pontoとŝipo

友人がクラウドファンディングでCDを出そうとしているので、まず宣伝を。

Anti-Trenchというポエトリーリーディング(音楽に乗せた詩の朗読)をやっている二人組で……人柄ではなく作品を説明しようとするとどうにも自分には力不足な気がするから、記事の最後に載せたYoutubeのMVを見て判断してほしい。


……で、発売予定のアルバムのタイトルがpontoŝipo、これエスペラントやん! ということなので今日はpontoにまつわる短い話をします。
(こういうの、いかにもエッセイっぽいな)

Amiko el Thajlando

ちょうど去年の今頃から、私はエスペラント用のTwitterアカウントを使っている。言うまでもなくことのはアムリラート(名作百合ゲーなので絶対にプレイしましょう)影響で、9月頭にプレイを始めて2週間くらいでクリアして、その勢いのままエスペラント語の習得に手を出そうとしたわけだ。

(ちなみにそのアカウントは今や私のためのインスタグラムと化している。いちいち辞書を引くのは面倒くさかったし、TLを追うのにも頭を使う必要があったから、早い話が飽きてしまったのだ。世界中の友達は日本の美しい街並みや美しくない街角を興味深そうにいいねしてくれるし、年末や祭日にちなんだ話も反応がいい。自分にとって程よい、気楽な距離感がこれだったのかもしれない。)

そんな感じで今やだらだらと運営されているアカウントだけど、実は一度だけフォロワーとオフ会めいたことをしたことがある。去年の12月のことだ。タイに住んでいる友人が、急に「来週京都を観光にするんだけど、もしよければ案内してくれないかな?」とDMをくれたのだ。女子力マシマシな画像ばかりツイートしていたこともあって、顔を見せるのは少し躊躇われたけど(実際向こうも私を女性だと思っていたらしい)、ここは京都人の意地の見せ所だ。来客をもてなすためなら少しの苦労は惜しまない。まして友人相手ならなおさらである。

そしてやってきた当日、タイ人の彼と日本人の女性(京都に住む少し年配の女性だ。お淑やかな印象ではないけれど、とにかくよく笑う。笑い上戸なお年寄りは、それだけで上品と言っていい)と私の三人で、京都大学の時計台で写真を撮ったり、中の記念展示を見たり、食堂で時間を潰したり、エスペラントサークルで食卓を囲んだりした。

pontoと出会ったのはちょうど展示を見ている最中だった。
日本家屋の展示だったか寮の展示だったか、とにかく畳敷きの部屋の展示がその一角にあった。「そういえば畳ってタイにもあるの?」「あるよ。すー↓よー↑って発音する」「すー↑よー↓?」「いや、すー↓よー↑」……
彼によると、すー↓よー↑がタイの畳の正しい発音で、すー↑よー↓だと(たしか)伝統的な衣服を表す単語になるらしい。同音異義語ってやつだ。

「同じ発音で別のもの。そういうの日本にもあるよ」
「へえ、どんなの?」
「はしとはし。関西ではアクセントは同じなんだけど、片方はmang^ilo(食事道具)の一種で、エスペラント語でなんて言うかは知らないけど、英語だとチョップスティック」
学び始めて3か月ということもあって、私の会話はぎこちない。特に語彙が壊滅的だ(そして今でも改善されていない)。うまく説明できるきがしないな……と思った。話し始めてしまったものは仕方がないから、「……で、もう一方のはしは橋で、川を渡る時のアレなんだけど」と言おうとして、そこで嫌な予感は的中した。
「英語で言うbridgeってエスペラント語でなんて言うんだっけ?」


話は飛ぶけど、京都市内には先斗町という地名がある。三条大橋の付け根にある、川沿いの町だ。私がこの地名の読み方を知った日の夜に、急に彼から「明日京都で会えない?」と連絡が来たことを、私は今でも覚えている。
「そういえば京都には"ぽんとちょう"って名前の町があってさ……」

人工言語で歴史の長くないエスペラント語は、全ての単語で表記と発音が1:1対応している。だから、次に会うときには、難読地名の概念について彼と話してみたいものだ。




……というわけで、Anti-Trenchをよろしくおねがいします。


(↓こちらは作詞/朗読の向坂くじらのエッセイ)


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