世界中のパソコン君が妄想した理想像を綺麗に描かれて咽び泣く限界中年男性の感想文
『きみの色』観てきました。
「なんかギターがあれで楽器屋とかでも宣伝してっから何も調べないで行ってみっぺ~」ってテンションで行ってきました。
ぶっっっっさされました。4回泣きました。『水金地火木土天アーメン』のイントロで2回。
ルイ君がパソコン君の完成形すぎる。
音楽には興味あるけど友達がおらんくて始めるきっかけがなくて、
いつか音楽やりたいなーって思いながら中古屋さん巡ってお小遣いで機材買ったりして、
ぼろいパソコンにフリーのDAW入れてみて使い方はわかるんだけど、
家にあった楽器を個人練したりするんだけど、
やっぱり友達いないからバンドやる機会も発表する機会もない⋯
この要素に顔真っ赤で共感する隠キャ男性は山のようにいるだろう。
でも!
俺みたいな隠キャ根暗DT妄想男は!
本屋でバイトしてるJKにバンドやろうとか言えん!
メールでしばらく行けないって言われたら凹んで引きこもってなんか悪いこと言っちゃったかな⋯とか言い出す!!会えない間にバックトラック作るとかしない!!
泊まって行きなよとか布団用意してあげる甲斐性もない!!!
そもそもあんな上手にテルミン弾けるまで練習しない!!!!!!!
共感性とフィクションのバランスとギャップが僕の尊厳を破壊していく。
クソ強い少年が実は宇宙人でした~って話なら、読者は尊厳を守られながら設定への納得を得ることができる。
ワンパンで誰でも倒せるにーちゃんが毎日筋トレしただけです~って話なら、俺の努力不足だな〜で済む。
ゴム人間が惨敗して仲間守るために強くなるぞ!って話なら、俺も頑張るぞ!と鼓舞される。
でもルイ君はそうじゃない。
オリジナル作ってみたい!って言い出しっぺするんだけど1番作曲遅いの、わかるよ⋯
でもさ、『水金地火木土天アーメン』のメロ貰ってイントロこれ付けれるのはさ、お前はこの曲を何回反芻したんだって⋯
ルイ君は、僕にあって貴方に無いものは隣人愛ですよって僕に教えてくれた。
明日からどう生きていけばいい⋯
”汝、隣人を愛せよ”
トツ子、きみちゃん、ルイ君、それぞれが家族や友人に対して絶妙な距離感で接している。
それは「相手に心配をかけないように」という優等生思想があってのことで、実際それが必ずしも間違っていることではないし、親や先生から優等生やめい!なんて言えることでもない。
トツ子は他人に対して“憧れ”を持つタイプで、それは愛よりも少し距離が遠く、
きみちゃんは友人にすら心配をかけまいと気を使いすぎ、双方向の愛を持てず、
ルイ君は兄を含め同世代に関わる機会がそもそも少なかった。
3人が偶然出会い仲を深めて行く。初めて仲間ができたルイ君の真摯さによって愛の距離を、愛の方向性を実感して行く。
日吉子先生がきみちゃんの退学を卒業と表現する。
いくら優秀であっても、隣人愛を理解できるのは学校を卒業したもっと後なんだと、先生にはわかっていたのかもしれない。
おばあちゃんがステージ上のきみちゃんに「愛してるよー!」と叫ぶ。
彼女が孫に与えるものは弁当でも夜ご飯でも学歴でも賞賛でもない。
彼女には隣人愛というものが息づいているんだろうな⋯
最近はやんちゃ主人公が流行らないらしい
今の若い世代は優等生思想が強く、主人公がやんちゃすると共感できなくなってしまうため流行らないらしい。
優等生の圧に自分がわからなくなった高校生というキャラクターデザインはかなりキャッチーだと思った。
そんな高校生がちょっとした事件がありながらもバンドを組んで成長していく。それ自体はよくあるプロットだ。
ただし、起きる出来事がとにかくリアリスティックで等身大である。平成中期だったら主人公のどれかは重病で卒業直前に死ぬ!もっとテクい音楽やってる!事件がリアリティだからこそ3人の誠実さが浮き彫りになる。
音楽が難しすぎないからこそ3人の実直さが浮き彫りになる。
3人で作った3曲が本当に素晴らしい。
もしかしたら高校生が一生懸命作ったらギリギリ作れそうなサウンド、でもこのクオリティに詰め切るまでチームワークを組める真摯さが音楽から演奏から伝わる。
先生へ、両親へ、大人たちへよく見せよう、心配をかけないようにと優等生をやる。
そうじゃなくて、隣にいる友人と愛を育むんだ。
3人それぞれの想いを込めた曲に、3人それぞれが共鳴して生まれる心地よい干渉。
緞帳が上がり、ステージの壁にささやかに書かれた「You shall love your neighbor as yourself.」を見た時、(あぁやはりそういうことか⋯)と落胆に近い感動をして涙が流れた。
ステージで演奏する3人を観る同級生や大人たちを見て、虚勢の為の虚構が本当に虚であって、そこにあるのは隣人愛とその延長であることに気づく。
トツ子の色
RGBは光の三原色。3色重なると白になる。
トツ子が時折見せるホワイトアウト。
トツ子の本当の色は白色だったのではないか?
誰にでも合わせられるから、色が見えない白色光。
青と緑の2人と一緒になって、いつしか赤という色を得た。
白猫堂の3人合わせて白く輝くように。
妄想考察です。()
エンディングのテープ感良すぎねぇ!?
3人はまた再会できたのかな?Sound○loudには曲増えたのかな?
そんな事を知りたくて堪らないのに、ポスクレで流れるのはテープ録音された『水金地火木土天アーメン』のラジカセ録音バージョン。
いやテープ感良すぎるだろ⋯
どうなんだろ。再会したのかな?
でももしかしたらなんとなく疎遠になっちゃうのかも。
そういうのもいいよね⋯
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