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『哀れなるものたち』の空を考察

背景画なのかCGなのか被写界深度なのかもわからない背景美術。
単に美しいから良いというだけでなく、単純な心象表現技法を超越して、感情に直接作用してくる。圧倒されてしまった。

撮影技法を想像するに、背景画にしろグリーンバックにしろスタジオでの撮影になるはず。
言い換えれば「箱庭内」での撮影なわけで、ベラを監禁している状態になる。

印象的だったシーン、森に出かけた時のボヤけた背景、リスボンの空、アレクサンドリアの遠景、船から見る海と空。
このデフォルメはベラから見た世界なのか、観測者たる私たちを風刺したのか、それとも全くそれ以外の意図なのか、しばらく悩んでいたが「スタジオ=箱庭」と考えてみると少し整理がついた。

これらの景色はまだ「ベラが誰かに見せられている景色」にすぎない。自分からの希望はあれど、誰かに連れられて来た場所での出来事。見た景色。
僕は修学旅行で初めて原爆ドームを見た時、ディズニーランドのトムソーヤ島の様な質感に興醒めをした。自分はこの遺産から学ぶべき本当の出来事を何一つ肌には感じることが出来ない事にがっかりした。

アレクサンドリアを後にしパリで降ろされた後、空の描かれ方が変わっていく。
リアルに近づいたパリのセット。屋外に造られたのだろうか。常に曇天で雪も降り建物も多いが、空を広く感じる。
結婚を約束し湖を歩くシーン。背景のピンぼけが緩くなった様に感じる。
一方でブレシントンの屋敷の遠景は精巧な模型の様に映る。

ベラの自由意志によってたどり着いた場所、そこから世界が広がりゆく。

ラストシーン、ゴット邸の庭で優雅に過ごすベラ。かつての箱庭だが、引きの画になってもその像は歪まない。

さ〜てここまで書いて答え合わせだぞ〜

パリはスタジオセットでした!
残念!
ちゃんと観てんのか馬鹿野郎!
すみませんでした!もう一回観てきます!!

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