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働きがいや働きやすさと株価パフォーマンス,業績の関係

どうも,ストッポです!

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今回は,従業員の働きがいや働きやすさと株価パフォーマンスには関係があるのかどうか?業績に関係があるのかどうかについて解説したいと思います!

これが株価パフォーマンスや業績に影響するのであれば,アンケート調査などから投資対象を絞り込むことができますし,有用でしょう。


1.はじめに

結論からいうと,従業員の働きがいや働きやすさと株価パフォーマンスや業績には正の相関があります

つまり,働いている人達が,「働きやすい!」,「やりがいがある!」と感じている企業ほど株価が上昇しやすく,業績も伸びやすいということです。

では,その根拠となる論文やデータを紹介していきましょう。

2.働きがいや働きやすさと株価パフォーマンス,業績の関係のエビデンス

2-1.働きがいと株価パフォーマンスの関係

Edmans[2011]は、従業員の仕事満足度と企業価値との関係を検証しました。
その結果,「100 Best Companies to Work for in America」の企業は、明らかに株価リターンが高いことを示しました。

なんと,そのような企業は同業他社よりも2.4~3.7%も高い年間リターンを生み出していたのです。つまり,従業員の仕事満足度が企業価値と正の関係にあるのです。

また、「最優秀企業」は、ポジティブな収益サプライズとアナウンスメント・リターン(サプライズ発表によるリターン)が有意に多かったとしています。

山田ら[2017]では,日本経済新聞社「働きやすい会社ランキング」と企業業績との関連を分析し,ランキング上位企業の株価パフォーマンスがその後数年間にわたって有意に正であることを示しています。(下記のSMBファクターはSmall minus Bigで,小型に投資した際の大型株に対するリターンを示しています。)

山田徹, 臼井健人, and 後藤晋吾. "働きやすい会社のパフォーマンス." 証券アナリストジャーナル= Securities analysts journal 55.11 (2017): 75-86.

上の図を見ると,SMBに遜色ない結果で,より安定していることが分かります。なお,これは年一回リバランスの結果です。過去3年間に一度でも上位企業(100社)に入った株を保有するという方針でポートフォリオを構築した結果になります。


Symitsiら[2018]では,米国の従業員クチコミサイトであるGlssdoorの従業員満足度が高い企業で有意な超過リターンが発生することを示唆しています。

Greenら[2019]でも同様にGlassdoorの評価項目の中でも特にCareer OpportunityとSenior Managementの評価項目の改善が,株式パフォーマンスに有意な正の超過リターンをもたらすと報告しています。

西家[2022]は,従業員クチコミサイトの従業員クチコミ文章情報を用いて,「働きがい」と「働きやすさ」に関するカテゴリに投稿されたクチコミテキストを用いて,機械学習・テキストマイニングの技術用いることで,「働き方」を「働きがい」,「働きやすさ」に分けて考えて分析を行っています。

その結果,働きがいと働きやすさがどちらも改善したポートフォリオを構築し,1年間保有しリバランスを繰り返すとすると,2011年3月から2019年3月までの運用した結果,どちらも改善しているポートフォリオのリターンは統計的に有意に正でした。逆にどちらも悪化しているポートフォリオは超過リターンは観測されなかったとしています。

下記がTOPIXと比較したグラフです。時価総額加重ポートフォリオでは年率8.481%,等金額加重では年率5.724%のリターンでした。

西家宏典, and 長尾智晴. "従業員口コミを用いた働きがいと働きやすさの企業業績との関係." ジャフィー・ジャーナル 19 (2021): 79-96.


2-2.働きがいと企業業績の関係

山田ら[2017]では,日本経済新聞社「働きやすい会社ランキング」と企業業績との関連を分析し,ランキング上位企業の収益性がその後数年間にわたって統計的に有意に正であることを示唆しています。

下記は同論文からの引用です。

山田徹, 臼井健人, and 後藤晋吾. "働きやすい会社のパフォーマンス." 証券アナリストジャーナル= Securities analysts journal 55.11 (2017): 75-86.

