特定する
2.特定したアウトカムに指標を設定する
3.指標を測定した上で、PDCAを回して事業とインパクトをさらに成長させる

の3ステップで行います。アウトカムは、商品やサービスによって引き起こされた個人や社会への変化を指します。
現在、社会的インパクトを可視化・測定するために様々なフレームワーク・ツールが存在していますが、今日はその中からよく使われている3つをご紹介します。

・ロジックモデル
アウトカムを特定するためのフレームワークとしてよく使われているのが、ロジックモデルです。ロジックモデルは、事業活動がどのようにインパクトを創出しているのかを整理したものでです。上記の簡単な例に示される通り、事業活動はActivity(活動)、事業活動によって生み出された直接的商品やサービスはOutput(結果)、商品やサービスによって引き起こされた個人や社会への変化はOutcome(成果)と整理されます。

・5 Dimensions of Impact
ロジックモデルを整理する際やアウトカムを分析する際に使われるフレームワークが5 Dimensions of Impactです。以下の5つの観点に沿って、事業が生み出すインパクトを多面的に分析します。

1.What 
事業がどのようなアウトカムを生み出しているか?そのアウトカムはポジティブかネガティブか?そのアウトカムは受益者にとってどの程度重要か?

2.Who 
アウトカムの受益者は誰か?その受益者はこれまでそのアウトカムをどれくらい享受できていたか?

3.How much
アウトカムの規模、深さ、期間はどの程度か?

4.Contribution
当該事業はアウトカムを生み出すのにどれだけ貢献しているか?

5.Risk
アウトカムが創出されないリスクはどの程度か?

 

・IRIS+
IRIS+は、特定したアウトカムに対して指標を設定する際に、よく参照されるグローバルの指標カタログの1つです。新たに指標を追加出来る拡張性があることも特徴です。設定した指標の変化を追うことで事業が創出するインパクトを計測する為、指標の設定は非常に重要なプロセスとなります。

Q&Aセッション

Q1
社会的インパクトは、データ等を使って定量的に計測できるのか?

A1
計測できる。前述のアウトカムに対して指標を設定し、その変化を追うことで社会的インパクトを計測する。計測されたインパクトを、貨幣価値化する動き(インパクト加重会計)も出てきている。

Q2
「社会のためになる事業は儲からない」という固定概念があるとのことだが、それに対する秦様ご自身のご意見を伺いたい。

A2
テスラやメルカリなど、社会のためになる事業でも儲けることができるという事例が出てきているので、この固定概念は少し古いというのが私の意見。また、たとえば、貧困領域など、受益者が支払うことのできるお金が少なく従来は儲かりにくいとされてきた事業でも、最近ではテクノロジーの発展に伴って経済的リターンが実現できるようになってきている。

Q3
GLIN Impact Capitalでは、ベンチャーキャピタル事業だけではなく大企業のESGコンサル事業もされているということだが、それはどんな内容か。

A3
複数の支援内容があるが、これまでニーズが特に高いものは、マテリアリティの特定支援と、ESG情報の効果的な開示支援。

Q4
GLIN Impact Capitalのインパクト投資におけるリスク・経済的リターン・社会的インパクトの三つの評価の比重をお伺いしたい。

A4
経済的リターンと社会的インパクトの比重は同じ。リスクは経済的リターンと社会的インパクトの双方に影響を与えるものと整理している。ファイナンシャル観点とインパクト観点のどちらの投資判断基準も満たした案件にのみ、投資を行っている。

Q5
インパクトと利益の創出を両立させるのは難しいのではないか。また、それを両立するために重要なことは何か。

A5
インパクトは、顧客の潜在的・顕在的ニーズと繋がっている部分があると思っている。「課題があるところにビジネス機会がある」と言われるが、それがインパクトと利益の重複する部分だと思う。なので、インパクトと利益の創出を両立するために必要なことは、社会課題を解決するという意図をしっかり持ちながら、どのように事業を通じてその課題を解決できるかを考えること。それが自然とインパクトと利益の創出の両立につながると思う。

Q6
障がい者雇用に関する情報開示の現状と今度の予測について、どうなっていくと予測するか。

A6
この分野が専門ではないため、一個人としての意見として述べさせていただく。現在既に、ESGの情報開示の一環として、障がい者雇用に関する情報開示を行う企業は多いと思う。開示項目についてはまだ限定的だが、今後は開示される項目も増えていくと予想している。もちろん企業の能動的な開示のみならず、規制面からも開示項目が整理されていく側面もあると思っている。

Q7
なぜ海外ではEGSインパクト投資のマーケットが進んでいるのか。政府援助か、それとも企業主体か。 

A7
どちらのケースも見られる。たとえば、イギリスでは、政府による支援により積極的にインパクト投資が推進されることで、マーケット拡大につながった。一方、アメリカでは、財団などの支援から民間に拡大していった。
 
 

まとめ

今回は、インパクト・ESG投資の最前線を走るインパクト投資ファンドのお話をお聞きしました。インパクト・ESG投資での日本の発展が楽しみですね!

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!

引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!

>>今後のドコモ・ベンチャーズのイベントはこちら

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