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新規投資|Facilo

この度 DNX Ventures(以下、DNX)は、不動産コミュニケーションクラウドを提供する株式会社 Facilo(以下、Facilo)の総額 2.0 億円のシードラウンドに出資させていただきました。本ラウンドはDNXの他に、Coral Capitalも参画しております。


Faciloが解決しようとする課題とは?

日本の不動産市場におけるコミュニケーションは非常に非効率なものとなっております。例えば、Faciloの独自分析によれば、仲介会社と顧客の間の約 2 万件のやり取りを調査したところ、「五月雨式になってしまい申し訳ございません」という特徴的なフレーズが頻出していたそうです。不動産仲介の現場では物件提案・内見日程調整・書類手配といった異なるトピックがメールで飛び交い、重要な情報が埋もれてしまっており、仲介会社と顧客の双方にとって極めてストレスの大きい状況となっております。

不動産仲介の現場ではオンラインでの集客競争が激しくなっており、集客や追客という“入口”の部分を効率化するソリューションは多く存在するものの、接客(物件提案、来店、内見)、契約など、カスタマージャーニーの後半部分に対する効果的なソリューションは存在しておりません。単純作業や非効率なコミュニケーションにより不動産仲介の方が忙殺されてしまい、価値ある物件提案ができていないという課題が存在します。

Faciloが提供する不動産コミュニケーションクラウドとは?

  • Faciloが提供する不動産コミュニケーションクラウドは、不動産仲介会社の営業担当者と顧客(物件購入検討者)がコミュニケーションをとるためのプラットフォームとなっており、両者の間でやりとりされる物件提案・内見日程調整・書類手配といった重要な情報をクラウド上に一元化・可視化するDXによって、顧客体験向上と業務生産性向上を実現するプロダクトとなっております。

  • 不動産仲介の営業担当者は生産性の低い作業に多くの時間をとられていますが、Facilo を導入することでそういった非効率な作業・時間から解放され、以下のような効果を期待でき、物件仲介会社の売上成長を仕組み化するためのソリューションとなっております。

    • 担当者ひとりがフォローできる顧客数や物件提案数の増加

    • 顧客ひとりひとりのニーズに向き合うことが可能

    • コンサルティング含めた、より本質的な物件提案に集中できる

  • すでに野村不動産ソリューションズ、三菱地所ハウスネットなどの大手から高い評価を得ており、顧客体験・業務生産性向上の実績を着実に積み上げております。約 1 年間にわたって利用企業の現場からのフィードバックをもとにしたエンハンス開発を進めておりましたが、今回の資金調達による体制整備に伴い、同プロダクトを「Facilo」として 2023 年 2 月 22 日に正式リリースしております。

  • Faciloでは過去に仲介業のコミュニケーション手段が電話からメールに進化したことを「仲介 1.0」から「仲介 2.0」へのバージョンアップと捉え、同プロダクトのクラウドをベースにした新時代のコミュニケーションにより、顧客体験を次のステージ「仲介 3.0」に飛躍させることを目指しております。

今回投資に至った理由

弊社が今回、投資に至った理由は大きく以下の 3 点です。

1. マーケット

日本の不動産マーケットは非常に大きく、ポテンシャルの高いマーケットだと考えております。また、Faciloがaddressしている不動産仲介取引の特徴というものを考えてみると、

  • 一つの取引で、買い手・買い仲介・売り手・売り仲介・金融機関・他各業者、など多くの取引関係者が関与

  • 様々な情報や資料の準備・提出・確認が必要

  • 取引あたりの金額が大きく、取引参加者にとって重要度が高いため、正確性や専門性、迅速な対応が必要

ということで、クラウドによる一元化・可視化のニーズや、非効率な作業の削減効果などは非常に大きいものがあると感じております。現状、集客や追客などの“入口”の部分では多くのソリューションがある一方で、不動産仲介の商流の後半部分はまだまだ非効率な部分も多く、顧客にストレスを与えてしまっている面もあるため、Facilo が提供するクラウドソリューションがもたらすeconomic valueが大きく、社会に与えるインパクトの大きなマーケットだと考えております。

2. 大手からの高い評価

野村不動産ソリューションズ、三菱地所ハウスネットなどの大手仲介会社から高い評価を得ているという点も、今回の投資の意思決定を大きく後押ししました。創業から 1 年ほどにもかかわらず、一般に要求水準が高いとされる大手から業務効率化や顧客価値体験の向上に貢献してくれているという声も多く、Faciloが解決しようとしている課題の大きさと、同社のプロダクト開発力の高さを確認することができました。

3. 経営チーム

CEOの市川さんは、日米の不動産業界に長年従事されてきた方で、業界の理解度や人脈が豊富で、不動産領域のスタートアップ経営者としてこれ以上ないご経歴の持ち主です。直近は大手米国不動産ポータルのCFOも務められるなど、マネジメント能力の高さはもちろんのこと、人格も素晴らしいため、周囲の方から非常に信頼されており、まさに日本の不動産業界を変革するリーダーの素質を兼ね備えていらっしゃる点も投資の意思決定を大きく後押ししました。

Facilo市川 CEO からのコメント

弊社がDNX Venturesからの資金調達を決めた理由は一言で言うと、「これからの長い旅路をパートナーとして一緒に歩んでもらいたかったから」です。そう考えるに至ったのには 3 つの背景があります。

①Founder Firstな企業文化
Founder Firstを標榜するVCは多いかもしれませんが、DNX Venturesほどそれを体現しているチームはいないと思います。起業家のための幅広いサポートだけでなく、起業家と投資家という立場の違いから利害が反しそうな場面であっても、会社のために立場を超えて踏み込んだアドバイスをしてくれることもありました。起業家として事業の様々な側面をケアしなければならない中で、投資家に全幅の信頼を置けるのは本当にありがたいことです。

②B2B SaaS 領域での豊富な知見
弊社 Faciloメンバーは不動産領域での経験とプロダクト開発力はどこにも負けないと自負しています。一方で不動産自体のデジタル化はまだまだ黎明期。スタートアップとしてのセオリーやパターンがあまり確立されていない状況です。そんな手探りの状況で仮説を組み立てるにあたり、DNX Venturesの持つ他業界のB2B SaaSに関する豊富な知見は貴重な情報源になっています。

③不動産領域への期待
不動産業界は依然としてアナログ中心で業界構造が硬直的でもあるので、他業界のようなイノベーションの実現が難しいとも言われています。一方で DNX Venturesは、「できない理由」を並べ立てるのではなく、シンプルに、市場規模の大きさ・社会に与えるインパクトの大きさ・デジタル化の白地・業界内での変化の兆しに着目して、一緒に「どうやったらできるか」を考えてくれるので、勇気を持ってこの巨大産業でのイノベーションに挑戦することができます。

ーー 株式会社Facilo 代表取締役 市川 紘

最後に

不動産業界は硬直的な面もあり、まだまだアナログな部分も多くありますが、だからこそ改革の余地が多く、社会的意義も大きな挑戦のしがいがあるマーケットだと考えております。今回調達された資金を活用しさらにプロダクトを磨き込み、Facilo が不動産業界を変革してくれることを期待しております。


(文・新田 修平)

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