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書評集

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Amazonによる家電等のステマレビュー大量削除に巻きこまれて消された書評たち。
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記事一覧

登場人物による文明批評やインテリ談義を楽しむ本。しかし過剰な露悪趣味には少々辟易…

 浅田彰の書評などで元々興味があったため手に取った。主人公は近代文学の研究者であり、無気…

Do910
5年前
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「事件」という概念をさまざまな観点から論じることを通して、ジジェク自身の思想が概…

 結構大事なことだと思われるので、まずは訳語について。eventが「事件」と訳されているが、…

Do910
5年前
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『 ハリー・オーガスト、15回目の人生』(角川文庫)

■良かった点  戦前生まれの主人公は「カーラチャクラ」と呼ばれる転生者で、20世紀の大半を…

Do910
5年前
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マンガ中心の特集:『ユリイカ 2016年11月号 特集=こうの史代』

 『この世界の片隅に』の劇場アニメ公開に合わせた特集だが、劇場版を論じているのは土井伸彰…

Do910
5年前
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ディストピアに見せかけたユートピア漫画:『オンノジ』

 『このマンガを読め! 2014』をパラパラめくっていたら目に止まったので。主人公はおそらく…

Do910
5年前
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音楽業界の今を概観するのに適した良書だが、主張はおかしい:『ヒットの崩壊』(講談…

 テレビタイアップと露出を通じた90年代のCDの売り方。そうしたCD時代の終焉と、ライブを…

Do910
5年前

「人格崇拝」と「合理化」の行きすぎが、現代人を自己コントロールの檻に閉じ込めている:『自己コントロールの檻』(講談社選書メチエ)

 本書は現代社会(といってもこのレビューの20年近く前だが)を、①〈心理主義〉、②〈人格崇拝〉、③〈マクドナルド化〉(合理化)という3つの特徴が、過剰に発達してしまった社会として捉える。社会の〈心理主義〉化とは、「さまざまな社会的現象を個人の心理から理解する傾向や、自己と他者の「こころ」を大切にしなければならないという価値観、そのために必要な技法の知識が社会のすみずみに行き渡ってきている」ことを指す。〈人格崇拝〉とは「個人の人格を尊重すべきものとみなす」ことであり、近代以降の

少なくとも、吉本隆明の思想そのものの入門書を求めている人にはまったく向かない:『…

 本書は書き下ろしでなく、語り下ろしであり、かなり散漫な内容となっている。全体的に、とに…

Do910
5年前

一見スマートな見取り図にセンセーショナルな題材が目を引くが、雑すぎる議論で台無し…

 この人の著作は前にも読んだことがあるが、ニューアカや東浩紀に影響された哲学専攻者の思い…

Do910
5年前
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行き過ぎた文化還元主義は妄想と見分けがつかない。:『砂の文明・石の文明・泥の文明…

 世界各国の文化についての豆知識は豊富なので、タメになるのはそこくらいか。  著者は文明…

Do910
5年前
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ブルデューの理論そのものに接近したい向きには全くオススメできない:『ブルデュー …

■内輪ネタばかり  著者は「その人の生と理論とは切り離せない」と主張し、昔ながらの入門書…

Do910
5年前
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「日本にとっての第一次世界大戦とは外交上稀に見る失政の連続の歴史に他ならなかった…

 本書ではまず、 2つの実戦 :日独戦、シベリア出兵 3つの外交戦:対英、対中、対米 から成…

Do910
5年前

きわめて充実した作品解説:『アニメの詩人ノルシュテイン:音・響き・ことば(ユーラ…

 『二五日、最初の日』『ケルジェネツの戦い』『キツネとウサギ』『アオサギとツル』『霧の中…

Do910
5年前

「論」としてみると少し物足りないが、入門書としては優れもの:『アンドレ・バザン:映画を信じた男』

 同時代の映画批評界の情勢とバザンの立ち位置を解説しながら、ウェルズやロッセリーニらの具体的な作品にバザンがどのように向き合っていったかを丁寧に辿っていく。それによって、バザンのリアリズム論のあらましとその展開過程が、具体的な彼の作品分析に即して理解できるという、優れた入門書である。    第1章では、オーソン・ウェルズの『市民ケーン』について、公開当時のフランスではサルトルやサドゥールらによる否定論が主流だったことが述べられる。両者による批判を紹介したあと、著者はその背景に