4/20 オードリー・タン氏とのおもしろ対談メモ
2021/4/20 登 大遊
行政情報システム研究所さん主催のイベントhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000049028.html で、オードリー・タン氏に色々とヘンな質問をさせていただいた際のメモを書きました。
※ 走り書きのため、間違いがありましたら申し訳ございません。
※ 以下はごく一部で、これの 3 倍くらい色々な知見を共有いただきました。
台湾の DX プロジェクトの話 (冒頭プレゼン)
台湾の店頭でのマスク販売、在庫管理システムを短期間で構築した際の話等の、写真を多用したプレゼン。個人の識別を容易くするために、納税システムと連携したりしました。色々な能力者に協力してもらって実現しました。たとえば、台湾の納税システムは、Java アプレット (!) が表示されるような、使いづらいシステムでしたが、これを頑張ってモダン化したという実績がある個人がいました。その方にも手伝っていただきました。また、FOXCONN でビッグデータの知見がある個人にも参加していただきました。
我々は、色々なシステムで、API をオープン化することを重要視しています。API のオープン化により、システム間連携や、既存の物理的なハードウェア (たとえば、自動販売機) のシステムとの連携を容易としています。自分たちで開発をすることが重要です。Linux ベースで 3 日間くらいで作るというようなイメージです。
台湾の政府的な DX プロジェクトには、分け隔て無く誰でも開発に参加できる仕組みがあります。gov.tw (g0v.tw のこと?) といいます。実際に、国中から、様々な参加者がいます。参加者の 25% くらいは、未成年の方々です。
台湾で作った本マスク販売システムは、韓国でも採用されました。
台湾政府では、皆で連携して開発したシステムを実際に稼働させるサーバーは、どのように用意しているか? (AWS 等を利用するのか?)
Q. 台湾政府の色々な DX プロジェクトの開発に、様々な方々が参加されていることは、素晴らしいと思います。それによって開発されたプログラムを、実際に稼働させるとき、ホスティングに必要なサーバー・インフラは、どのように用意されていますか? 外資系クラウドを用いるのですか? それとも、政府自らクラウド基盤を構築して運用することもありますか?
A. データの性質で異なります。台湾では、パーソナルデータなどの秘密のデータを含む場合は、外資系クラウドサービスは使わず、国内企業のクラウドサービスを利用したり、OpenStack (※ クラウドを自前で構築できるオープンソースソフトウェア) やその他のオープンソース技術を利用して、構築したりしています。一方で、オープンデータを公開するサーバーのように、単に外部に公開して参照されるだけの場合は、外資系クラウドサービスを利用することも許容されています。
API First Design 思想
台湾でシステムを開発するときは、API ファーストで仕様を規定します。外注する場合も、API が仕様で決まっていますが、実装方法は自由です。レガシーなデータベースを使うことも、オープンソースのデータベースを使うことも自由です。
オープンソースについて
Q. 本日の話に出てきた台湾のプロジェクトは、アプリケーション・レイヤーに近いものの話が多かったと思います。台湾政府でこれらの様々なプロジェクトを進める際に、より下位のレイヤー、例えば、仮想化や OS、ネットワークといったシステム部分に関するイノベーションが生じることはありますか? また、その成果がオープンソース化され、価値があるものとして公開されることはありますか?
A. 我々は、良いオープンソースの市民でいたいと思っています。既存のシステムを改良したときは、コントリビュートをします。新たなシステムを作るとき、最初からオープンソースで開発をしない場合もあります。この場合、内部で開発し、十分にテストして、問題無いか検証し、その後にオープンソース化をすることがあります。
私も、昔は低レイヤーのことを色々やっていました。BSD のコードもやりましたし、サウンド・カードがうまく動かないような時はドライバを自分で書いたこともありました。
多数の方々が開発に参加する場合に意見の収拾がつかなくなることの解決方法、失敗を許容する方法
・ おおまかなコンセンサスが重要だと考えています。完全な合意は求めないほうが良いのです。
・ 従来の仕組みを無くすというと、反対する人が出てきます。従来の仕組みは維持しつつ、新しいものを作るという方法が有効です。
・ 完ぺき主義はよくありません。割れ目があるところから、光が入ってきます。私は昔は完璧主義者でしたが、これはうまくいきません。誤りを起こすことを許容する必要があります。誤りが起きたときに毎回怒るのはよくありません。
デジタル化に取り残される人が出ないようにするためにはどのようすればよいか
・ 市民が誰でもデジタル化プロジェクトの開発に参加できるようにすることが重要です。
・ 人がシステムに合わせることを強制するのはダメで、システムのほうが人に合わせるべきです。
子どものころに感電すると頭がおかしくなるという仮説についての質問
Q. 子どもの頃、感電したことはありますか ? または、子どもの頃、頭を強く打ったことはありますか ? もしあれば、詳しく教えてください。私は、大学で周囲の多数の教授やコンピュータ・マニアの学生に質問をしたところ、80% くらいが感電したことがあると答えました。常軌を逸脱した人の感電割合は非常に高いと思っています。オードリー・タン氏は、特に、常軌を逸脱しているので、是非教えていただければ幸いです。
A. 頭を強く打ったことはありませんが、小学校に入る前に、感電をしました。大人が、「ソケットに突っ込むと感電して危ない」と言うので、「それで死ぬことはありますか?」と聞いたところ、「濡れた指だと死ぬかも知れないよ」と言われました。そこで、乾いた指ならば大丈夫だと思い、よく指を拭いて、ソケットに突っ込んだところ、感電をしたのです。