働きやすい企業上位の企業は新規掲載銘柄も含めて,掲載年前後の収益性の指標が高い傾向にあることが分かると思います。


一方で,Greenら[2019]では,Work Life Balanceは企業業績に影響を与えないと主張しており,否定的な見方もあるようです。

最近の論文では,西家[2022]は,従業員クチコミサイトの従業員クチコミ文章情報を用いて,「働きがい」と「働きやすさ」に関するカテゴリに投稿されたクチコミテキストを用いて,機械学習・テキストマイニングの技術用いることで,「働き方」を「働きがい」,「働きやすさ」に分けて考えて分析を行っています。

その結果,従業員の働きがいの改善と働きやすさの改善は,少し遅れて企業の成長性と収益性に影響を与えることが示唆されました。また,企業のROEは従業員の働きがいを向上させることも示唆されました。

また,働きがいと働きやすさがどちらも改善したポートフォリオを構築し,1年間保有しリバランスを繰り返すとすると,2011年3月から2019年3月までの運用した結果,どちらも改善しているポートフォリオのリターンは統計的に有意に正でした。逆にどちらも悪化しているポートフォリオは超過リターンは観測されなかったとしています。


先ほど紹介した西家[2022]の論文では,従業員の働きがいの改善と働きやすさの改善は,少し遅れて企業の成長性と収益性に影響を与えることを示唆しています。また,企業のROEも遅れて従業員の働きがいを向上させることも示唆されました。

どのくらい遅れてかというと…,働きがいや働きやすさの変化が財務に影響を与えるのには2~3年,ROEが働きがいに影響を与えるのは1~2年の遅れがあるとしています。


3.働きがいのある企業ランキング

従業員満足度の高い企業に関しては、下記リンク先が参考になります。

働きがいのある企業ランキング OpenWork

2021年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング|働きがいのある会社研究所(Great Place to Work® Institute Japan)


このような企業を長期的に見てみてパフォーマンスをみてみると面白いかもしれません。


4.おわりに

最後にまとめると,企業の「働きがい」や「働きやすさ」は,企業の業績や株価に影響を与えるという研究結果が多いようです。ただし,株価リターンに関しては,まだ検証期間が短い研究が多いので,今後のさらなる研究を待った方がいいかもしれません。

ROEなどの収益性が働きがいを向上させるというのは面白いなと思いました。

働きがいがあり,働きやすい企業でROEも高いような企業があったら投資対象として検討してもよいと思います。

なお,定量的に「働きがい」などを判断するのは専門的な方法が必要となってくるので,個人レベルでは難しいので,上記で紹介したようなサイトを利用するのがいいのかなと思います。

私個人の感想としては,働きがいなどを利用した投資手法はメインの手法というよりは,サブ的に使うのが今のところはいいのかなといった印象です。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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5.参考文献

Symitsi, Efthymia, Panagiotis Stamolampros, and George Daskalakis. "Employees’ online reviews and equity prices." Economics Letters 162 (2018): 53-55.

Green, T. Clifton, et al. "Crowdsourced employer reviews and stock returns." Journal of Financial Economics 134.1 (2019): 236-251.

EDMANS, Alex. Does the stock market fully value intangibles? Employee satisfaction and equity prices. Journal of Financial economics, 2011, 101.3: 621-640.

山田徹, 臼井健人, and 後藤晋吾. "働きやすい会社のパフォーマンス." 証券アナリストジャーナル= Securities analysts journal 55.11 (2017): 75-86.

西家宏典, and 長尾智晴. "従業員口コミを用いた働きがいと働きやすさの企業業績との関係." ジャフィー・ジャーナル 19 (2021): 79-96.

西家宏典 . "従業員口コミを用いた働きがいと働きやすさの企業業績との関係." 証券アナリストジャーナル= Securities analysts journal, 2022, 60.2: 54-62.


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